改訂新版 世界大百科事典 の解説
ディアス・デル・カスティリョ
Bernal Díaz del Castillo
生没年:1492?-1583?
H.コルテスによるメキシコ征服の従軍記録者。1514年西インド諸島に渡り,19年アルバラド麾下の一兵卒としてメキシコ遠征隊に参加。メキシコ湾岸タバスコとチアパスにエンコミエンダを得てひとまず定着したが,24年コルテスのホンジュラス遠征に加わる。その後の征服者間の抗争の中でエンコミエンダを失ったり得たりしたが,つねに処遇に不満で恩賞請願に奔走,スペイン本国にも2度渡った。40年以降グアテマラ市に住みつき,市参事会員として長い余生を送る。68年,《ヌエバ・エスパーニャ征服の真実の歴史》全214章を完成(1632,マドリード)。執筆動機は,コルテス晩年の教誨師ゴマラによる征服史(1552)が,コルテス一人の功績を称揚し他を軽んじたことに憤慨したためとされる。叙述は事実を正確に伝えており,征服に関する最良の一次史料であるとともに,記録文学の傑作として今なお愛読される。
執筆者:高橋 均
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報