デュワー(読み)でゅわー(その他表記)James Dewar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デュワー」の意味・わかりやすい解説

デュワー
でゅわー
James Dewar
(1842―1923)

イギリスの物理学者、化学者。エジンバラ大学で学び、1875年からケンブリッジ大学の実験科学教授、1877年から王立研究所の化学教授を兼任。1888年にはイギリスの化学者アーベルFrederick Augustus Abel(1827―1902)と共同で無煙火薬コルダイトを発明したほか、研究はきわめて広範囲にわたり、有機化学、分光学、高温測定、極低温などで多数の論文を発表した。とくに極低温については当時の第一人者で、1891年に液化した酸素とオゾン磁石に引き付けられることを発見、1898年には水素の液化に、翌1899年には凝固に成功し、零下260℃を記録、絶対零度まであと13度に迫った。また、1892年から3年間、J・A・フレミングと協力して極低温での金属の電磁気学的な性質を研究、すべての純粋な金属の電気抵抗は温度とともに急激に減少し絶対零度で消失する曲線を描くことを発見した。デュワーが極低温の研究でこれらの業績をあげることができたのは、真空の断熱作用を利用したデュワー瓶(いわゆる魔法瓶)を1892年に発明したためで、これは今日では家庭でも広く利用されている。

[加藤邦興]

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改訂新版 世界大百科事典 「デュワー」の意味・わかりやすい解説

デュワー
James Dewar
生没年:1842-1923

イギリスの化学者,物理学者。スコットランドの生れ。エジンバラ大学卒業後,ベルギーのF.A.ケクレのもとに学んだ。1875年ケンブリッジ大学教授,77年ロンドンローヤル・インスティチューションの化学教授となり,1904年ナイトの称号をうけた。初期には有機化学を手がけるが,その後ライビングG.D.Liveingとともにアルカリ金属をはじめとする種々の金属のスペクトルの研究を行い,スペクトル系列発見の先駆をなした。1874年ごろから気体液化の研究をはじめ,95年C.vonリンデと同じころ空気の液化に成功した。また,液体酸素を多量につくる装置をつくり,液体酸素,液体オゾンの磁性を測定した。98年液体水素をつくり,その屈折率などを測定し,翌年水素の固体化にも成功した。そのほか低温における元素の比熱,リン光の研究など各種物性の研究で知られているが,彼の名を有名にしたのはデュワー瓶(魔法瓶)の発明(1893)である。また,1891年エーベルF.Abelと共同で史上最初の煙の出ない火薬である,ひも状無煙火薬を発明した。
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化学辞典 第2版 「デュワー」の解説

デュワー
デュワー
Dewar, James

スコットランド生まれのイギリスの化学者.エジンバラ大学で学ぶ.1869年エジンバラの王立獣医大学の講師となり,1873年からスコットランド農業協会の助手を兼任する.1875年ケンブリッジ大学の実験哲学教授となり,1877年王立研究所の化学教授を兼任し,おもにロンドンで研究を行う.初期の研究は物理学と生理学の多方面に及び,ケンブリッジ大学時代には,多くの金属元素蒸気,および化合物のスペクトルを測定した.もっとも重要な研究は低温とガスの液化で,1878年イギリスではじめて酸素の液化を実証し,1891年液体酸素の磁性を発見した.1895年にはジュール-トムソン効果を用いた装置を開発し,液体(1898年)および固体水素(1899年)を得た.さらに得られた低温での気体吸着,化学反応,金属物性,熱容量の研究を行った.低温物質の貯蔵のために反射二重壁の間を真空にした容器を開発したが,これはデュワー瓶として広く普及している.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「デュワー」の意味・わかりやすい解説

デュワー

英国の化学者,物理学者。エディンバラ大学を出て,1877年王立研究所教授。初め有機化学,高温測定,網膜の生理作用,分光学等を研究したが,のち低温の研究に移り,液体酸素の量産装置を製作(1891年),それを貯蔵するため二重壁の間を真空にした魔法びん(デュワーびん)を発明(1893年)。ジュール=トムソン効果を利用し水素の液化(1898年),固化(1899年)にも成功。またF.エーベルと協同で無煙火薬コルダイトを発明。
→関連項目ローヤル・インスティチューション

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