ジュールトムソン効果(読み)ジュールトムソンコウカ(その他表記)Joule-Thomson effect

デジタル大辞泉 「ジュールトムソン効果」の意味・読み・例文・類語

ジュール‐トムソン‐こうか〔‐カウクワ〕【ジュールトムソン効果】

圧縮した気体細孔から噴出させて急に膨張させると、気体の温度が変化する現象常温では、ほとんどの気体は温度が下がる。気体の液化に利用する。1861年、ジュールトムソン(W.Thomson)が実験で確認した。

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精選版 日本国語大辞典 「ジュールトムソン効果」の意味・読み・例文・類語

ジュール‐トムソン‐こうか‥カウクヮ【ジュールトムソン効果】

  1. 〘 名詞 〙 低温で高圧の気体を急に低圧にすると温度が下がる現象。一八六一年、イギリスのジュール[ 一 ]とトムソン(Sir William Thomson = Lord Kelvin)が細孔栓での実験結果を確定した。気体の液化に応用される。

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改訂新版 世界大百科事典 「ジュールトムソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジュール=トムソン効果 (ジュールトムソンこうか)
Joule-Thomson effect

気体が細い穴から仕事をせずに不可逆的に流れ出るとき,温度変化が生ずる現象。これは,実在の気体では,体積Vが絶対温度Tに比例しないために起こる効果で,理想気体では起こり得ない。W.トムソン(後のケルビン卿)とJ.ジュールが,1852年ころから62年にかけて実験を繰り返す中で発見したものである。外界との熱の出入りが無視できるような管の途中に綿などの多孔性物質を詰め,その一方の側から他方へ気体を送ると,気体の圧力は⊿pだけ下がり,同時に⊿Tの温度変化を生ずる。⊿Tと⊿pは比例し,定圧熱容量をcpとすると,の関係がある。この比例係数⊿T/⊿pをジュール=トムソン係数といい,それが0になる温度をその気体の逆転温度という。逆転温度以下では温度降下が起こり,それ以上の温度では温度上昇が起こる。空気や二酸化炭素などの常圧での逆転温度は常温より高い。この効果は気体の液化に利用される。
液化
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百科事典マイペディア 「ジュールトムソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジュール=トムソン効果【ジュールトムソンこうか】

細管の中央に綿など多孔性物質(細孔せん)をおき,両側の圧力をそれぞれ一定に保ちながら,外部との熱の出入を断って気体を高圧側から低圧側へゆっくり流すと,気体の温度が圧力差に比例して変化する現象。理想気体では温度は変化しないが,実在気体では分子間に相互作用があるため,ある温度以下では温度が下がり,それ以上では上昇する。水素以外の気体では常温常圧で,水素も−80℃以下なら温度が下がる。この効果は気体の液化に利用される。1852年ころから1862年にかけてジュールケルビン(W.トムソン)が共同実験で証明。
→関連項目液化装置ゴム状弾性デュワーリンデ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュールトムソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジュール=トムソン効果
ジュール=トムソンこうか
Joule-Thomson effect

気体を入れた容器と,ほぼ真空の容器とを,綿などを詰めた管でつなぎ,外との熱の交換が無視できる条件のもとで綿の栓の細孔を通して静かに気体を流れさせると,気体の温度が下がるという現象。この実験は,J.P.ジュールと W.トムソン (ケルビン卿) が 1847年に行なったもので,ジュール=トムソンの細孔栓の実験と呼ばれている。気体の内部エネルギーと体積との関係を測定しようとして 45年にジュールが行なった実験の精度を高めたものである。測定によると,実在の気体を用いたときの温度の低下は,圧力の低下に比例する。このときの比例定数をジュール=トムソン係数という。一般に,いろいろな気体に固有の逆転温度と呼ばれているものがあり,これ以下では温度降下,これ以上では温度上昇がみられる。これは,ジュール=トムソン係数がゼロになる温度である。常温では,水素やヘリウムなどについては温度が上がるが,空気などの多くの気体では温度が下がる。これは,逆転温度が水素で-80℃,ヘリウムで-173℃と低いためである。実在の気体で温度変化が生じる理由は,第1に状態方程式理想気体と違うからであり,第2に内部エネルギーが体積にも関係するからである。ただし,実在の気体でも希薄にすれば,理想気体に近づく。ジュール=トムソン効果は,液化しにくい気体を液化するときの冷却過程に応用されている。

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化学辞典 第2版 「ジュールトムソン効果」の解説

ジュール-トムソン効果
ジュールトムソンコウカ
Joule-Thomson effect

多孔性の栓をつめた管の一方から他方へ気体を通過,膨張させるとき,大部分の気体で温度が低下する現象.H2 とHeだけは室温では温度が上昇するが,十分低温では一般の気体と同様,温度降下を示す.温度上昇が温度降下に変化する温度を逆転温度といい,H2 ではほぼ200 K,Heでは100 K である.温度降下の大きさ(ΔT)は膨張のときの圧力効果(ΔP)に比例し,

ΔTP
をジュール-トムソン係数という.逆転温度およびジュール-トムソン係数は,ファンデルワールス定数abと理論的に関係づけられるが,abからの計算値と実験値との一致は必ずしも定量的ではない.

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法則の辞典 「ジュールトムソン効果」の解説

ジュール‐トムソン効果【Joule-Thomson effect】

多孔性の栓を通過させるなどの方法で,気体に絞りを与えて断熱変化を行わせると,気体の温度が変化する現象.液体空気の製造や冷蔵庫などに利用されている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュールトムソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジュール‐トムソン効果
じゅーるとむそんこうか

ジュールの実験

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世界大百科事典(旧版)内のジュールトムソン効果の言及

【極低温】より

…液化するかどうかを問わなければ,この方法はすべての気体の温度を下げるのに使うことができる。 第3にはジュール=トムソン効果を利用する方法がある。高圧の気体を細い孔を通じて低圧の容器中に噴出させると,気体の温度が変化する。…

【ケルビン】より

…また,1847年のJ.P.ジュールの熱の仕事当量に関する論文の重要性を高く評価し,熱と仕事の同等性の見地からカルノー理論の一般化を試み,51年独自に熱力学第2法則を定式化した。同年トムソン効果の名で知られる熱電気の研究を行い,翌年にはジュールとともにジュール=トムソンの実験として有名な細孔栓の実験を行ってジュール=トムソン効果を発見した。電気磁気学に関しては,電気伝導,鏡像法,電気放電の振動性などの理論的業績に加えて,55年以降始めた海底電信の研究との関連で電気信号の理論的研究,実験装置,機器の開発を行った。…

※「ジュールトムソン効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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