気体が細い穴から仕事をせずに不可逆的に流れ出るとき,温度変化が生ずる現象。これは,実在の気体では,体積Vが絶対温度Tに比例しないために起こる効果で,理想気体では起こり得ない。W.トムソン(後のケルビン卿)とJ.ジュールが,1852年ころから62年にかけて実験を繰り返す中で発見したものである。外界との熱の出入りが無視できるような管の途中に綿などの多孔性物質を詰め,その一方の側から他方へ気体を送ると,気体の圧力は⊿pだけ下がり,同時に⊿Tの温度変化を生ずる。⊿Tと⊿pは比例し,定圧熱容量をcpとすると,の関係がある。この比例係数⊿T/⊿pをジュール=トムソン係数といい,それが0になる温度をその気体の逆転温度という。逆転温度以下では温度降下が起こり,それ以上の温度では温度上昇が起こる。空気や二酸化炭素などの常圧での逆転温度は常温より高い。この効果は気体の液化に利用される。
→液化
執筆者:鈴木 増雄
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
多孔性の栓をつめた管の一方から他方へ気体を通過,膨張させるとき,大部分の気体で温度が低下する現象.H2 とHeだけは室温では温度が上昇するが,十分低温では一般の気体と同様,温度降下を示す.温度上昇が温度降下に変化する温度を逆転温度といい,H2 ではほぼ200 K,Heでは100 K である.温度降下の大きさ(ΔT)は膨張のときの圧力効果(ΔP)に比例し,
ΔT/ΔP
をジュール-トムソン係数という.逆転温度およびジュール-トムソン係数は,ファンデルワールス定数a,bと理論的に関係づけられるが,a,bからの計算値と実験値との一致は必ずしも定量的ではない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…液化するかどうかを問わなければ,この方法はすべての気体の温度を下げるのに使うことができる。 第3にはジュール=トムソン効果を利用する方法がある。高圧の気体を細い孔を通じて低圧の容器中に噴出させると,気体の温度が変化する。…
…また,1847年のJ.P.ジュールの熱の仕事当量に関する論文の重要性を高く評価し,熱と仕事の同等性の見地からカルノー理論の一般化を試み,51年独自に熱力学第2法則を定式化した。同年トムソン効果の名で知られる熱電気の研究を行い,翌年にはジュールとともにジュール=トムソンの実験として有名な細孔栓の実験を行ってジュール=トムソン効果を発見した。電気磁気学に関しては,電気伝導,鏡像法,電気放電の振動性などの理論的業績に加えて,55年以降始めた海底電信の研究との関連で電気信号の理論的研究,実験装置,機器の開発を行った。…
※「ジュールトムソン効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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