改訂新版 世界大百科事典 「トキンイバラ」の意味・わかりやすい解説
トキンイバラ
brier rose
bridal rose
Rubus rosaefolius Smith var.coronarius Sims(=R. commersonii Poir.)
中国原産で,古く宝永年間(1704-11)にすでに観賞用として栽培されていたバラ科キイチゴ属の樹木。中国南部では常緑,日本では落葉小低木になる。高さ1m内外。茎は直立または斜上し,緑紫色で稜が縦に走り角ばる。枝は粗でほとんど無毛,扁平なとげを散生する。地下茎で増えひろがる。葉は互生し,奇数羽状複葉で小葉は3~5枚,小葉は長楕円形で,長さ3~6cm,幅1~3cmで,鋭頭,鈍脚または円脚で,縁には重鋸歯がある。葉の表は光沢があり,多数の支脈に沿ってしわがある。両面は無毛または小腺毛を散生する。托葉は狭線形。花は腋生(えきせい)する小枝の先に単生し,直径3~5cmの大型白花の八重咲きである。花期は5~6月,おしべは花弁化し,めしべは退化して,結実しない。和名の由来は,八重咲きの花を,山伏が頭にかぶる兜巾(ときん)の頂の十二襞襀(へきせき)になぞらえたものである。栽培はきわめて容易である。繁殖は地下茎によって生じた苗の株分け,または挿木による。
執筆者:荻巣 樹徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報