トランスジェンダー(英語表記)transgender

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「トランスジェンダー」の解説

トランスジェンダー
transgender

性別違和をもつ人々の総称。性別違和とは,体の性的特徴,出生時の体に基づいて判別された性別や,その役割に課される性役割,性別表現など,すなわちジェンダーへの違和感である。トランスジェンダーには,他方の性別への一致感がある人とない人がおり,また違和感が持続的な人と,そうでない人がいる。日本では性同一性障害 gender identity disorderという語がよく用いられるが,これは医学的概念であり,出生上の性と反対の性に対する持続的な同一感と,出生上の性に対する持続的な不快感をもち,かつそれによって精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態とされる。トランスジェンダーということばは,性同一性障害より多様な性別違和のあり方を包括するものである。出生時の体の性別が男性で,性自認(性同一性)が女性のトランスジェンダーを MtF; Male to Female,MtFトランスジェンダーといい,逆の場合を FtM; Female to Male,FtMトランスジェンダーという。(→LGBT

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日本大百科全書(ニッポニカ)「トランスジェンダー」の解説

トランスジェンダー
とらんすじぇんだー
transgender

生まれつきの身体的性別と、自分が認識する性別(性自認、ジェンダー・アイデンティティ)が異なる人々の総称。「超える」を意味するトランスtransと、「性別」を表すジェンダーgenderをあわせた造語である。トランスジェンダーには、身体的に男性として生まれながら女性と性自認しているMtF(Male to Female transgender)、逆に身体的に女性として生まれながら男性と性自認しているFtM(Female to Male transgender)がある。このほか身体的に男性あるいは女性として生まれながら、どちらの性別でもないと認識しているXジェンダー(MtX、FtX)を含める場合もある。女性の同性愛者レズビアン、男性の同性愛者ゲイ、両性愛者バイセクシュアルとともに、トランスジェンダーはその頭文字からLGBTと称され、多様な性を肯定、尊重しあう総称として社会に浸透している。トランスジェンダーと同等に尊厳をもってつきあうため、性別に関係なく利用できるトイレやシャワーの設置や、学校の制服に選択肢を増やすなどの取り組みが広がっている。ただ世界のスポーツ界ではLGBの参加は好意的に受け止められているものの、トランスジェンダーだけは、身体的に男性として生まれながら女性を自認するMtFが女性競技に参加するケースがあり、男性ホルモン(テストステロン)値での規制などの制限がとられるのが実態である。

 なお医学的概念として、生物学的性別と性自認が一致しない性同一性障害(gender identity disorder)がある。性同一性障害の人々は手術などで性自認と身体の性別を一致させたいと願うのに対し、トランスジェンダーには、不一致感がある人とない人、あるいは不一致感が持続する人としない人がおり、トランスジェンダーは性同一性障害より多様で広義の概念といえる。日本の性同一性障害特例法(「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」平成15年法律第111号)では自身を身体的、社会的に自認している性別に適合させようとし、そのことについて専門の医師2人以上による診断が一致している人が「性同一性障害者」であると定義している。

[矢野 武 2021年7月16日]

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