デジタル大辞泉 「性同一性障害」の意味・読み・例文・類語
せいどういつせい‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【性同一性障害】
[補説]性同一性障害者の法令上の性別の変更を認める性同一性障害者特例法は、平成16年(2004)7月に施行された。
心と体の性が一致せず、体の性別に強い違和感を持っている状態。医療としてはカウンセリングやホルモン療法、性別適合手術がある。現行の性同一性障害特例法では、2人以上の医師から性同一性障害と診断された上で①18歳以上②婚姻していない③未成年の子がいない④生殖機能がない⑤変更後の性別の性器部分に似た外観がある―の要件を全て満たせば、家裁の審判を経て戸籍の性別変更が認められるとしている。
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性同一性障害とは、医学的な病名です。すなわち、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信をもち、かつ、自己を身体的および社会的に別の性別に適合させようとする」障害です。
この障害は、生物学的性別とジェンダー・アイデンティティの不一致によって引き起こされます。生物学的性別は、単純化を恐れずにいえば、受精の際に精子にY染色体があるかどうかによって決まります。一方、ジェンダー・アイデンティティは2歳半ごろまでには決定づけられて、その後の変更は極めて難しいとされています。
いまだ不明のことが多いのですが、胎児のころの脳の形成過程が深く関与していると考えられています。
自分の身体的な性に対する持続的な不快感、あるいは嫌悪感、またその役割についての不適切感があります。それと同時に自分とは反対の性に対して、身体的にも同じようになりたい、社会的にも反対の性で受け入れられたいなどの強い気持ちをもちます。
たとえば、体が女性で心理的に男性であれば、スカートをはくのがいやでズボンばかりはくとか、思春期になって胸がふくらんでくると、さらしを巻いて隠すというようなことが起こります。また、反対であれば(体が男性、心は女性)、ペニスや
生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないことにより診断されます。
①生物学的性別の判定
生物学的性別は性染色体検査、ホルモン検査、内・外性器の検査などにより判定されます。
②ジェンダー・アイデンティティの判定
幼少時からの日常生活の状況を詳しく聞きとり、本人だけでなく、家族や親しい友人などからも情報を得たうえで、本人のジェンダーを判定します。
医学的には、
日本での治療は、日本精神神経学会のガイドライン(第3版)に沿って行われます。治療は領域を異にする専門家の医療チームによって行われます。
その内容は、精神科領域の治療(精神的サポート)と身体的治療(ホルモン療法と性別適合手術)の2つに大別されます。精神科領域の治療が先行し、身体的治療への移行が適当かどうかが判定されます。身体的治療の内容や順序については、当事者とチームが十分検討して決定することになります。
なお、これらの治療は、あくまで苦痛を和らげ、自分らしく生きるための手助けにすぎず、根本治療ではないことに注意が必要です。
日本国内では、性別適合手術まで一貫した治療が受けられる施設は現時点(2009年6月)では3つの大学病院しかありません。しかし、まず診断を受けることが必要です。そのためには、各地域の性同一性障害に詳しい精神科医を訪ねてみてください。
このような典型的な性同一性障害の人たちの周辺に、さまざまな種類と程度で、自らの性別に違和感を抱いている人々がおり、広く「
中島 豊爾
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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略称GID。性には生物学的な「雌、雄」の区別としての性別sexと、自分が「女、男」であると自己意識、あるいは自己認知する性(gender)がある。一般にはその両者は一致しているが、なかには両者が一致しておらず、生物学的性別と性の自己意識の不一致に悩む人たちがおり、そのような障害を性同一性障害とよび、次のような症状を呈することが多い。
(1)自らの性別を嫌悪あるいは忌避する
自分の性器が間違っている、自分の性器はなかったらよかったと考える。月経や乳房の膨らみなどに対する嫌悪感が強い。
(2)反対の性別に対する強く、持続的な同一感
反対の性別になりたいと強く望み、反対の性別としての服装、遊びなどを好む。
(3)反対の性別としての性役割を求める
日常生活のなかでも反対の性別として行動したり、義務を果たし、家庭、職場、社会的人間関係のなかで、あるいは儀式や身のこなし、ことば遣い、いろいろの場面で、反対の性別としての性役割をとることを求め、実際そのようにする。
ただし、これらの行為や服装の倒錯が性的快感と結び付かないところが性嗜好(しこう)障害と異なるところである。また、これらのもののうち、性の転換を考え、また実際に転換しようとするものを性転換症とよぶ。
このような性同一性障害の人たちがどのくらい存在するかに関する正確な調査はなく、アメリカの報告で男性成人の2万4000~3万7000人に1人、女性では10万3000~15万人に1人との報告があるが、調査の方法などによってもその数に開きがある。また、自らの性別に違和感を感じている、いわゆる性別違和の人たちも含めるとさらに数は多くなる。
治療は精神療法、ホルモン療法ならびに手術治療を段階を追って行うこととされ、そのためには関連領域の専門家が診断と治療のための医療チームを組み、慎重に判断することが求められる。
日本では1969年(昭和44)に性転換手術が優生保護法違反に問われ、それ以来、公には治療がなされなかったために、多くの人が性別違和に苦しんできたが、1996年(平成8)に埼玉医科大学倫理委員会が一定の基準の下に行うことを条件に性転換術(性別適合手術)を正当な医療行為と認め、その後日本精神神経学会が診断と治療のガイドラインを策定し、日本でも正式な医療として認められるようになった。
[山内俊雄]
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(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)
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