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性役割 せいやくわり

百科事典マイペディアの解説

性役割【せいやくわり】

性別による分担のこと。英語ではgender roles,sex roles。フェミニズムのなかで生まれた分析概念で,人が社会で一般的だと思われている〈男性らしさ〉〈女性らしさ〉というイメージに従って行動するとき,その人は性役割を演じているという。
→関連項目女性史両性具有

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

性役割
せいやくわり
gender role

社会的・文化的な性差であるジェンダーに課される社会的役割。役割とは,社会のなかである特定の地位や属性をもつ人が,それらに応じて果たすことを期待されるふるまい,表情など表出的シンボル,権利,義務などの総体を意味する。男性が「男らしく,泣き言を言わずに仕事に邁進する」,女性が「女らしく,男性パートナーを立てつつ笑顔で育児や介護といったケアワークにいそしむ」というような行動を選択するとき,その行為者は性役割を演じているといえる。男性も女性も,当人の個性が社会に浸透した性役割と落差が大きいとき,それだけ社会のなかのタブー(禁忌)に抵触する機会も増え,生きづらさを抱えることとなる。人は社会生活を営むとき,通常は複数の役割をもつこととなる。これを役割群と呼ぶ。この役割群に即応する役割期待が相互に矛盾や軋轢を抱えるとき,人は役割葛藤を抱えることとなる。一般に女性は男性よりも複雑かつ多様な役割期待を受けがちであることから,役割葛藤に陥りやすいことも指摘できる。たとえば,従来の「子供のために常に時間を空けられる母」の役割期待と,「男性社員並の就労」が同じ一人の女性に期待されるとき,彼女は役割葛藤に悩むこととなる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

性役割
せいやくわり

人はその社会的地位や集団所属にしたがってそれぞれ特定の特性、行動、責務が期待されているが、これを役割という。役割のうちもっとも一般的なのは年齢と性別に伴うものであるが、性別により期待される役割が性役割である。男性は仕事、女性は家事と育児とか、男は強く女は優しいなども、性役割の一種と考えられる。
 性は生物学的に決定されるため、性役割も生理的、生得的なものと考えられやすい。しかし、アメリカの文化人類学者マーガレット・ミードはニューギニアの三つの先住民グループを調査し、アラペシュ・グループでは男女とも物の成育を至上価値とするので、欧米をはじめとする先進諸国の社会でいう女性的役割の価値が高く、一方、闘争的なムンドグモル・グループでは男女とも通常、男性的特質と考えられる攻撃性が強く、さらにチャンブリ・グループでは女性が漁業に従事して生計をたて求婚権をもつのに対し、男性は家事や化粧に専心するなど欧米における常識とはちょうど反対の性役割をもつことをみいだした。その後の文化人類学者の諸調査によると、このミードの説には伝聞に基づく誇張が多く主観的解釈が混入していること、また、性役割が正反対となる文化の例は多くないことなどが確かめられているが、ともかく、性役割は生物学的な固定したものではないことを指摘した功績は大きい。
 現代の多くの先進国では、服装、髪形、ことば遣(づか)いなどはしだいにモノセックス化し、同性愛がなかば公認され、女性の社会的進出に伴いその権利が公認されるなど伝統的な性役割の境界がしだいに崩れつつあるが、今後もこの傾向は強まり、男性、女性という固定観念も姿を変えていくことであろう。これに伴い、社会・人文科学の諸分野において、伝統的な理論体系や研究原理のなかに、意識しないまま男性的価値基準が優位を占めている場合のあることが、フェミニズムの立場からしきりに指摘されるようになった。また、性別は従来生物学的意味合いの強いセックスという用語で表現されてきたが、これに対し、社会・文化的な性別を示すためジェンダーという用語が導入されるようになった。性役割の研究は、フェミニズム展開への一つの契機を与えたといえよう。[藤永 保]
『依田新他編『現代青年心理学講座5 現代青年の性意識』(1973・金子書房) ▽『現代のエスプリ174号 性役割』(1982・至文堂) ▽湯沢雍彦・阪井敏郎編『現代の性差と性役割――性別と家族の社会学』(1982・培風館) ▽女性学研究会編『女たちのいま』(1984・勁草書房) ▽村田泰彦編著『生活課題と教育』(1984・光生館) ▽東清和・小倉千加子著『性役割の心理』(1984・大日本図書) ▽国立婦人教育会館企画・編集『国立婦人教育会館「女性学講座」 性役割の固定化・流動化 報告集』(1989・第一法規出版) ▽ビクター・R・フュックス著、大橋照枝他訳『新しい女性たちの経済学――女と男の役割革命を求めて』(1989・春秋社) ▽女性学研究会編『ジェンダーと性差別』(1990・勁草書房) ▽藤永保編『現代の発達心理学』(1992・有斐閣) ▽矢沢澄子編『都市と女性の社会学 性役割の揺らぎを超えて』(1993・サイエンス社) ▽朴木佳緒留編著『性役割をのりこえて――和田典子先生のあゆみと家庭科の歴史』(1993・ドメス出版) ▽村田孝次著『生涯発達心理学入門』(1994・培風館) ▽竹中恵美子・久場嬉子編『労働力の女性化――21世紀へのパラダイム』(1994・有斐閣) ▽柏木恵子・高橋恵子編著『発達心理学とフェミニズム』(1995・ミネルヴァ書房) ▽井上輝子他編『日本のフェミニズム3 性役割』(1995・岩波書店) ▽朝尾直弘他編、天野正子他著『岩波講座日本通史第21巻 現代2』(1995・岩波書店) ▽宗方比佐子他編著、鈴木淳子他著『女性が学ぶ社会心理学』(1996・福村出版) ▽井上輝子著『女性学への招待――変わる 変わらない女の一生』新版(1997・有斐閣) ▽鈴木淳子著『性役割――比較文化の視点から』(1997・垣内出版) ▽伊藤裕子著『青年期における性役割観の形成』(1997・風間出版) ▽石井三恵著『共に学ぶ女性学――明日を共に生きるために』(1998・泉文堂) ▽土肥伊都子著『ジェンダーに関する自己概念の研究――男性性・女性性の規定因とその機能』(1999・多賀出版) ▽亀田温子編著『学校をジェンダー・フリーに』(2000・明石書店) ▽梅本堯夫・大山正監修、遠藤由美著『青年の心理――ゆれ動く時代を生きる』(2000・サイエンス社) ▽日本労働研究機構編・刊『勤労者生活』(2001) ▽真橋美智子著『「子育て」の教育論――日本の家庭における女性役割の変化を問う』(2002・ドメス出版) ▽相良順子著『子どもの性役割態度の形成と発達』(2002・風間出版) ▽柏木恵子・高橋恵子編『心理学とジェンダー――学習と研究のために』(2003・有斐閣)』

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世界大百科事典内の性役割の言及

【性】より

…これを二次性徴と呼ぶ。さらにヒトではこのような生物学的な性別によって,社会的に期待される態度,行動,意識,服装などが違っているのがふつうで,これを性役割と呼んでいる。生物学的に決定されている一次・二次性徴に対して,社会的に規定されて身につけられるこのような特徴を三次性徴と呼ぶこともある。…

※「性役割」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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