改訂新版 世界大百科事典 「ナーガラクルターガマ」の意味・わかりやすい解説
ナーガラクルターガマ
Nagarakertagama
インドネシア,ジャワ島のマジャパイト王国の宮廷詩人プラパンチャが1365年に作った長編の賛歌。当時のマジャパイトは国王ラージャサナガラ(通称ハヤム・ウルク)のもとで最盛期にあり,作者は仏教の最高聖職者の家庭に生まれて,幼時には王の遊び友だちであったと伝えられる。この長編叙事詩が世に知られるようになったのは,1894年にロンボク島で写本が発見されてからで,それはヤシの葉を短冊形に切った貝葉(貝多葉,貝多羅葉ともいう)に古代ジャワ語で刻まれたものである。内容は13世紀初頭から14世紀中葉までのシンガサリ王国とマジャパイト王国の歴史を物語っている。従来この叙事詩は史実というより政治・宗教的な意図をもって書かれたとするベルフC.C.Bergの説が有力であったが,最近ではこの見解は修正されており,とくにマジャパイト時代に関しては,貴重な史料とされている。オランダ人ピジョーT.G.T.Pigeaudの周到な注釈・研究がある。
執筆者:永積 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報