ロシア連邦,極東ハバロフスク地方の都市。〈アムール河畔のニコラエフスク〉の意。単にニコラエフスクと呼ぶことも多く,日本では尼港の名で呼ばれた。アムール川下流,河口から約80kmの左岸にある。人口3万6500(1992)。1850年にロシアの軍人で極東研究家のネベリスコイG.I.Nevel'skoiによって建設され,56年に市となる。一時は沿海州の行政中心地であり,太平洋方面におけるロシア海軍の主港であったが,それらの機能がハバロフスクとウラジオストクに移されたために衰退した。19世紀末からはサケ・マス漁業の根拠地として発展した。1904-05年の日露戦争後,日本の漁業資本の進出がめざましく,彼らの保護を目的として日本領事館が設置された。十月革命後,〈シベリア出兵〉の重要な一環として日本軍が占領したが,豊富な漁業資源をとられた占領下の周辺住民の反日感情は強く,そのことを背景として,20年当地日本軍守備隊が全滅を喫し,残兵と捕虜が殺害される事件が起きた(尼港事件)。市の産業は造船,木材,食品加工などである。
執筆者:原 暉之
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