新しい報道主義の考え方。従来のジャーナリズムが客観報道を至上命令としていたのに対し、「記者が……取材対象との間に個人的なかかわりを成立させ……小説家の目で……フィクション作家の手法で」(H・ブラウン国際基督(キリスト)教大学準教授。日本新聞協会刊『新聞研究』誌1972年8月号)、自由に思いきった表現活動をするのを特徴とする。インベスティゲイティブ・リポート(調査報道)、テーマ主義、追跡報道、告発・抗議報道などもニュー・ジャーナリズムの特徴といえる。この潮流は、1960年代を通じてアメリカで台頭し、1970年代初めに明確に位置づけられるものとなった。提唱者としてはトム・ウルフが有名であり、書き手としては『ニューヨーク・タイムズ』の内幕もの『王国と権力』(1969)を書いたゲイ・タリーズGay Talese(1932― )が代表格。この派のスタイルの特性から、N・メイラー、T・カポーティなどの作家もニュー・ジャーナリストとみなすことができる。
[桂 敬一 2018年5月21日]
『G・タリーズ著、藤原恒太訳『王国と権力』(1971・早川書房)』▽『栗林利彰著『ニュー・ジャーナリズム』(1978・汐文社)』
(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
1960年代のアメリカに生まれたジャーナリズム。公的機関などの〈発表もの〉が大半を占めていた従来のジャーナリズムへの批判として,みずから〈ニュース〉を発見し,徹底した取材に基づき,より正確な事実・情報の提供を目ざす。集団ではなく基本的には1人のジャーナリストによって行われる。記事の対象となる人物の心理描写,密談の再現なども含まれるため,フィクションではないかという批判も一部にある。マフィアを扱ったゲイ・タリーズの《汝の父を敬え》(1971),宇宙飛行士の訓練や実生活を描いたトム・ウルフの《ザ・ライト・スタッフ》(1979)をはじめ,D.ハルバースタム《ベスト&ブライテスト》(1972),B.ウッドワードとC.バーンスタインの共著《大統領の陰謀》(1974)などがニュー・ジャーナリズムの収穫といえよう。活力を失った第2次大戦後の小説にとって代わる,新しい文学のジャンルとして評価されることもある。
執筆者:常盤 新平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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