腎臓でろ過機能を担う糸球体の障害により、尿中にタンパク質が漏れ出して血液中のタンパク質が減少し、むくみが起こる病気。糖尿病などの病気が原因になることもある。ステロイドによる治療が行われることが多い。
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
ネフローゼ症候群とは、尿の中に大量の蛋白質が出てしまい、それに伴って血液中の蛋白質が減少するため、
この症候群は、いろいろな腎臓の病気によって起こり、原因疾患はひとつではありません。腎臓自体に病気が起こりネフローゼ症候群となる一次性(原発性)ネフローゼ症候群(表3)と、糖尿病腎症、
15歳以下の多くは、微小変化型ネフローゼ症候群が原因となりますが、50歳以上になると膜性腎症が原因疾患としてあげられます。
血液を濾過し尿を作る部分(糸球体基底膜)の障害により、本来もれ出ることのない高分子蛋白質(主としてアルブミン)が尿中にもれ出してしまう状態です。蛋白尿により多くの蛋白質が体内から失われると、低蛋白(アルブミン)血症になります。浮腫の原因としては、尿中に大量の蛋白質が失われることにより引き起こされる、血管内に水分を保つ力(
顔や手足にむくみが認められます。時に全身浮腫が著しくなり、胸部や腹部に水がたまる(胸水、腹水)こともあります。尿が出にくくなり、腎機能の障害や血圧の低下を認めることもあります。
また、ネフローゼ症候群の患者さんの血液は凝固しやすい状況になるので、腎静脈や下肢深部静脈に血栓症を起こすことがあります。
表5に示すネフローゼ症候群の診断基準を満たせば、原因にかかわらず本症と診断されます。
尿所見では、一般に大量の蛋白尿が認められます(時に、20g/日以上)。その他、血尿は微小変化型・膜性腎症では通常認められませんが、他の疾患ではいろいろな程度の顕微鏡的血尿が認められます。また、卵円形脂肪体、脂肪変性した腎上皮細胞などが認められます。
血液検査では、低蛋白血症、低アルブミン血症、高コレステロール血症などが認められます。腎機能は正常から低下例までさまざまです。
尿中にどのような大きさの蛋白がもれ出ているかをみる検査として、尿蛋白の選択性検査(尿蛋白のIgGとトランスフェリンのクリアランス比)があります。これは、原疾患の鑑別や副腎皮質ステロイド薬による治療への反応性の予測に用いられています。
一次性ネフローゼ症候群(約70~80%、表3)の原疾患の確定診断には、組織の一部を採取して調べる腎生検が必要になります。二次性ネフローゼ症候群(20~30%、表4)でも確定診断や治療法を決定するために、やはり腎生検を行うことがあります。
入院安静が原則です。食事療法では、浮腫に対して水分と塩分の制限を行います。また、蛋白摂取量の制限が推奨されています。
一次性ネフローゼ症候群での薬物療法としてはステロイド薬が用いられることが多いのですが、その反応性は病型や重症度によって異なります。効果があっても、また再発することもあります。ステロイド薬の投与は長期間になることが多く、糖尿病、感染症、
難治性のネフローゼ症候群に対しては、免疫抑制薬を併用することがありますが、骨髄抑制、性腺障害、
二次性ネフローゼ症候群では、基礎疾患に対する治療が優先されます。
ネフローゼ症候群に伴って出現する続発症の治療として、高脂血症に対しては抗高脂血症薬を投与します。むくみに対しては、利尿薬が用いられます。高度な浮腫、胸水・腹水、末梢循環不全状態に対してアルブミン製剤を使用することがありますが、効果は一時的であり、尿蛋白の増加により腎障害を助長することがあるので注意が必要です。機械を使用して血液濾過を行い、体にたまった水分を強制的に除去することもあります。
小児の微小変化型ネフローゼ症候群はステロイド薬により90%以上、成人でも約75%が完全寛解(尿蛋白の消失)しますが、約60%には再発が認められます。他のネフローゼ症候群は、一般的にはステロイド抵抗性(あまり効かない)が多く、巣状分節状糸球体硬化症、膜性腎症などでは約70%が抵抗性です。ネフローゼ状態が続けば、徐々に腎機能障害が認められるようになります。
前述の症状が認められた時はネフローゼ症候群を疑い、子どもは小児科、大人は内科もしくは腎臓内科を受診します。
淺沼 克彦, 富野 康日己
尿中に大量の蛋白が出る病気で、低蛋白血症や
大人では
微小変化型ネフローゼ症候群の好発年齢は2~6歳です。頻回に再発する例が多いのですが、将来、慢性腎不全に至ることはありません。
主症状は
食塩と水分摂取を制限し、副腎皮質ステロイド薬を用います。微小変化型ネフローゼ症候群の90%はステロイド治療によく反応し、7~10日で尿蛋白は改善します。ただし、副腎皮質ステロイド薬を比較的大量に使うので、高血圧、消化管潰瘍、低カリウム血症、
副腎皮質ステロイド薬が効かない場合は、
微小変化型の約30%は頻回に再発しますが、腎不全への進行は極めてまれです。一方、10~20%は副腎皮質ステロイド薬が効かないステロイド抵抗性ネフローゼ症候群です。腎生検による組織診断が必要で、多くは巣状糸球体硬化症です。治りにくい腎炎で、小児末期腎不全の原因の約20%を占めます。しかし、小児では成人より治療に対する反応性がよく、軽快例もみられます。
とくに初発では入院治療が必要です。ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群は、小児腎臓病専門医による検査・治療が必要です。
内山 聖
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
腎臓(じんぞう)の糸球体濾過(ろか)膜の異常によって透過性が高まり、大量のタンパク(アルブミンやグロブリンなど)が尿中に喪失し、全身の浮腫(ふしゅ)(むくみ)、高度のタンパク尿、乏尿をきたす腎疾患をいう。真性(リポイド)ネフローゼとネフローゼ型慢性腎炎、およびその他の原因による二次性ネフローゼに分けられる。
[加藤暎一]
原因は不明で、おもに小児にみられる。症状は、全身の倦怠(けんたい)感、顔面の浮腫、尿量の減少、タンパク尿、血液中のタンパク質量減少(とくにアルブミンの減少)、コレステロールの増加などがあげられる。血圧は正常で、腎機能も低下せず、尿の比重も高い場合が多い。予後は幼児や若年者では悪くないが、成人では長い経過を経て腎機能が侵されることが多い。治療としては、ナトリウムの制限、高タンパク食、利尿剤の投与、副腎皮質ホルモンの投与などが有効である。
[加藤暎一]
慢性腎炎のうち、浮腫および高度のタンパク尿をきたすもので、原因は腎炎と同じである。症状は浮腫、乏尿、タンパク尿があり、この疾患では血圧が高くなり腎機能も障害される場合がある。予後は真性ネフローゼより悪いことが多い。治療は慢性腎炎に準じ、食事療法が主で、薬剤による治療効果はあまり期待できない。
[加藤暎一]
糖尿病、循環障害、感染症、腫瘍(しゅよう)、膠原(こうげん)病、妊娠、薬剤、中毒などによる二次性ネフローゼで、予後は原因疾患により異なり、治療も原因疾患に応じて行われる。原因疾患の判明しているものではその治療により、また薬剤などによるものではその投与を中止することにより、それぞれ症状の改善をみることが多い。
[加藤暎一]
(石川れい子 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…かつては尿細管の病変によってタンパク尿と浮腫を伴う腎臓の疾患を指したが,近年では,糸球体の病変によって生じ,高度のタンパク尿と低タンパク血症を伴う症候群を指し,医学的にはネフローゼ症候群nephrotic syndromeと呼ばれる。1905年,F.vonミュラーが腎臓疾患を炎症性疾患と尿細管の変性疾患に大別し,後者をネフローゼと呼んだ。…
…漏出性腹水は,タンパク質濃度は1g/dl前後で,比重は低く細胞成分も少ない。漏出性腹水は,肝硬変,腎臓疾患ことにネフローゼ症候群,心不全などでみられる。肝硬変症では,肝細胞障害により肝臓のアルブミン合成能が低下するために,血中のアルブミン濃度が減少してコロイド浸透圧の低下を起こし,血液の漏出が起こりやすくなる。…
※「ネフローゼ症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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