ハウエルズ(英語表記)Howells, William Dean

デジタル大辞泉 「ハウエルズ」の意味・読み・例文・類語

ハウエルズ(William Dean Howells)

[1837~1920]米国の小説家。米国におけるリアリズム文学の基礎を築いた。作「サイラス=ラパムの向上」など。

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精選版 日本国語大辞典 「ハウエルズ」の意味・読み・例文・類語

ハウエルズ

  1. ( William Dean Howells ウィリアム=ディーン━ ) アメリカの小説家、批評家性格描写にすぐれたリアリズム小説を書くとともに評論活動により作家育成に貢献。著に「ありふれた事件」など。(一八三七‐一九二〇

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハウエルズ」の意味・わかりやすい解説

ハウエルズ
Howells, William Dean

[生]1837.3.1. オハイオ,マーティンズフェリー
[没]1920.5.11. ニューヨーク
アメリカの小説家,批評家。植字工,新聞記者などをしながら独学,イギリス,ドイツ,スペインの文学に親しんだ。 1860年にリンカーンの選挙用の伝記を書いたことがきっかけで,61~65年ベネチア領事をつとめた。帰国後『アトランティック・マンスリー』誌の編集にたずさわり (1866~81) ,処女作『彼らの新婚旅行』 Their Wedding Journey (72) に続いて,『卑近な実例』A Modern Instance (82) ,ボストンを舞台に上流階級の仲間入りをはかる新興成金の姿を写実的に描いた『サイラス・ラパムの出世』 The Rise of Silas Lapham (85) などを発表。 86~92年『ハーパーズ・マガジン』の編集に参加,独特のリアリズム文学論を提唱,評論集に『批評と虚構』 Criticism and Fiction (91) などがある。後期の作品は,時代風潮やトルストイなどの影響から,キリスト教的社会主義の色彩の濃いものが多い。『アニー・キルバーン』 Annie Kilburn (89) ,『運命の浮沈』A Hazard of New Fortunes (90) ,『アルトルーリアから来た男』A Traveler from Altruria (94) など小説 35編をはじめ,戯曲 35,詩集4,評論6,その他 34冊の著書があり,H.ジェームズや M.トウェーンらと親交を結び,また S.クレーン,H.ガーランド,F.ノリスら多くの新人作家を見出したことでも知られ,アメリカ文学の「大御所」 Deanと称された。微温的な限界はあるが,性格描写や日常的な現実の描写にすぐれ,リアリズム文学の理論家,実践者として高く評価される。

ハウエルズ
Howells, William White

[生]1908.11.27. ニューヨーク
[没]2005.12.20. メーン,キタリー岬
アメリカの自然人類学者。 1934年にハーバード大学で博士号を取得したあと,ニューヨークのアメリカ自然史博物館の調査員,ウィスコンシン大学教授を経て,1954~74年ハーバード大学の教授を務めた。この間に多くの研究者を育成し,多変量解析の方法を自然人類学の諸問題に適用して,数々の業績をあげた。そのなかでも特筆される研究に,ヨーロッパ,アフリカ,アジア,オセアニアの 17の人類集団の頭蓋の計測結果を比較し,1973年に発表した「人類における頭骨の変異:近年の人類集団間の変異形態の多変量解析研究」がある。また古人類学の分野に関しても,すぐれた論文を多数発表した。主著に『人類の進化』 Mankind in the Making (1959,1967) ,『人類における頭骨の変異』 Cranial Variation in Man (1973) などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウエルズ」の意味・わかりやすい解説

ハウェルズ
はうぇるず
William Dean Howells
(1837―1920)

アメリカの小説家、批評家。オハイオ州の印刷屋に生まれ、独学で文学を学んだ。ロシア文学からイタリアやスペインの文学まで広くヨーロッパの文学に親しみ、リアリズムをアメリカの文学風土に育成することに努めた。オースティンの文学をリアリズムの頂点と高く評価し、トルストイのキリスト教的な博愛思想の影響を強く受けた。初めボストンで、ついでニューヨークで活躍した。『アトランティック・マンスリー』誌の主筆を経て『ハーパーズ・マガジン』誌の主筆となり、評論活動などで多くの若い作家たちを育てることに貢献するとともに、自らも『ありふれた事件』(1882)、『サイラス・ラパムの出世』(1885)、『新興成金の奇禍』(1890)など多くの長編小説を発表。手法の面では性格描写にリアリズムを確立すべく努力しつつ、アメリカが前例のない民主主義の社会であるから、文学もまたそのような社会との関連で考えられなければならないとした。したがって、評論『批評と虚構』(1891)ではオースティンの家庭小説を高く評価する一方、天才といえどもその狂気で大衆を毒することは許されるべきではないとして、ゲーテを激しく非難した。家庭や倫理を重視したハウェルズ文学は、大衆社会における芸術家のあり方に問題を投げかけるものでもあった。

[後藤昭次]


ハウエルズ
はうえるず

ハウェルズ

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改訂新版 世界大百科事典 「ハウエルズ」の意味・わかりやすい解説

ハウエルズ
William Dean Howells
生没年:1837-1920

アメリカの小説家,批評家。マーク・トウェーン,ヘンリー・ジェームズとともに19世紀アメリカ・リアリズム文学を代表する。オハイオ州に生まれ,父の印刷所で活字を拾いながら文学修業を積み,1865年,あこがれの東部文壇の中心ボストンに出て,中西部出身者としては初めて東部を代表する雑誌《アトランティック・マンスリー》の編集長となった。生涯に35の長編を含む膨大な作品を発表するとともに,有力な批評家としても重きをなし,リアリズム文学のために論陣を張った。また新しい海外文学の紹介や,スティーブン・クレーン,ノリスなど後進作家の育成にも力を注いだ。代表作は,離婚を扱った《卑近な事例》(1882),実業家の倫理的責任を問うた《サイラス・ラパムの向上》(1885),《新興成金の賭》(1890),評論集《批判と小説》(1891)など。一時は,ミドルネームどおり,〈アメリカ文学のディーン(学部長)〉とさえいわれたが,現在では,リアリズム文学の確立に彼なりに努力したことは認められるにしても,結局は,旧来の〈お上品な伝統〉の擁護者だったのではないかと,その限界が指摘されるようになった。
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百科事典マイペディア 「ハウエルズ」の意味・わかりやすい解説

ハウエルズ

米国の作家。植字工出身。新聞記者などを経て,1960年から領事としてベネチアに行き西欧文学を学ぶ。帰国後《サイラス・ラパムの向上》(1885年),《批判とフィクション》(1891年)等の小説や評論を発表,またガーランド,S.クレーン,F.ノリスらの新人を発掘し,リアリズム文学の基礎を築いた。

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世界大百科事典(旧版)内のハウエルズの言及

【アメリカ文学】より

…彼の最高傑作《ハックルベリー・フィンの冒険》(1885)は,自由と秩序,自然と文明などのアメリカ的テーマを集約しつつ無垢(むく)な少年の運命を語り,のちにヘミングウェーをして〈すべての現代アメリカ文学は《ハックルベリー・フィン》という1冊の本に由来する〉と言わしめた。 リアリズム全盛時代の文壇の大御所はW.D.ハウエルズである。彼は《アトランティック・マンスリー》誌の編集者などとしてトウェーンやH.ジェームズらの作品を世に送り出したばかりか,ノリス,S.クレーンなどの若い作家の育成にも努めた。…

※「ハウエルズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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