改訂新版 世界大百科事典 「ハスノハギリ」の意味・わかりやすい解説
ハスノハギリ (蓮葉桐)
Hernandia nymphaefolia (Presl)Kubitzki(=H.peltata Meissn.)
熱帯~亜熱帯の海岸に生育する生長の速いハスノハギリ科の常緑高木で,高さ20mになる。果実が水に浮き,潮流に運ばれて分散するためアフリカ東岸より東南アジア,太平洋地域にいたる広い範囲に分布し,北限として琉球,小笠原にも自生する。葉は互生し,葉身は長さ10~30cmの広卵形,全縁,やや革質,葉柄は6~25cmで葉身に楯状につく。花は乳白色の小花で,葉腋(ようえき)に生ずる散房花序上に咲く。果実は径3~4cmの楕円形の石果で,花後に肥大した肉質,袋状の小苞に包まれる。琉球では花期は8月ころ,果実は11月に白色に熟する。果実の頂端に穴があり,吹くと音がするので子どもが遊ぶが,有毒で食べられない。木材は軽軟,淡黄白色でキリの代用とし,最近輸入される南洋材中にもときに見いだされる。木材組織中に有毒な精油を含む細胞があるため,製材時に人体につき皮膚炎を起こすことがある。
ハスノハギリ科は世界の熱帯を中心に分布する4属約60種の樹木および木本つる植物からなる。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報