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オーストリアの音楽美学者,音楽批評家。自律的音楽美学の主唱者。はじめウィーン大学で法律を学び官吏となる。1854年主著《音楽美論》を発表,56年よりウィーン大学で講じ,70-95年正教授。《音楽美論》は,感情を音楽の内容とする説を否定,音楽の独自性を形式に見いだし,〈音楽の内容とは鳴り響きつつ動く形式〉と述べた。音楽そのものに美を求める〈自律的音楽美学〉の主張であったが,R.ワーグナーとその支持者たちの反論を買い,一大論争に展開した。ほかにウィーンの音楽史に関する《ウィーン演奏会史》全2巻(1869,70)などの著書がある。
執筆者:西原 稔
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オーストリアの音楽美学者、批評家。プラハ生まれ。プラハ大学、ウィーン大学で法律を学ぶかたわら、哲学者ツィンマーマンや音楽史学者アンブロースらとの交際を通じて批評精神を養った。しかし彼は、17世紀以前の音楽を否定し、モーツァルト以後、とくにベートーベン、シューマン、ブラームスを高く評価するという偏向をもっていた。同時代者のなかでもリスト、ワーグナーを批判する彼の音楽観は、器楽の場合は旋律を、声楽では歌詞を重要視するものであったため、絶対音楽、標題音楽、音楽形式論をめぐってハウゼッガーやアンブロースと対立することになった。著作では、評論や回想録が当時の音楽界の状況を再構成するものとして今日では評価されており、『音楽美論』(1854)は音楽美学の古典的名著として知られる。
[山口 修]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…またオペラなど声楽曲においても,言語的・詩的・ドラマ的基礎を軽視したスタイルの音楽,たとえばロッシーニのオペラに見いだされる,旋律の美しさや声の技巧の誇示を優先させる傾向なども彼の絶対音楽の概念に含まれる。これに対し19世紀半ばの音楽美学者E.ハンスリックはこれを肯定的な意味に転じ,今日に及んでいる。このことからも,この概念が価値評価を離れて音楽の性格を表示する概念ではなく,特定の音楽観を背景にして生まれたことがわかる。…
…西洋の古典派音楽では旋律の規則的な分節性が好まれたが,ロマン派になるとむしろ不規則な構造が多くなり,R.ワーグナーのように反復や分節を意識的に避けた無限旋律unendliche Melodieを主張する者もいた。 19世紀の音楽美学者E.ハンスリックが旋律を〈音楽美の基本形態〉と称したように,近代の西洋音楽では旋律的創意が天才の最も顕著な証しと考えられ,旋律創造の才能は合理的説明が困難な天与の才とされた。それゆえ西洋近代の旋律はほとんど常に新たに創出され,その独創性が重視された。…
※「ハンスリック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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