ハールレム(英語表記)Haarlem

デジタル大辞泉 「ハールレム」の意味・読み・例文・類語

ハールレム(Haarlem)

オランダ西部、ノルトホラント州の都市。同州の州都チューリップをはじめとする花卉かき栽培の中心地。同国最古のテイラー美術館、フランスハルス美術館などがある。米国ニューヨークのハーレム同地由来ハーレルム

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改訂新版 世界大百科事典 「ハールレム」の意味・わかりやすい解説

ハールレム
Haarlem

オランダ西部,北ホラント州の州都で,アムステルダムの西方約18kmに位置する。人口14万6739(2005)。19世紀末からは近代的工業都市,アムステルダムのベッドタウンであり,また市西部の砂丘地帯,南部のハールレム湖干拓地,北部のエイ川干拓地などを含む南ケンネメルラントZuid-Kennemerlandの中心都市である。

 エイ川に注ぐスパールネSpaarne川の湾曲部に発達し,1245年都市法を与えられて以降ビール醸造,毛織物業,造船,セッケン製造,漂白業などが発達した。スペインに対するネーデルラントの反乱に際し,1572年海乞食(乞食団)に占拠されて反乱側に立ったが,翌年スペイン軍に包囲占領され,77年ふたたび反乱側に戻った。17世紀には麻織物漂白業が繁栄し人口も4万に達したが,18世紀以降衰微した。1876年完成された北海運河とスパールネ川で連結され,鉄道の開設によりアムステルダム,ハーグロッテルダムなどと結ばれた結果,19世紀末から造船,車両修理工場などが急速に発展し,金属・機械工業,食品加工,印刷,製薬などの諸産業が発達し,これに伴って商業・輸送の中心になった。現在,アムステルダムなどと快速電車で結ばれ,オランダ西部の環状都市群の主要な一環を形成している。市の中心部の広場に面して,14世紀中葉に起源をもつ市庁舎,パイプ・オルガンで知られる後期ゴシック様式のシント・バーフォ教会,オランダ・ルネサンス様式の華麗な肉・魚商人のギルドホールが立ち並ぶ。他に市内には,巨匠ファン・カンペンの設計した新教会,1602年建設の養老院を用い,17世紀ハールレム派の絵画を集めた市立フランス・ハルス美術館,テイラー博物館,国土地理院などがある。市西部に広がる北海砂丘はチューリップなど草花,球根の栽培地帯で,市の南方12kmには有名なクーケンホフ植物園がある。市の南部にあった1万8000haにおよぶハールレム湖Haarlemmermeerの干拓は1852年に完成され,緑の牧場と園芸の中心地に変えられた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハールレム」の意味・わかりやすい解説

ハールレム
Haarlem

オランダ北西部,ノールトホラント州の州都。アムステルダムの西約 20kmに位置する。1245年に都市権を獲得,1572年ネーデルラントのスペインからの独立を要求する自治体の一つとなり,アルバ公のスペイン軍の包囲攻撃に 7ヵ月間耐えた。17世紀にはフランスからのユグノー派亡命者(→ユグノー)によって絹織物,レース,ダマスク織の技術が伝えられ活気をみせた。19世紀末からは,印刷,機械,縫製綿織物などの軽工業が立地。郊外では 17世紀以来の球根栽培が盛んで,世界各地に輸出する。13世紀の市庁舎,14~15世紀の大聖堂など,古い歴史を反映した建造物が多い。また 15世紀からはネーデルラントの芸術の中心地となり,マニエリスムが開花。フランス・ハルス美術館などにその作品が収められている。カトリックおよびジャンセニスト派(→ジャンセニズム)の司教座所在地でもある。人口 14万6960,大都市圏 40万6162(2007推計)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハールレム」の意味・わかりやすい解説

ハールレム
はーるれむ
Haarlem

オランダ西部、ノールト・ホラント州の州都。人口14万8377(2001)。北海から約7キロメートルの内陸に位置し、両者の間には海岸砂丘が横たわる。南西郊外の砂丘地帯では、ヒヤシンス、クロッカス、スイセンなどが栽培され、オランダの花卉(かき)園芸の中心地となっている。とくに15世紀に小アジアから導入されたチューリップ栽培が有名で、その球根は世界中へ輸出される。また古くから羊毛工業、醸造業が行われていたが、現在は造船、機械、繊維の諸工業が発展する。11世紀にホラント伯の宮殿が建設されてから繁栄し、1245年に自治権を獲得した。その後1492年に反乱農民が一時占拠し、また独立戦争中の1573年にはスペイン軍により包囲、略奪された。15世紀以降、芸術の中心となり、とくに17世紀にはロイスダール、ハルスなどハールレム派の画家を多数輩出し、建築家カイも活躍した。旧市街はスパールネ川と堀で囲まれ、中央の大広場を取り巻いて旧市庁舎、大教会、フレースハル(昔の肉市場、現在は公文書館)など古い建物群がある。

[長谷川孝治]

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百科事典マイペディア 「ハールレム」の意味・わかりやすい解説

ハールレム

オランダ西部,北ホラント州の州都。アムステルダムの西方約20kmにある。チューリップなど花卉(かき)の栽培・輸出の中心。機械,車両,造船,繊維などの工業が行われる。15世紀の聖バーボ教会,17世紀ハールレム派の絵画を所蔵する市立フランス・ハルス美術館などがある。15万670人(2011)。

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