宗教改革期からフランス革命に至る時期のフランスのカルバン派信徒をいう。語源については諸説があるが,〈誓約仲間〉を意味するドイツ語Eidgenosseのジュネーブなまりeyguenotに由来するとの説が有力である。カトリックのギーズ党がカルバン派信徒に対する賤称として用い始めたものであり,これに対しプロテスタントはカトリックを〈教皇の徒Papiste〉と呼んで対抗した。今日のフランスではカルバン派は単に〈改革派réformé〉と呼びユグノーの名を用いないが,アングロ・サクソン世界ではなお常用され,日本でもその影響でユグノーという表現が教科書などでも用いられている。16世紀のフランスでは,さまざまな宗教改革の潮流がみられたが,カルバンの登場以来,その影響が圧倒的となり,プロテスタントの大多数はカルバン派に属した。1559年,カルバン派は,パリにおいて第1回の全国改革派教会会議を開き,信仰の基本となる〈フランス信条〉を採択して,ジュネーブの強い影響下にありながらも,フランス固有の改革派の組織化が進められた。98年ナントの王令発布時の改革派信徒数は,ほぼ125万と推定されている。当時の人口を1800万程度と仮定すれば,15人に1人が改革派であったことになる。このほかにもちろん,厳しい弾圧や宗教戦乱で国外に脱出した少なからぬ亡命者も考慮に入れなければならない。社会層としては,知識人と並んで手工業者に広く浸透したことが特徴とされる。しかし,とくにフランスの西部,南部では農村への浸透も注目され,1685年ナントの王令廃止で知識層や商人,手工業者が多数国外に亡命した後も隠れユグノーとしてとどまり,カミザールの乱のように抵抗の拠点ともなった。現在フランスのプロテスタントはカルバン派約40万,その他諸グループ合わせても80万足らずであり,少数派として閉鎖的な傾向もみられるが,多くの知識人を生み,政界,金融界にも独自の人間関係を形成している。
→改革派教会
執筆者:二宮 素子
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カルバンの伝統を継ぐフランスのプロテスタント教会の別称。語源は明らかでないが、スイスの国名のドイツ語形Eidgenossen(盟約共同体)からIguenots, Huguenotsと転じたともいわれる。ジュネーブで受けた強い影響をフランスに持ち帰ったカルビニズムの信奉者たちは、1550年代なかばから長老制教会政治、顕著な世俗内禁欲主義の傾向、加えて反王権的姿勢を特色とする独自の流れを形成し始めた。なかにはコンデ、ナバル、コリニーなど高位の有力貴族も含まれる。1559年の「フランス信仰」Confessio Gallicanaはユグノー派の共通のよりどころとなった。
1560年代に入ると、バロア王朝およびカトリックのギーズ公家との間で激しい武力衝突をきたし、30年に及ぶ宗教戦争の末、アンリ4世のナント王令(1598)によって初めて法的に平等な承認を獲得した。その結果、ボルドー、ナント、ルーアンなど南フランスを中心に富裕な都市がユグノー派の支配下に入り、モントーバン、セダンなどの神学院も隆盛をみた。しかし、1685年ルイ14世がナント王令を撤回するに及んで、ユグノーの多くは国外に亡命し、高度の技術と資力、および勤勉によって各地の近代市民文化の振興に大きく寄与した。
[出村 彰]
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…反面,近代的大都市への急激な変貌は,城壁や市壁に囲まれた伝統的都市構造の改造や都市行政の変革にも影をおとし,伝統と近代の混在する独特の都市構造を生み出した。さらに,ユグノーを受け入れユダヤ人にも寛容であったという歴史的経緯もあって,ベルリンは諸文化のるつぼともなり,ワイマール時代に典型的にみられるようなコスモポリタン的な文化が形成された。こうした〈世界都市〉的性格が,東西に分裂したのちも,ドイツ第一の都市としてのベルリンの地位を支えたといえよう。…
※「ユグノー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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