バベルの塔(読み)バベルのとう(英語表記)Tower of Babel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

バベルの塔
バベルのとう
Tower of Babel

旧約聖書創世記』中に出てくる。大洪水のあと同じ言葉を話していたノアの子孫たちは,東方のシナルの平野に移り住んだとき,民族分散を免れることを願って,煉瓦と瀝青を用いた町と,天に達するような高い塔とを建設することを企てた。ヤハウェはこれを見て同一言語を有する民の強力な結束と能力を危惧し,彼らの言葉を混乱させ (バーラル) ,その企てをはばんだ。民は町と塔の建設を断念して各地に散った。この町はバーラルという語の発音に似せたバベルと呼ばれるようになった。この物語は,民族と言語の多様性を説明すると同時に,神と等しくなろうとする人間の罪を描いている。こうしてバベルの塔はノアの子孫たちの分散の原因となった (11・1~9) 。ただし『創世記』 10章における諸民族の成立の記事にはこの塔のことは触れられていない。バベル (バビロン) はアッシリアでは「神の門」の意味であるが,『創世記』はヘブライ語の語根バーラルと結びつけている。なおこの塔は,ジッグラトと呼ばれるバビロンのピラミッドをさすという説もある。

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デジタル大辞泉の解説

バベル‐の‐とう〔‐タフ〕【バベルの塔】

Babelは聖書の地名シナルの古都旧約聖書創世記にある伝説上の塔。ノアの大洪水ののち、人類バビロンに天に達するほどの高塔を建てようとしたのを神が怒り、それまで一つであった人間の言葉を混乱させて互いに通じないようにした。そのため人々は工事を中止し、各地に散ったという。転じて、傲慢に対する戒めや、実現不可能な計画の意にも用いられる。

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百科事典マイペディアの解説

バベルの塔【バベルのとう】

旧約聖書の《創世記》第11章に現れる巨塔。人びとは天にも届く塔を建てようとしたので,その高慢に怒った神は,言語を混乱させ,人びとを各地に散らして完成を妨げたという。この話のもとになったのはバビロン(バベル)にあったジッグラト(方形の塔)と推定され,遺跡がコルデワイによって発掘された。ジッグラトの基礎は一辺が90mを越え,7層になっていたと考えられている。後世の絵画ではP.ブリューゲル(父)のそれがもっとも有名。

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とっさの日本語便利帳の解説

バベルの塔

ノアの洪水の後、人間はバビロンに都を建て、天まで届く塔を建てようとするが、神は怒って人間の傲慢を打ち砕くために彼らの言語を混乱させてしまい、塔は完成しなかった。そのため、この塔はバベル(ヘブライ語で混乱の意)の塔と呼ばれた。

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デジタル大辞泉プラスの解説

バベルの塔

ネーデルラントの画家ピーテル・ブリューゲル(父)の絵画(1563)。原題《Toren van Babel》。旧約聖書に登場する神の怒りを受けて破壊されたバベルの塔を描いた作品。ウィーン美術史美術館所蔵。同じ主題の作品をオランダのボイマンス美術館も所蔵する。

バベルの塔

ナムコが発売するゲームソフト。アクションパズルゲーム。1986年7月発売。ファミリーコンピュータ用。その後、レトロゲームを集めたプレイステーション用ソフト「ナムコアンソロジー1」、ゲームボーイ用ソフト「ナムコギャラリーVOL.3」に収録。

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世界大百科事典 第2版の解説

バベルのとう【バベルの塔 Tower of Babel】

バベルはヘブライ語でのバビロンの呼び名。ヘブライ人はそれを〈神の門Bāb‐ili〉としてではなく,〈乱すbālal〉と結びつけて解し,人類の罪の増大に対する神の対応を語る旧約聖書《創世記》11章の物語に利用した。物語によると,人類はその名声を高めようとして,町と,天に達する塔を共同作業により煉瓦で作ったが,神はこれを人間の自己神化の試みとみて,以後作業のできないように言語を〈乱した〉という。バビロニア各地に33基の聖塔(ジッグラト)のあったことが今日知られているが,首都バビロンの聖塔はシュメール人が着工,未完であったものを後の時代の新バビロニアの王たちが工事を再開し,努力を重ねて前7世紀ネブカドネザル2世の時にようやく完成した。

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大辞林 第三版の解説

バベルのとう【バベルの塔】

旧約聖書創世記に記されている伝説の塔。ノアの洪水後、人間が天にも届くような高い塔を築き始めたのを神が見てそのおごりをいかり、人々の言葉を混乱させ建設を中止させたという。
古代バビロニアに建てられた聖塔。
自己の限界をも省みない、実現不可能なくわだて。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

バベルの塔
ばべるのとう
Tower of Babel

『旧約聖書』「創世記」に記されたれんが造りの高い塔。物語によれば、人類はノアの大洪水ののち、シナル(バビロニア)の地にれんがをもって町と塔を建て、その頂を天にまで届かせようとした。神はこれをみて、それまで一つであった人類の言語を乱し、人間が互いに意志疎通できないようにしたという。この物語の背景には文化史的な事実がある。というのは、古代メソポタミアにおいて、各大都市はジッグラトとよばれる壮麗な塔を日干しれんがで建造し、そこで種々の宗教祭儀を行っていたからである。この事実は考古学的発掘によって証明されている。政治的、経済的、文化的に劣る古代イスラエル人は、この塔を見聞したとき、これにあこがれるのでなく、むしろこういった文明の背後に潜む人間の自己過信や高ぶりを見抜こうとしたのであろう。また、このような大建造物をもって威圧する政治権力が、結局は人々を一致させるどころか分裂させていくということを悟った。
 こうした文明批判から生まれたのがバベルの塔の物語である。「バベルの塔」は比喩(ひゆ)的に人間の高ぶりの業(ごう)の意味で用いられる。また、西欧近世の絵画にしばしばみられるバベルの塔にも、同様の文明批判が込められていることが多い。バベルはバビロンとバラル(乱す)の語呂(ごろ)合せである。[月本昭男]
『前田護郎著『ことばと聖書』(1963・岩波書店)』

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世界大百科事典内のバベルの塔の言及

【ジッグラト】より

…そして前1千年紀にはアッシリアの諸都市でも建造されたが,ここでは宮殿に付属するような形で縮小している。旧約聖書の〈バベルの塔〉の物語はバビロンのジッグラトから生まれたものであろう。【小野山 節】。…

【神殿】より

…ジッグラトは日乾煉瓦造のテラスを積み重ねた階段状の構築物で,完成された形式をもつ現存最古の実例はウルにあり,底面約62m×43m,高さ約20mの3層の塔であった。〈バベルの塔〉の伝説の原型になったと考えられるバビロンのジッグラトは,底面約90m×90m,高さ約90mの7層の塔であったと伝えられ,いずれもその頂上には一部屋の神室が建っていたと考えられる。しばしばこれとならんで建てられる地上の神殿は,住宅や宮殿と同じように中央に中庭があり,神室は中庭に開いていた。…

【塔】より

…それは史上最古のモニュメンタルな塔であった。旧約聖書が伝える〈バベルの塔〉の挿話は,町と塔を建て,その頂を天に届かせようという野望とその失墜の物語であり,バビロンのジッグラトの存在が背景にあると考えられている。バビロンの守護神マルドゥクの神殿があったこのジッグラトは,今では約91m四方の敷地が確認できるだけにすぎないが,復元が試みられている。…

※「バベルの塔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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