バリッシュ(読み)ばりっしゅ(英語表記)Barry Barish

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

バリッシュ
ばりっしゅ
Barry Barish
(1936― )

アメリカの実験物理学者、高エネルギー物理学者。ネブラスカ州オマハで生まれる。1957年カリフォルニア大学バークレー校を卒業、1962年同校から博士号を取得した。1963年からリサーチ・フェローとしてカリフォルニア工科大学(CIT、Caltech(カルテック))の研究チームに加わった。1966年から同大学助教授、1969年に準教授、1972年から物理学の教授に就任した。2005年から同大学名誉教授。
 駆け出しの研究者として、アメリカのフェルミ国立加速器研究所で、高エネルギーのニュートリノビーム実験にかかわり、原子核を構成する素粒子(陽子、中性子)の研究や、電弱相互作用に関する理論を支持する多くの実験データなどを得た。その後、1980年代に磁石(S極、N極)のどちらか一方をもつ磁気単極子の探索と、貫通する宇宙線をとらえる国際プロジェクト「MACRO(マクロ)」(Monopole, Astrophysics and Cosmic Ray Observatory)に参加。実験施設は、イタリアのグラン・サッソ山の地下1000メートルに建設され、素粒子研究の主要拠点として知られており、このプロジェクトはのちに日本のカミオカンデなどと並びニュートリノに質量があることなどを証明した。バリッシュは、1990年代初頭には、テキサス州で建設された超伝導超大型加速器(SSC)のビーム実験(GEM)計画の責任者を務めていたが、1993年、連邦議会が巨大な研究費がかかることから建設中止を決定したことで失業の身になった。翌1994年にレーザー干渉計重力波観測天文台「LIGO(ライゴ)」(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)の主任研究者として迎えられ、1997年から2005年までディレクター(所長)を務めた。この間、重力波をとらえられなかったが、その後、観測を中断し、LIGOの精度を飛躍的に高めた「Advanced LIGO(アドバンスドライゴ)」改良にもアドバイザーとして深くかかわった。Advanced LIGOには、2015年までに5年間で5億ドルの研究費が投じられ、従来の10倍の出力のレーザー光、世界最大の真空施設、精度の高い鏡が備えられた。Advanced LIGOの本格的運用が始まる数日前の2015年9月14日に、約13億年前に二つのブラックホールの合体で生じた重力波の観測に成功。ワシントン州のハンフォードとルイジアナ州リビングストンの2か所に設置されたLIGOは、わずか7ミリ秒の時間差で重力波をとらえた。この重力波観測の成功により、この分野が大きく発展すると期待されている。
 2016年エンリコ・フェルミ賞など受賞多数。2017年「LIGOへの決定的な貢献と重力波の観測」により、アメリカの物理学者キップ・ソーン、レイナー・ワイスとノーベル物理学賞を共同受賞した。[玉村 治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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