通常は、著作権により保護されていた著作物が、著作権の保護期間を経過して社会の公共財産になり、だれでも自由に利用できるようになったものをいう。「公有」ともいう。有名な事例として、中国唐代の著名な書家顔真卿(がんしんけい)の真蹟(しんせき)「顔真卿自書建中告身帖」について、すでに「公有(パブリック・ドメイン)に帰し、何人も、著作者の人格的利益を害しない限り、自由にこれを利用しうる」とした1984年(昭和59)1月20日の最高裁の判決がある。
パブリック・ドメインの語は、広い意味では、著作物のほかアイデア、デザイン、伝統的知識・技術・芸能・医薬・治療法などの広い意味での知的財産が、知的財産権による保護が消滅して、だれでも利用することができるようになったものも含めて用いられている。英語では、単にpublicまたはpublic domainと表現するが、まだ著作権の対象になっていることを示す場合には、たとえば、「Copyright, 2007, Shogakukan Co., Ltd」など、権利者から許諾を得ている場合には「This photo is licensed」などと表記されている。
パブリック・ドメインに近似する意味を表す用語として、インターネット上で「著作権フリー」という語がよく使われるようになっている。この「著作権フリー」には、著作権が消滅しているパブリック・ドメインだけでなく、著作権の一部(たとえば、著作権のうち複製権)だけを放棄している場合や、著作権は維持しながらライセンス付与をするものなど、多様なものが混在しているので、利用しようとする場合は、いずれの意味で用いられているかを確認する必要がある。また、2006年(平成18)から2007年にかけて、映画「ローマの休日」や「シェーン」の日本における著作権は保護期間が満了してパブリック・ドメインとなったとする判決が続いたが、国によりその保護期間の満了時期は異なる。
また、パブリック・ドメインの利用が自由とはいっても、無制限ではない。著作者の人格的利益を害するような利用は認められず、著作者やその遺族から利用の禁止を求められることがある。さらに、すでにパブリック・ドメインではないかと考えられてきた、開発途上国などの伝統的知識・芸能・医薬・治療法などについても、それらに基づくイノベーション(技術革新)やビジネス化がそれらの国々の発展に寄与することから、知的財産権を認めるべきではないかという国際的な議論が進められてきた。とくに、2007年9月13日には、国際連合総会が、世界3億7000万人の先住民の人権保護などをうたった「先住民の権利に関する国連宣言」を採択した。この宣言では、先住民は「知的財産の完全な所有権、管理権および保護に対する承認を得る権利を有する。」とし、具体的にその「人間および他の遺伝学的資源、種子、医薬、動植物相の特性についての知識、口承伝統、文学、文様、並びに視覚芸術および演じる芸術」についての権利を認めている。この宣言は、条約ではないため拘束力はないが、すべての国家がパブリック・ドメインとみなしてきた伝統的知識の保護のための必要な手段を講じなければならないこととなった。なお、国や地方公共団体の創作した著作物、アメリカで連邦政府職員が職務上作成した著作物、大統領の公的スピーチも、パブリック・ドメインとして認められている。
[瀧野秀雄]
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