翻訳|Pantheon
ローマのパラティヌスの丘近くに,ローマ皇帝ハドリアヌスによって118年ころ着工,125-128年ころ完成した神殿。パンテオンとは〈汎神殿〉〈万神殿〉の意。内径42.8mの円形プランを有し,その上に半球状のドームがのる。床面から内側最高部まで42.8mある。軀体はコンクリート造であり,壁体の最も厚い部分は6mある。円堂形の主要部の前にはポルティコ(列柱廊玄関)形式の前部が付く。その三角破風下には〈マルクス・アグリッパ,第3回コンスルのとき(これを)造る〉という碑文があるため,19世紀末では前1世紀末に建造されたとみなされていた。パンテオンには天空の七神がまつられていたとする説があるが,まだ定説ではない。またハドリアヌスはここで裁判も行った。帝国崩壊後は,サンタ・マリア・アド・マルティル聖堂と改名されたため後代の宗教的迫害による破壊をまぬがれ,古代ローマ建築としては最も保存状態の良い建物である。このため,ルネサンス時代のときにパラディオらの建築に大きな影響を与えた。パンテオンは近世以後,王や国家に貢献した物故者の,遺体や遺品を収める墓廟の役割も果たすようになった。ラファエロをはじめ芸術家の墓もパンテオン内部にある。
なお,18世紀後半,パリに建造されたギリシア十字形プランの同名のパンテオンには,ビクトル・ユゴーやエミール・ゾラらの墓がある。
執筆者:青柳 正規
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ローマ市内にある古代ローマの神殿。115~125年ごろ、ハドリアヌス帝によって建てられた、ローマ最大の円蓋(えんがい)建築。完成はアントニヌス・ピウス帝(在位138~161)時代。円形本堂の内径ならびに天井の高さはいずれも43.2メートル、壁の厚さ6.2メートル。北側入口にコリント式柱前柱式の突出廊があり、柱の高さは12.5メートル。本堂内部には七つの壁龕(へきがん)が設けられ、おそらくユピテル(ジュピター)、アポロン、ディアナ(ダイアナ)、メルクリウス(マーキュリー)などの七至上神が祀(まつ)られていたと考えられる。ドームの内側は円蓋天窓の部分を除いて放射状に全部で28列の格間(ごうま)で覆われ、それぞれの格間は五段ずつになっている。採光はドーム頂上に設けられた円形天窓(直径7.5メートル)だけで、壁面には窓はなく、巨大な堂の外形はまったく無装飾である。この神殿は、その数的比例の美と壮大な内部空間の創造という当時の驚くべき土木技術により、西洋建築史上不朽の名作の一つに数えられる。パンテオンは7世紀初めその所有権が教皇の手に渡り、キリスト教の寺院となった。ラファエッロら有名人のほか、近代イタリア諸王が埋葬され、国家的墓廟(ぼびょう)となっている。なお、パンテオンのあるローマ歴史地区は教皇領、サンパオロ・フォーリ・レ・ムーラ教会とともに世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
パンテオンの名称は、「すべての神々の神殿」といった意味であるが、今日では国家的栄誉のある物故者に捧(ささ)げられる建物の意味に用いられ、この種の例としてはサント・ジュヌビエーブ修道院聖堂を霊廟とした「パリのパンテオン」が有名である。
[前田正明]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
「最も神聖な神々の神殿」または「すべての神々の神殿」の意。現在ローマ市にあるものは,ローマ皇帝アウグストゥスの時代に,帝の先祖の神々をまつるためにつくられたもので,のち焼失し,ハドリアヌス帝が再建。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…帰国後リヨンでオテル・デュー(1755)などの公共建築を多く手がけて名声を博し,パリに招かれてサント・ジュヌビエーブ教会(1790。現,パンテオン)などを設計。ローマ滞在中に知ったピラネージを中心とする新古典主義の影響を受け,古典建築の厳正さに奔放な精神を加味したフランス新古典主義建築を生み出した。…
… 建設の歴史は古く,水平に積まれた石層を順次せり出した持送り式ドームの例にミュケナイ時代の遺跡アトレウスの宝庫がある。ローマ時代にはパンテオン(内径43m)に代表される単殻コンクリート造ドームが建設されたが,煉瓦壁とコンクリートによるこの種のドームは基層部に外向きの推力が生じるため,ドームの周囲に沿ってそれを支持する巨大な扶壁(バットレス)を必要とした。一方,ドーム本体の重量はできるかぎり軽減されねばならず,外壁を段状にする(パンテオン),内壁面を格間仕上げとする(同),コンクリート内に空の陶器壺を混入させる(ラベンナ,サン・ビターレ教会)などいくつかの工夫がなされた。…
…前者は彼自身が発掘したハドリアヌス帝のウィラ遺跡の影響を受けた雄大な噴水テラス庭園,後者は同じく古代ローマ時代の園亭を範とした小園であり,いずれも古代の図像と寓意に富む博識かつ衒学(げんがく)的な装飾性を特徴とする。熱心な古代研究家として知られ,古代の文物に関する多くの素描,記録を残したほか,パンテオンの青銅扉とドーム外装を修復した。バチカン宮殿,ベルベデーレ宮殿の庭の改修にも従事したが,教皇庁関係の工事ではミケランジェロの対立者であった。…
…円形の空間は人々の宇宙観,生死観と深い関連をもち,古くから墳墓や神殿の形態として用いられた。古代ギリシアの円形神殿(トロスtholos)もその一例であり,ローマのパンテオン(2世紀初め)は最も壮大な円形神殿で,〈ロトゥンダRotunda(ラテン語)〉の代名詞で呼ばれた。この伝統はキリスト教建築にも継承され,洗礼堂や聖人の廟などに円形プランが用いられることが多かった。…
※「パンテオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新