ギリシア伝説で,アテナイ王テセウスとアマゾンの女王ヒッポリュテHippolytēの子。処女神アルテミスを崇拝してもっぱら狩りに日を過ごしていたヒッポリュトスは,クレタ王ミノスの娘で父の後妻となったファイドラPhaidraの邪恋を退けたため,彼女は義理の息子に犯されたと偽りの手紙を残して自殺し,彼は父にのろわれて国払いの身となった。そこで彼は戦車を駆って,ペロポネソス半島の北東端に近い町トロイゼンに向かったが,その途中,テセウスの訴えで海神ポセイドンが送った怪物に馬が驚いて車を覆し,彼は馬に引きずられて死んだという。この物語はエウリピデスの悲劇《ヒッポリュトス》(前428年に上演され,作者は優勝をかちえた)でもっともよく知られるほか,哲人セネカの悲劇《ファエドラ》,近代ではフランスの劇作家ラシーヌの《フェードル》にも扱われた。
また別の伝承では,ヒッポリュトスはアルテミスの願いにより医神アスクレピオスの手で蘇生させられたといわれ,これをうけたオウィディウスその他のローマ詩人は,彼はその後ディアナ(アルテミスにあたるローマ神話の女神)によってラティウム地方のアリキアの聖林に運ばれ,ウィルビウスVirbius(2度生きる者)の名のもとに女神に仕えたと語っている。ヒッポリュトス伝説発祥の地はおそらくトロイゼンであったと考えられているが,同地には彼の神殿があり,毎年,終身職の神官が犠牲を捧げた。また結婚を目前に控えたトロイゼンの乙女は,髪を供えて彼を悼む習いであったと伝えられる。
執筆者:水谷 智洋
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…彼の作品は92編あったと伝えられるが,現存作品はサテュロス劇《キュクロプス》と偽作《レソス》を含めて19編である。そのうち上演年代が確定している作品は,《アルケスティス》(前438),《メデイア》(前431),《ヒッポリュトス》(前428),《トロイアの女》(前415),《ヘレネ》(前412),《オレステス》(前408)である。他の現存作品は《ヘラクレスの子ら》《アンドロマケ》《ヘカベ》《救いを求める女たち》《ヘラクレス》《イオン》《エレクトラ》《タウリケのイフィゲネイア》《フェニキアの女たち》,そして遺作《バッコスの信女》と《アウリスのイフィゲネイア》であるが,これらは皆《メデイア》以後に上演されている。…
…《メデイア》や《ヘカベ》のように,いかなる思慮分別もせき止めることのできない狂乱激怒が,最後の動機となって奔出することもある。《ヒッポリュトス》では,恥を忘れた女性の恋と恨みが,恥を知る若者を破滅させる。しかしこの世で最も不安定にして没価値的力は〈偶然〉であろう。…
…ギリシア伝説で,アテナイ王テセウスとアマゾンの女王ヒッポリュテHippolytēの子。処女神アルテミスを崇拝してもっぱら狩りに日を過ごしていたヒッポリュトスは,クレタ王ミノスの娘で父の後妻となったファイドラPhaidraの邪恋を退けたため,彼女は義理の息子に犯されたと偽りの手紙を残して自殺し,彼は父にのろわれて国払いの身となった。そこで彼は戦車を駆って,ペロポネソス半島の北東端に近い町トロイゼンに向かったが,その途中,テセウスの訴えで海神ポセイドンが送った怪物に馬が驚いて車を覆し,彼は馬に引きずられて死んだという。…
…初演ならびに初版のタイトルは《フェードルとイポリット》。典拠はエウリピデスの《(冠をもつ)ヒッポリュトス》とセネカの《ファエドラ》。アテナイ王テゼ(テセウス)の若い妻フェードル(ファイドラ)が,恋の女神ベニュス(アフロディテ)の呪いによって義理の息子イポリット(ヒッポリュトス)に対して抱く近親相姦の恋と,そのイポリットが,かつて王に反乱を企てたパラス一族の生き残りの姫アリシーに対して,父の禁制にもかかわらず抱いてしまう恋という,宿命的な二つの〈禁じられた恋〉の破滅的情念を描く。…
※「ヒッポリュトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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