ヒッポリュトス(英語表記)Hippolytos

精選版 日本国語大辞典 「ヒッポリュトス」の意味・読み・例文・類語

ヒッポリュトス

  1. ( [ギリシア語] Hippolytos ) ギリシア悲劇エウリピデス作。紀元前四二八年初演。アテナイ王テセウスの子ヒッポリュトスに対する王の後妻パイドラの恋と、その破局を描く。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒッポリュトス」の意味・わかりやすい解説

ヒッポリュトス
Hippolytos

ギリシア伝説で,アテナイ王テセウスとアマゾンの女王ヒッポリュテHippolytēの子。処女神アルテミスを崇拝してもっぱら狩りに日を過ごしていたヒッポリュトスは,クレタ王ミノスの娘で父の後妻となったファイドラPhaidraの邪恋を退けたため,彼女義理息子に犯されたと偽りの手紙を残して自殺し,彼は父にのろわれて国払いの身となった。そこで彼は戦車を駆って,ペロポネソス半島の北東端に近い町トロイゼンに向かったが,その途中,テセウスの訴えで海神ポセイドンが送った怪物に馬が驚いて車を覆し,彼は馬に引きずられて死んだという。この物語はエウリピデスの悲劇《ヒッポリュトス》(前428年に上演され,作者は優勝をかちえた)でもっともよく知られるほか,哲人セネカの悲劇《ファエドラ》,近代ではフランスの劇作家ラシーヌの《フェードル》にも扱われた。

 また別の伝承では,ヒッポリュトスはアルテミスの願いにより医神アスクレピオスの手で蘇生させられたといわれ,これをうけたオウィディウスその他のローマ詩人は,彼はその後ディアナ(アルテミスにあたるローマ神話の女神)によってラティウム地方のアリキアの聖林に運ばれ,ウィルビウスVirbius(2度生きる者)の名のもとに女神に仕えたと語っている。ヒッポリュトス伝説発祥の地はおそらくトロイゼンであったと考えられているが,同地には彼の神殿があり,毎年,終身職の神官が犠牲を捧げた。また結婚を目前に控えたトロイゼンの乙女は,髪を供えて彼を悼む習いであったと伝えられる。
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ヒッポリュトス
Hippolytos
生没年:170ころ-235

東方(詳細不明)に生まれ,エイレナイオスに学び,ローマで活躍した教父,護教家。博識と論争とで知られる。ローマの司教ゼフィリヌスとカリストゥスとを異端として,一時対立司教とされた。最後に追放された地で死んだので殉教者とされる。《全異端反駁》10巻,《ダニエル書注解》《使徒継承》《世界年代史》などによってキリスト教を弁護する一方,その歴史的意義を考察した。三位一体論では従属説に拠って様態説を攻撃したが,二神論との批難をも受けた。
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百科事典マイペディア 「ヒッポリュトス」の意味・わかりやすい解説

ヒッポリュトス

ギリシア伝説で,テセウスアマゾンの女王ヒッポリュテの子。父の後妻ファイドラの邪恋をしりぞけたため,彼女は義理の息子に犯されたと遺言して自殺,そのため父に呪われ落命したという。エウリピデス《ヒッポリュトス》,ラシーヌ《フェードル》はこの話に取材した作品。
→関連項目アスクレピオス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒッポリュトス」の意味・わかりやすい解説

ヒッポリュトス
Hippolytos

ギリシア神話の人物。アテネ王テセウスとアマゾンのヒッポリュテの息子。彼は狩猟と競技に毎日をおくっていたが,父の後妻となったファイドラ (クレタ王ミノスの娘) が彼に恋をし,思いかなわず,彼女は自殺した。しかしその際,彼女は事実とは逆にヒッポリュトスに言い寄られ,困惑のあまり自殺するという書置きを残したので,テセウスは息子を追放して,父の海神ポセイドンに彼を罰することを祈った。そのためヒッポリュトスが海岸沿いに馬車を疾走させていると,海神の送った怪物が海中から突然現れて,驚いた馬は棒立ちとなり,ころげ落ちた彼は馬車にひかれて死んだという。

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世界大百科事典(旧版)内のヒッポリュトスの言及

【エウリピデス】より

…彼の作品は92編あったと伝えられるが,現存作品はサテュロス劇《キュクロプス》と偽作《レソス》を含めて19編である。そのうち上演年代が確定している作品は,《アルケスティス》(前438),《メデイア》(前431),《ヒッポリュトス》(前428),《トロイアの女》(前415),《ヘレネ》(前412),《オレステス》(前408)である。他の現存作品は《ヘラクレスの子ら》《アンドロマケ》《ヘカベ》《救いを求める女たち》《ヘラクレス》《イオン》《エレクトラ》《タウリケのイフィゲネイア》《フェニキアの女たち》,そして遺作《バッコスの信女》と《アウリスのイフィゲネイア》であるが,これらは皆《メデイア》以後に上演されている。…

【ギリシア演劇】より

…《メデイア》や《ヘカベ》のように,いかなる思慮分別もせき止めることのできない狂乱激怒が,最後の動機となって奔出することもある。《ヒッポリュトス》では,恥を忘れた女性の恋と恨みが,恥を知る若者を破滅させる。しかしこの世で最も不安定にして没価値的力は〈偶然〉であろう。…

【ヒッポリュトス】より

…ギリシア伝説で,アテナイ王テセウスとアマゾンの女王ヒッポリュテHippolytēの子。処女神アルテミスを崇拝してもっぱら狩りに日を過ごしていたヒッポリュトスは,クレタ王ミノスの娘で父の後妻となったファイドラPhaidraの邪恋を退けたため,彼女は義理の息子に犯されたと偽りの手紙を残して自殺し,彼は父にのろわれて国払いの身となった。そこで彼は戦車を駆って,ペロポネソス半島の北東端に近い町トロイゼンに向かったが,その途中,テセウスの訴えで海神ポセイドンが送った怪物に馬が驚いて車を覆し,彼は馬に引きずられて死んだという。…

【フェードル】より

…初演ならびに初版のタイトルは《フェードルとイポリット》。典拠はエウリピデスの《(冠をもつ)ヒッポリュトス》とセネカの《ファエドラ》。アテナイ王テゼ(テセウス)の若い妻フェードル(ファイドラ)が,恋の女神ベニュス(アフロディテ)の呪いによって義理の息子イポリット(ヒッポリュトス)に対して抱く近親相姦の恋と,そのイポリットが,かつて王に反乱を企てたパラス一族の生き残りの姫アリシーに対して,父の禁制にもかかわらず抱いてしまう恋という,宿命的な二つの〈禁じられた恋〉の破滅的情念を描く。…

※「ヒッポリュトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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