改訂新版 世界大百科事典 「ヒレアシシギ」の意味・わかりやすい解説
ヒレアシシギ (鰭足鷸)
phalarope
チドリ目ヒレアシシギ科Phalaropodidaeの鳥の総称。小型のシギでくちばしは細い。脚は短く,あしゆびにひれ状の水かきのあるのが特徴。泳ぐのはうまい。夏羽では雄は雌よりも羽色がじみで,営巣,抱卵,育雛(いくすう)を行う。雌は産卵すると営巣地を離れ,小群で生活する。水辺の地上に皿形の巣をつくり,1腹4個の卵を産む。世界に1属3種がある。アカエリヒレアシシギPhalaropus lobatus(英名red-necked phalarope)は全長約20cm。夏羽は上面が青黒色で背には赤褐色の縦斑があり,くび側から上胸部は赤褐色,のどと胸から腹にかけては白い。冬羽は上面が灰色,下面は白く,黒い過眼線が目だつ。
ハイイロヒレアシシギP. fulicarius(英名grey phalarope,red phalarope)は全長約22cm。くちばしが少し太い。夏羽は頭上が黒く,背は黒くて橙色の羽線があり,顔は白く,のど以下の下面は赤褐色。冬羽は上面灰色で,下面が白い。両種とも,北極圏のツンドラで繁殖し,冬は南へ移動する。日本には旅鳥として渡来し,海洋上に群れで生活するが,ときには海岸近くの干潟,内陸の水たまりにも出現する。水の上をくるくる回って泳ぎ,水流とともに浮いてくる微小な動物質の餌をとる。アメリカヒレアシシギP.tricolor(英名Wilson's phalarope)は全長約25cmで他の2種よりくびとくちばしは細長い。夏羽は上面に灰色,赤褐色,黒褐色の縦の斑紋がある。冬羽は上面が灰色で下面は白い。北アメリカ大陸の中西部の内陸で繁殖し,南アメリカの湿地で越冬する。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報