ビタミンEと代謝異常(読み)びたみんいーとたいしゃいじょう

家庭医学館 「ビタミンEと代謝異常」の解説

びたみんいーとたいしゃいじょう【ビタミンEと代謝異常】

 ビタミンEは、脂肪に溶ける脂溶性(しようせい)ビタミンで、不妊症(ふにんしょう)を改善するビタミンとして発見されました。その後、脂質酸化を抑え、細胞が酸化されて傷害されるのを防ぐ作用(抗酸化作用(こうさんかさよう))があることが明らかにされました。
 脂質代謝に関与しているため、高脂血症(こうしけっしょう)(「高脂血症(高リポたんぱく血症)」)の改善や予防に効果があるのです。
 また、血液循環をよくするはたらきがあるため、冷房病冷え症にも効果があります。最近では、アルツハイマー病(「アルツハイマー病」)の進行を遅らせるという研究報告もあります。
 ビタミンEには、まれに、つぎのような欠乏症や過剰症がみられます。
◎ビタミンE欠乏症
■低体重児における欠乏症
 もともと低体重児や成熟新生児には、血液に含まれるビタミンEが少なく、脂質の過酸化をおこしやすいものです。そのうえ、酸化しやすい高度不飽和脂肪酸(こうどふほうわしぼうさん)を多く含む粉乳(ふんにゅう)をとると、その酸化防止にEが使われ、その結果、過酸化脂質によって細胞が酸化され、むくみ、湿疹(しっしん)、貧血血小板(けっしょうばん)の増加といった、さまざまな障害がおこります。
■脂肪吸収障害(しぼうきゅうしゅうしょうがい)による欠乏症
 食品中の脂肪は、胆汁(たんじゅう)の作用で消化吸収されますが、なんらかの原因で胆汁がうっ滞(たい)し、十二指腸に十分流入しなくなると、脂肪が吸収されにくくなります。それにともなってビタミンEも、小腸から吸収されにくくなり、欠乏します。
 また、無β(むベータ)リポたんぱく血症(けっしょう)(コラム「無βリポたんぱく血症」)という病気では、体内で脂溶性の物質を運搬するβリポたんぱくがないため、臓器にビタミンEがとどかず、ビタミンE欠乏症がおこります。
 欠乏症をおこすと、赤血球(せっけっきゅう)の寿命が短くなり、形態異常をおこすほか、歩行や腱反射(けんはんしゃ)の障害、眼球運動のまひ、振動感(しんどうかん)の消失、筋力の低下、小脳消失症(しょうのうしょうしつしょう)など、神経、筋肉、網膜(もうまく)などにさまざまの症状がおこります。
■ビタミンE単独欠損症(たんどくけっそんしょう)
 胆汁(たんじゅう)うっ滞症(たいしょう)や無β(むベータ)リポたんぱく血症(けっしょう)をともなわない小脳失調症(しょうのうしっちょうしょう)では、ビタミンE結合たんぱくが正常な形でないため、小脳に失調がおこります。たいへんまれな家族性の病気です。
 検査と診断 ビタミンE欠乏症が疑われるときは、ふつう血清(けっせい)中のEを測定します。しかし、高脂血症(こうしけっしょう)の場合は血清中のEは高い値を示すため、正確な判断ができません。その場合は、血清脂質(けっせいししつ)、赤血球のE濃度、過酸化水素による赤血球膜の抵抗性を測定します。
 治療 低体重児の欠乏症では、粉乳の中の高度不飽和脂肪酸とビタミンEの量が、適切な割合になるように、ビタミンE剤を使用します。
 胆汁の腸への流入不足による脂肪吸収障害では、原因である病気の治療をするとともに、Eを大量に服用します。筋肉注射するといっそう効果的です。
 ふつうの食生活をしているかぎり、欠乏症はおこりませんが、欠食やあやまったダイエットで他の栄養素とともに不足します。Eは脂溶性ビタミンですから、食事といっしょに摂取しないと吸収がよくありません。
◎ビタミンE過剰症
 ビタミンEを多量にとると、体内に蓄積しますが、重い障害はみられません。ただし、まれに、一時的な胃腸の不調、下痢(げり)、だるさ、尿中のクレアチンや血中の中性脂肪の増加がみられることがあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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