日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビワマス」の意味・わかりやすい解説
ビワマス
びわます / 琵琶鱒
Biwa salmon
Biwa-masu
[学] Oncorhynchus rhodurus
硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚。本来琵琶湖(びわこ)の特産とされ、古くからアメノウオ、エサケ、ミズサケとよばれた。外観はサクラマスとよく似るがやや小形で、幼魚はアマゴと同様に小判形のパーマークと朱点を有する。諏訪(すわ)湖で「アメ」とよばれるのは小形のビワマスとみなされる。これまで渓流のアマゴとまったく同一の魚種と考えられていたが、近年、外観や生活型のうえでアマゴとは異なった系統群の魚、もしくは別亜種とする見解が強い。すなわち、幼時のパーマークがアマゴのそれと多少異なり、湖水生活に入ったものはパーマークと朱点が消えて銀白色となる。大形のものは60センチメートルに達し、小アユ、イサザ、小エビおよび水生昆虫などの小動物を捕食する。主として3年目に成熟し、産卵期は10月中旬から11月下旬で、サクラマスの場合と同様の第二次性徴、とくに淡紅色と緑褐色の婚姻色が目だち、雌はやや黒ずむ。流入河川のやや下流域で産卵し、当歳の幼魚は、春に湖水に降下する。かなり以前から人工孵化(ふか)放流が行われており、また芦(あし)ノ湖、中禅寺湖などに移されて繁殖しているが、中禅寺湖のマスは近年サクラマスとの混合(交配?)のためかビワマスの特性が不明となっているという。アマゴと比べて池中養殖はややむずかしい。湖沼の釣りの対象で肉味も佳良である。
[久保達郎]