日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビーダーマイアー」の意味・わかりやすい解説
ビーダーマイアー
びーだーまいあー
Biedermeier
1815年から48年までの復古期のドイツとオーストリアでの市民の生活様式と生活感情の名称。初めはL・アイヒロットが発表した『シュワーベン牧師ゴットリープ・ビーダーマイアーの詩集』(1850)に由来する嘲笑(ちょうしょう)的な呼称で「心地よい愚直さ」を身上とした。1930年代に文学史概念としてシュティフター、メーリケ、ドロステ・ヒュルスホフ、グリルパルツァーらに適用され、「若きドイツ」派と対比された。とくに室内装飾や優美で軽快な家具のスタイルとして定着し、絵画の様式のほうでもR・リヒター、M・シュビント、バルトミューラーらに適用され、内向的な笑いを示すシュピッツベークがあげられる。
文学上のビーダーマイアーについては、1930年代にG・バイト、W・ビータック、クルックホーンらによって提唱され、賛否両論を招いた。だが第二次世界大戦直後からシュティフター、メーリケ、ドロステ・ヒュルスホフらの詩人の再評価と呼応して、「復古期」のドイツ文学の視点が導入され、十余年かけて完結されたフリードリヒ・ゼングレ著『ビーダーマイアー期』三巻によって19世紀ドイツ文学史の書き換えが行われ、いわゆる保守的な作家たちと、ハイネ、グラースブレンナー、ネストロイ、プラーテン、ゴットヘルフらが同じ文学史的磁場で把握され、ビーダーマイアーが時代概念として提起され定着している。
[宮下健三]
『今井寛・小名木栄三郎・宮下健三他編著『19世紀ドイツ文学の展開』(1981・郁文堂)』