オーストリアの作家シュティフターの長編小説。1857年刊。ヘッベルによって、読み終えた者には「ポーランドの王冠を与える」と酷評され、ニーチェには、繰り返し読むに値する「ドイツ散文の宝」と賞賛されたこの作品は、広義の教養小説の系譜を引いて、人間の魂の発展を描いた。青年ハインリヒが学問・芸術・愛へと開眼してゆく過程と、導き手の男爵リーザハとマティルデの過去の恋の物語とが、バラの館(やかた)を舞台に互いに織り合わされながら、冬と死を控えた晩秋に訪れる、夏の日々にも比せられる晩夏の「精神的」風土のうちに語られる。それは過ぎ去った夏と青春を惜しむ老年の挽歌(ばんか)であり、その挽歌にはぐくまれた青春の賛歌でもある。
[谷口 泰]
『宇田五郎訳『晩夏』全二巻(1949、50・桜井書店)』▽『藤村宏訳『世界文学全集31 晩夏』(1979・集英社)』
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…ニューセブン,立花オレンジ,甘夏つるみともいう),果面の橙色が濃いもの(紅甘夏),果皮色素がいっそう紅色に変異したもの(サマーレッドなど)がある。(2)晩夏(おそなつ) 夏までに果実に緑色が残り,す上がりしにくい系統(田島晩夏)。(3)無核夏 種子がないもの(土屋系,山路系)。…
…以後オーバーエスタライヒ州の視学官として教育改革に情熱を注ぐ。激務の合間に刊行された短編集《石さまざま》(1853)は,その序文に説かれている彼の世界観〈おだやかな法則〉によって知られ,恵まれた環境での人間の内的形成の理想像を描いた教養小説《晩夏》(1857)は,ヘッベルに酷評されたが,ニーチェはドイツ散文文芸の至宝としてたたえた。作品の評価をめぐる対立は,根本的には今日もなお続いている。…
※「晩夏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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