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フエンテス フエンテスFuentes, Carlos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フエンテス
Fuentes, Carlos

[生]1928.11.11. パナマ,パナマ
[没]2012.5.15. メキシコ,メキシコシティー
メキシコの小説家。20世紀のメキシコを代表する作家。外交官の父のもとに生まれ,家族とともに父の赴任地の北アメリカ,南アメリカ,ヨーロッパに移り住んだ。メキシコ大学で法律を学んだのちスイスのジュネーブにある国際高等研究所に入った。その後外務省に勤務し,1950~52年国際労働機関 ILOのメキシコ代表,1975~77年駐仏大使を務めた。1950年代初期に共産主義にかかわったが,1962年に左翼組織から離脱した。1954年に初の短編集『仮面の日々』Los días enmascaradosを発表,最初の長編『澄みわたる大地』La región más transparente(1958)で注目を浴び,革命の理想を裏切った出世主義者の回想を描いた『アルテミオ・クルスの死』La muerte de Artemio Cruz(1962)で文壇における地位を不動のものにした。ほかに短編集『盲人の歌』Cantar de ciegos(1964),"Constancia, y otras novelas para vírgenes"(1989),中編『聖域』Zona sagrada(1967),長編『脱皮』Cambio de piel(1967),ジェームズ・ジョイスやアレクサンドル・デュマの影響を受けた『われらが大地』Terra nostra(1975,ロムロ・ガリェゴス賞),『ヒドラの頭』La cabeza de la hidra(1978),『老いぼれグリンゴ』Gringo viejo(1985。1989映画化),戯曲 "Todos los gatos son pardos"(1970),評論集『二つの扉の家』Casa con dos puertas(1970),『メヒコの時間――革命と新大陸』Tiempo mexicano(1972)など。1987年,スペイン語圏最高の文学賞であるセルバンテス賞を受賞した。(→ラテンアメリカ文学

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百科事典マイペディアの解説

フエンテス

メキシコの作家。父が外交官だったこともあって,幼いころから各地を転々とした。処女作は短編集《仮面の日々》(1954年)。長編《空気の最も澄んだ土地》(1958年)で注目され,1960年代以降ラテン・アメリカ文学のブームを担う作家として《アルテミオ・クルスの死》(1962年),《脱皮》(1967年),そして代表作《われらの大地》(1975年)などの長編を発表。
→関連項目レイエス

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世界大百科事典 第2版の解説

フエンテス【Carlos Fuentes】

1928‐
メキシコの作家。1950年代の半ばに短編集《仮面の日々》で登場したあと,ジョイス,フォークナー,ドス・パソスらに学んだ実験的な大作《空気の最も澄んだ土地》(1958)や,世紀初頭の革命を核とするメキシコ現代史と個人的な夢や死の世界を交錯させた《アルテミオ・クルスの死》(1962)によって,ラテン・アメリカ小説の代表的な存在として認められた。《聖域》《脱皮》(ともに1967),《われらが大地》(1975),《遠い家族》(1980)のような長編に加えて,《セルバンテスもしくは読みの批判》(1976)といった評論や,《月下の蘭》(1982)のような戯曲が数多くある。

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大辞林 第三版の解説

フエンテス【Carlos Fuentes】

1928~ ) メキシコの小説家。メキシコ人のアイデンティティーを問う。長編「アルテミオ=クルスの死」「テラ-ノストラ」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フエンテス
ふえんてす
Carlos Fuentes
(1928―2012)

メキシコの小説家、評論家。パナマ市生まれ。父親が外交官であったため、少年期を南米諸国や合衆国の首都で過ごす。大学卒業後は母校と外務省に勤務。この間、幻想短編集『仮面の日々』(1954)で文壇に登場。最初の長編小説『大気澄み渡る地』(1958)で、革命後、退廃する上流社会を赤裸々に描くと、賛否両論が沸騰し国の内外で注目される。翌年、自伝的小説『良心』発表後は外務省を辞め創作に専念。一作ごとに文体を変えながらメキシコあるいはメキシコ人のアイデンティティを追求し続ける。
 おもな作品には、貧民から財界の黒幕となる男の一生を死の床から誕生へとフィードバックさせて描き、国際的作家としての地位を確立した『アルテミオ・クルスの死』(1962)、ユリシーズ神話を背景に犬に変身する青年を描く『聖域』(1967)、メキシコ神話と西欧文化を対比しながら小説とは何かを探る『脱皮』(1967)、フェリペ2世の苦悩を軸に、SF的手法を用いて新・旧両大陸の宇宙観を描き、欧米読書界の話題をさらった『我らが大地』(1975)、メキシコで行方不明となったアメリカの作家アンブローズ・ビアスの最期を創出した『老いぼれグリンゴ』(1985)、メキシコの近未来を描いた『胎内のクリストバル』(1987)などの長編がある。また、『アウラ』(1962)、『誕生日』(1969)など、永遠の生を扱った幻想中編のほか、メキシコの本質、現状を論じた『メヒコの時間』(1971)、『新メヒコの時間』(1994)、作家論『イスパノアメリカの新しい小説』(1969)、『扉の二つある家』(1970)など評論も多い。なお、『老いぼれグリンゴ』は、1989年、ジェーン・フォンダ、グレゴリー・ペックの出演でアメリカにおいて映画化(映画邦題『私が愛したグリンゴ』)された。[安藤哲行]
『西澤龍生訳『メヒコの時間』(1975・新泉社) ▽木村榮一訳『聖域』(1978・国書刊行会) ▽牛島信明訳『セルバンテスまたは読みの批判』(1982・水声社) ▽安藤哲行訳『アウラ』(『仮面の日々』を併録・1982・エディシオン・アルシーヴ) ▽木村榮一訳『アウラ・純な魂』(岩波文庫) ▽内田吉彦訳『脱皮』(1984・集英社) ▽木村榮一訳『アルテミオ・クルスの死』(1985・新潮社) ▽堀内研二訳『遠い家族』(1992・現代企画室) ▽安藤哲行訳『老いぼれグリンゴ』(集英社文庫) ▽古賀林幸訳『埋められた鏡』(1995・中央公論社)』

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世界大百科事典内のフエンテスの言及

【ラテン・アメリカ文学】より

… 植民地的な遺制からの脱却の可能性を示すことによって,ラテン・アメリカの人々,とりわけ知識人らの精神を高揚させたキューバ革命の成功と符節を合わせたかのように,60年代の初めから次々に傑作,秀作と呼ぶべきものが発表されだした。アルゼンチンのペロン政権下の暗い時代の中での不条理な愛の葛藤を描いたサバトErnesto Sábato(1911‐ )の《英雄たちと墓》(1961),廃虚に等しい工場を舞台にして生の無意味を追究したウルグアイのオネッティの《造船所》(1961),フランス大革命のカリブ地域に及ぼした影響をたどったキューバのカルペンティエルの《光の世紀》(1962),メキシコ革命で成り上がった男の臨終の床の意識をなぞったフエンテスの《アルテミオ・クルスの死》(1962),実験的なスタイルで根なし草的な生を浮かび上がらせたアルゼンチンのコルターサルの《石蹴り遊び》(1963),ペルーの社会的現実を全体小説のかたちでとらえたバルガス・リョサの《緑の家》(1966)。そして,架空の町マコンドの創建と滅亡に仮託して新世界の歴史を描いたコロンビアのガルシア・マルケスの《百年の孤独》(1967)。…

※「フエンテス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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