フラン(英語表記)franc

翻訳|franc

精選版 日本国語大辞典 「フラン」の意味・読み・例文・類語

フラン

〘名〙 (furan) 無色の液体。化学式は C4H4O 松材の乾留物から得られる。フルフラン

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デジタル大辞泉 「フラン」の意味・読み・例文・類語

フラン(furan)

酸素原子1個、炭素原子4個を含む五員環複素環式化合物クロロホルムに似た特異臭のある無色の液体。水に不溶。エタノールなどの有機溶媒に溶けやすい。松脂まつやにから得られるタールに含まれる。フルフラン。示性式はC4H4O

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改訂新版 世界大百科事典 「フラン」の意味・わかりやすい解説

フラン
franc

フランス,およびスイス,ベルギールクセンブルクなどの旧通貨単位。1フランは100サンチームcentime。フランといえば,通常フランスの法定貨幣(フランス・フランfranc française)を考えやすいが,スイス(スイス・フラン),ベルギー(ベルギー・フラン)などでもその法定貨幣はフランと名づけられている。これらの国々の法定貨幣の呼称がフランで共通しているのは,1865年のパリ協約でフランス,ベルギー,スイス,イタリアの4ヵ国(後にスペインなどが加盟)によるラテン貨幣同盟Union monétaire latineが締結され,フラン金貨,フラン銀貨を無制限法貨にしたことによる。19世紀末のオーストラリアや北アメリカの金鉱の発見は,ヨーロッパ主要国の金属貨幣の価値(金純分)に多大の影響を与え,貨幣流通秩序が混乱したので,これらの国々は純分の等しい同一の貨幣を鋳造したのである。もっとも〈フラン〉の呼称それ自体は,ジャン2世(在位1350-64)が1360年適正な純金のドニエ貨に対しフランと命名したことに由来する。この〈フラン〉は量目が純金3.88gで,計算貨幣1リーブルlivreと正確に対応していた。リーブルとフランはフランス革命まで同義語で,区別なく使われている。

 さてフランスにおける最初のフラン貨幣は,1800年ナポレオン1世の創設したフランス銀行が,03年(共和暦第11年ジェルミナール(芽月))の貨幣法によって発行した銀行券〈ジェルミナール・フラン〉である。1フランの価値は,金322.5mgまたは銀4.5gと定められた。48年の二月革命後のインフレーションは,フランス銀行にとって大きな試練であったが,世界最初の銀行券発行最高限度額の設定により困難を克服し,全国に法定通用力をもつ貨幣フランとすることに成功したのである。ジェルミナール・フランは,第1次大戦が勃発した1914年までおよそ1世紀の間,帝政,王政,共和政と交代するなかで大した変化もみせず維持された。第1次大戦による巨額の財政赤字と物資の欠乏はフランスに激しいインフレをもたらし,フランの実質価値は著しく低下した。しかしフランの対外価値は,イギリスとアメリカの援助のほかに為替管理と外貨の投機的買付け禁止措置(1917)によって比較的安定していた。戦争が終わり,財政赤字はドイツからの賠償金で補塡(ほてん)するという期待がついえたとき,フランの信認はたちまち崩れ26年ついに暴落した。28年ポアンカレ内閣が金為替本位制を導入し,フランの安定に成功したかにみえた。ところが1年もたたぬうちに大恐慌が勃発した。ウォール街での株の暴落,銀行恐慌,マルクの崩壊,ポンドの脆弱(ぜいじやく)化など危機の兆候が広がるなかで,フランを安定化させたばかりのフランスは,当初最も安全な通貨の避難場所にみえた。しかし32年,恐慌の兆候が表面化し,フランスからの資本逃避が目立ちはじめた。為替切下げによってドルとポンドの安全性が高まったからである。ドルの金本位制離脱(1933)から3年後,フランも切り下げられた。

 第1次大戦と同様に,第2次大戦もフランに重大な混乱をもたらした。フランス経済の疲弊により,戦後のフランも再三切り下げられたのである。不断の物価上昇と国際収支の悪化が金・外貨準備を枯渇させた結果,フランは48年1月44.44%,さらに49年9月22.27%切り下げられた。後者の切下げ措置はポンド切下げに誘発されたものであるが,これを機会に戦後の複数為替相場制を撤廃し単一レートを回復した。これだけ大幅なフラン切下げでもフランス経済の内外均衡が回復しなかったどころか,アルジェリア戦争による軍事費の増大がフランを弱化させ,ついに57年8月輸入税徴収,輸出奨励金交付によって事実上20%の切下げに踏みきった。さらに58年12月EEC(ヨーロッパ経済共同体)の発足に伴い,IMFの承認を得て17.55%の切下げを行い,同時に新フラン(=旧100フラン)の発行(デノミネーション)と通貨量の圧縮によってフランの地位はようやく固まった。フランを含む欧州通貨の安定を図るため,79年3月EMS(ヨーロッパ通貨制度)が発足し,通貨協力と微調整を重ねながら対外的には共同フロート,対内的には固定レートが維持された。

 2002年1月からヨーロッパ連合(EU)の単一通貨〈ユーロ〉導入によりフランス,ベルギー,ルクセンブルクではフランは姿を消すこととなった。
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フラン
furan


1880年マツ科の木の乾留物からはじめて得られた無色,クロロホルム様の臭気をもつ液体。沸点32℃。木材の乾留物(木精)にも含まれているが,これらは乾留の際に糖類等の分解によって生じたもので,もともと木材中に含まれているものではない。工業的にはフルフラールを酸化して得られるピロ粘液酸2-フランカルボン酸)の脱炭酸またはフルフラールのアルカリ処理でつくる。チオフェンなどとともに代表的な芳香族複素環式化合物であるが,芳香族性は小さく(共鳴エネルギー23kcal/mol),ジエンとしての性質が強く,ディールス=アルダー反応(ジエン合成)を行う。しかし芳香族化合物として2位に求電子置換反応を受ける。

アルカリには安定だが酸で完全に重合ないし分解する。ニッケル触媒による水素添加で,溶剤として重要なテトラヒドロフラン(THF)となる。フランの検出には,塩酸で湿らせた松の木片を緑色に染める松材反応が用いられる。フランから水素原子1個を除いた基をフリルfuryl基,α位(2位)の水素1個をメチレン基-CH2-で置換した基をフルフリルfurfuryl基という。


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化学辞典 第2版 「フラン」の解説

フラン
フラン
furan

C4H4O(68.07).マツの木から得られるタール中に存在する.フルフラールを酸化すると得られる2-フランカルボン酸を,加熱脱炭酸すると得られる.クロロホルム臭をもつ無色の液体.沸点32 ℃(10 kPa).0.9371.1.4216.エタノール,エーテル,石油エーテルに易溶,水に微溶.アルカリには安定であるが,無機酸では樹脂化する.マツ材-塩酸反応で緑色を呈する.フラン誘導体は植物の精油成分として存在するものが多い.フランは芳香族性が比較的小さく,ジエン性が高いため,ディールス-アルダー反応を起こしやすい.ナトリウムアマルガムでは還元されないが,ニッケル触媒による水素添加により,テトラヒドロフランを生成する.カチオノイド試薬による置換反応はα位で起こりやすい.脱水剤の存在下にアンモニアあるいは硫化水素と加熱すると,それぞれピロール,チオフェンを生成する.蒸気は麻酔作用があるので注意を要する.ラットの致死濃度は30400 ppm.また,エーテルと同様に過酸化物を形成するので,蒸留には注意が必要である.[CAS 110-00-9]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フラン」の意味・わかりやすい解説

フラン
furan

マツの木から得られる油中に存在し,フランカルボン酸の脱炭酸により工業的に製造される。無色の液体,沸点 31.3℃で,エーテル臭が強い。水には溶けにくいが,アルコール,エーテル,アセトンには完全に溶ける。アルカリに安定で,酸に対しては分解して樹脂状の物質に変化する。実験室的にはフランカルボン酸の熱分解によって得られるほか,フルフラールと水蒸気を適当な触媒上を通すことによって大量に生産される。多重結合化合物とディールス=アルダー反応を行う。

フラン

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栄養・生化学辞典 「フラン」の解説

フラン

 C4H4O (mw68.08).

 誘導体に食品の香気成分がある.

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デジタル大辞泉プラス 「フラン」の解説

フラン

サンリオのキャラクターシリーズ「フランボアルゥルゥ」のメインキャラクター。パリに住む女の子ルゥルゥと一緒に暮らすフランボアーズ色のクマのぬいぐるみ。

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