一国経済の安定と成長には貨幣制度の確立が必要である。貨幣は価値の基準ないし交換・支払いの手段として機能するが、なによりもその貨幣が人々によって受け取られなければならない。これを貨幣の一般的受領性という。貨幣制度のうち、貨幣の一般的受領性を保証する仕組み全体をとくに本位制度という。
本位貨幣とは、一国における価値尺度および価格の度量基準として機能する無制限通用力をもつ貨幣として国家権力が定めた貨幣であるが、それが人々によって受け取られるためには、その裏づけが必要である。これを、素材価値に求める場合を拘束本位制度(または金属本位制度)とよび、素材価値に求めずに金融政策で貨幣数量をコントロールすることによって本位貨幣の価値を維持しようとする制度を、拘束本位制度に対し自由本位制度(または紙幣本位制度)という。しかし、完全な自由ということはありえないから、現実には管理通貨制度をとっている。
拘束本位制度ないし金属本位制度は、素材である金属により金本位制度と銀本位制度とに分けられる。さらに、単一の金属を本位とするか、そうでないか、によって単本位制度と複本位制度とに分けられる。しかし、理論的には本位貨幣は一つの金属による以外にないから、複本位制度は単本位制度への移行に際する過渡的な制度といえよう。その間で一方の金属を本位貨幣とし他方の金属をそれに従属させる場合を跛行(はこう)本位制度という。
歴史的には1930年代の世界恐慌から第二次世界大戦前までは金本位制度がとられていたが、現実にはかならずしも純粋な形態ではなかった。すなわち、金本位制度には理論的に金貨本位制度と金核本位制度とがあり、金貨本位制度が真の金本位制度といえるものであるが、現実には概して金核本位制度がとられていたのである。この制度は、国内通貨と対外決済とを区別し、国内通貨では金の節約のために兌換(だかん)銀行券を流通させ、対外決済には銀行券の兌換によって金地金または金為替(かわせ)を利用するというものであった。金地金と兌換される場合を金地金本位制度とよび、金為替と兌換される場合を金為替本位制度という。金為替本位制度は、第二次世界大戦前には、宗主国に対して従属する植民国が採用した本位制度で、典型的にはインドにみられた。金為替本位国は金地金本位国に従属するところに意味があった。これに対して、戦後の国際通貨基金(IMF)体制は、各国の通貨がドルにリンクすることから一種の金為替本位制度といえるが、そこには戦前の金為替本位制度のような支配・従属の関係はない。そのうえ、各国とも国内においては管理通貨制度がとられていることに根本的な差異がみいだされよう。管理通貨制度は今日、変動相場制とリンクしている。
[石野 典]
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… 貨幣経済の発達は,商品貨幣から,銀行券,政府紙幣のようなそれ自体の使用価値はほとんどまったく存在しない表券貨幣へという移行を伴っているが,この表券貨幣が貨幣として流通しうるのも,上に述べた信認が存在するからである。表券貨幣に対するこの信認を維持するためのくふうとしてとられたのが,表券貨幣の裏づけとして,商品貨幣を位置づけるという本位制度であった。表券貨幣をいつでもあらかじめ定められた比率で商品貨幣に兌換(だかん)しうるという制度的保証が,表券貨幣に対する人々の信認を支えたわけである。…
…金属貨幣の鋳造・流通はきわめて古い時代から行われていたが,近代になると,国家は法律を制定してその国の貨幣制度の中心となる基本貨幣を定めて,その自由鋳造,自由廃幣,強制通用力を認め,またこの貨幣を基準にして貨幣単位の価値を示すようになった。このような制度を本位制度とよび,基本貨幣を本位貨幣といっている。銀本位制度は,銀が本位貨幣となっているもので,貨幣単位の価値が一定量の銀によって示され,商品の価格も銀の価値を標準として表示される。…
※「本位制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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