アメリカのウーマン・リブの運動に火をつけた女性運動の指導者。ユダヤ系で、カリフォルニア大学の大学院で心理学を学び、ニューヨークで労働問題に関する記者となったが2人目の子供の出産で退職。第二次世界大戦後の、女性を家庭の主婦という型にはめようとする社会的圧力を分析して『女らしさの神話』The Feminine Mystique(1963。邦題『新しい女性の創造』)を書き、これがベストセラーとなって各地で女性解放運動が起こった。1966年に全米女性機構NOW(National Organization for Women)をつくり1970年まで会長、1970年の「平等を目ざす全米女性のストライキ」にはその指導者となった。1971年に全米女性政治会議を設立、1972年以後いくつかの大学の客員教授などを務め、1980年(昭和55)には来日し講演などを行った。また『セカンド・ステージ』The Second Stage(1981)を著し、真の男女平等を獲得するために男性とともに闘うことの重要性を主張、戦闘的な運動家たちを批判した。その後10年をかけて多角的に老いの研究を進め『老いの泉』The Fountain of Age(1993)を刊行し、老いの神話にとらわれて若さに執着することの誤り、老いと衰えは異なること、老年期の成長と発展に目を向けようと提言した。彼女の思い出をつづった『これまでの人生』Life So Far(2000)も出版された。
[白井尭子]
『三浦冨美子訳『増補 新しい女性の創造』(1977/改訂版・2004・大和書房)』▽『ベティ・フリーダン著、渥美育子訳『女の新世紀へ アメリカ女性運動の記録』上(1979・ジャパン・パブリッシャーズ)』▽『国際女性学会編『家庭の構造』(1981・PHP研究所)』▽『下村満子訳『セカンド・ステージ』(1984・集英社)』▽『山本博子・寺沢恵美子訳『老いの泉』上下(1995・西村書店)』▽『ブリジッド・オファレ編、女性労働問題研究会・労働と福祉部会訳『ビヨンド・ジェンダー――仕事と家族の新しい政治学』(2003・青木書店)』▽『Life So Far(2000, Simon & Schuster, New York)』
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アメリカのウーマン・リブ運動指導者。ユダヤ系宝石商の子として生まれ,大学で心理学,社会学を学びジャーナリストとなったが,結婚して引退した。1963年に著書の《The Feminine Mystique》(邦訳《新しい女性の創造》)で,女性も家庭の外にみずからの生きがいを見いだすべきだと説いて中産階級の女性の共感をよび,女性解放への関心を高めた。66年,全国女性会議National Organization for Women(略称NOW)を組織,70年まで会長を務め,以来,憲法の平等権修正Equal Rights Amendment(略称ERA)を主目標に男女平等のための運動を指導する。
執筆者:有賀 夏紀
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1921~2006
アメリカの女性解放運動の代表的指導者。1963年に女性の社会参加の重要性を説いた『女らしさの神話』(邦訳『新しい女性の創造』)を出版し,66年に全米女性機構を創設,70年まで会長を務めた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…第2次大戦後の安定期に家庭に帰った女性が,その生活に満足できなかったこと,また高等教育を受ける女性が増大したにもかかわらず,彼女たちには能力を生かす機会が与えられなかったことなどが,黒人運動や学生運動における性差別に触発されて,新しい女性運動を生みだしたのである。フリーダンの《女らしさの神秘The Feminine Mystique》(1963,邦題《新しい女性の創造》)は,この運動の拡大に影響力をもった。ウーマン・リブは,女性を拘束している家族,男女の性別役割分業,つくられた〈女らしさ〉,それらの上に立つ政治・経済・社会・文化の総体を批判し,現実を直視し連帯を強めるための女性の意識高揚consciousness raisingを主張した。…
※「フリーダン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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