フルトン(読み)ふるとん(英語表記)Robert Fulton

デジタル大辞泉 「フルトン」の意味・読み・例文・類語

フルトン(Robert Fulton)

[1765~1815]米国の技師。実用的蒸気船発明者で、1807年に外輪式蒸気船クレアモント号を建造してハドソン川遡航そこうした。

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精選版 日本国語大辞典 「フルトン」の意味・読み・例文・類語

フルトン

  1. ( Robert Fulton ロバート━ ) アメリカの技師・発明家。運河の水門の改良、潜水艇の発明、蒸気船の実用化などを行なう。(一七六五‐一八一五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フルトン」の意味・わかりやすい解説

フルトン(Robert Fulton)
ふるとん
Robert Fulton
(1765―1815)

アメリカにおける汽船開発の先駆者ペンシルベニア州リトル・ブリテン(現、フルトン)の農家に生まれる。3歳のとき父を失い、独学で絵画・機械学や数学を修得し、17歳のときフィラデルフィアでデザイナーとして働いた。1786年ロンドンに渡り、1793年ごろまでB・ウェストの弟子として絵を描いていたが、ブリッジウォーター公3rd Duke of Bridgewater(1736―1803)、スタンホープ伯と知り合いになり、運河や船舶の改良に関して相談に応じるなどした。1796年『運河航行の改良論』を著し、その計画をデー川で採用、実施させた。のちにこの計画をパリからディエップまでの運河に実施するために、1797年から1806年までフランスに滞在し、その間に潜水艇および水雷艇の実験を行った。ナポレオンの援助を得て1801年に実験に成功した潜水艇ノーチラス号がそれである。また汽船航行に関心をもつフランス駐在アメリカ大使リビングストンRobert R. Livingston(1746―1813)の援助で1803年セーヌ川で汽船の実験を試みた。1806年アメリカに戻り翌1807年8月、外車汽船クラーモント号を進水させ、ハドソン川のニューヨーク―オルバニー間に定期航行させた。この船の機関はバーミンガムのボールトン・ワット商会製で、船の長さは40.5メートル、幅5.48メートル、煙突の高さ9.14メートルというものであった。フルトンは汽船の最初の発明者ではないが、汽船河航を初めて商業的に実現させた先駆者である。

山崎俊雄


フルトン(Hamish Fulton)
ふるとん
Hamish Fulton
(1946― )

イギリスの現代美術作家。ロンドン生まれ。1964年から69年にかけてハマースミス美術学校、セント・マーチン美術学校、王立美術学校に学ぶ。68年以来、ヨーロッパ、南・北アメリカ、メキシコ、インドなど世界各地を旅して、歩行を通じて自然と融合した心境を表現する作品を制作している。リチャード・ロングRichard Long(1945― )と同様に自己と大地とのかかわりを作品化しているが、フルトンの表現手段は、写真とテキストと素描に限られている。彼は「私の芸術は、自然界から人間を疎外する都市社会への穏やかな抗議である」と述べている。96年(平成8)和歌山県立近代美術館にて「紀伊半島を歩いて――ロジャー・アックリング&ハミッシュ・フルトン――」展が開催された。また2002年東京国立近代美術館にて開催の「未完の世紀:20世紀美術がのこすもの」展に、国立国際美術館所蔵の『サンライズ・シャドウ』(1979)が出品された。

[斉藤泰嘉]

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改訂新版 世界大百科事典 「フルトン」の意味・わかりやすい解説

フルトン
Robert Fulton
生没年:1765-1815

蒸気船を実用化したアメリカの技術者。ペンシルベニア州に生まれ,時計工,画家を経て技術者になった。1797年パリに渡り,潜水艇ノーチラス号(海上は帆走,水中は手回しのプロペラ走)をつくり,その試運転に成功した。当地で,のちに彼の有力な後援者となったアメリカ公使R.リビングストンと出会い,1803年,セーヌ川で蒸気船の実験に成功した彼は,アメリカに帰国後リビングストンの後援で本格的な蒸気船の建造に着手した。07年,ワットの蒸気機関を搭載した外輪船クラモント号を建造,同船はニューヨーク~オルバニー間約240kmを32時間で航走,商業的に成功した。これが最初の旅客汽船となった。フルトンは,汽船の発明者ではないが,蒸気船が実用的な乗物であることを初めて立証した人物である。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フルトン」の意味・わかりやすい解説

フルトン
Fulton, Robert

[生]1765.11.14. ペンシルバニア,ランカスター
[没]1815.2.24. ニューヨーク
アメリカの技術者。農家に生れ,宝石商に奉公に出る。初め画家を志し,才能を見込まれて援助を受け,1787年ロンドンに渡って勉強を続けたが成功せず,やがて運河技術に関心をもち『運河航行の改善』 Treatise on the Improvement of Canal Navigation (1796) を書いた。しかし,これも受入れられなかった。翌年パリに渡り,潜水艦や水雷を研究。 1803年小型外輪汽船を試作,セーヌ川で実験。 06年アメリカに帰り,蒸気船の改良製作に着手し,『クラーモント』号を完成。 07年夏,同船はハドソン川をさかのぼり,ニューヨーク-オールバニ間の航行に成功。その秋,彼は世界初の汽船による定期便を開始した。 14年には世界最初の蒸気戦艦の建造にも成功した。

フルトン
Fulton

アメリカ合衆国,ミズーリ州中部の都市。市名は蒸気船の製作者として有名な R.フルトンにちなむ。ウェストミンスター・カレッジ (1851) とウィリアムウッズ・カレッジ (70) があり,前者は,1946年3月5日,イギリスの首相チャーチルが演説して,「鉄のカーテン」という有名な言葉を残したところでもある。干し草,穀物,家畜などが取引され,農業地域の中心をなす。農業機械,電気器具などの製造も行われる。人口1万 33 (1990) 。

フルトン
Fulton, John Farquhar

[生]1899.11.1. セントポール
[没]1960.5.29. ニューヘーブン
アメリカの神経生理学者,医学史研究家。 1927年ハーバード大学で学位取得。 29~51年エール大学生理学教授。 51年から同医学史教授。著書『生理学書』A Textbook of Physiology (1955) は現代生理学の基礎を固めたものとして全世界で用いられた。

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百科事典マイペディア 「フルトン」の意味・わかりやすい解説

フルトン

米国の技術者。初め画家,のち機械の発明に向かい,1797年以後パリに住んで,潜水艇などを研究,ノーチラス号の試運転に成功。蒸気船に関心をもつ米国の駐仏公使リビングストンと契約して蒸気船の発明に没頭,1803年セーヌ川で実験に成功した。帰米して,1807年世界最初の実用外輪汽船クラモント号を完成した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「フルトン」の解説

フルトン
Robert Fulton

1765~1815

蒸気船の発明者。1807年,初めて20馬力の蒸気機関を搭載した外輪式蒸気船クレアモント号(150総トン)を建造,ハドソン川240kmを時速4ノットで遡航することに成功した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「フルトン」の解説

フルトン
Robert Fulton

1765〜1815
アメリカの技術者・発明家
画家であったが,機械に興味をもち,1807年ハドソン川に初めて蒸気船クラーモント号を走らせ,最初の旅客汽船となり交通革命に寄与した。

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世界大百科事典(旧版)内のフルトンの言及

【外車船】より

…推進用に外車paddle wheel(以前は外輪と呼ばれたが,現在,専門用語としては外車が広く用いられる)と呼ばれる水車のような装置を備えた船。19世紀の初頭にアメリカで実用化された蒸気船は,蒸気機関で動かされる外車船であり,R.フルトンがハドソン川で営業運航に成功したクラモント号も,ワットの蒸気機関を積んだ外車船であった。外車は水車に似た構造をしており,船内の蒸気機関の回転運動によって回し,これで水をかきながら船を前進させる。…

【汽船】より

…しかし,その後動力源としてディーゼルエンジン,電動機やガスタービン,さらには原子力が利用されるようになったことに伴って,現在ではこれらのディーゼル船,電気推進船,ガスタービン船,原子力船も汽船のうちに含め,動力船と汽船とが同義に使われるようになっている。 蒸気船の発明者はR.フルトンとされる場合が多いが,実際にはフランスのD.パパンの実験船(1707),アメリカのJ.フィッチの船(1787)などの先駆がある。蒸気船による営業運航に成功した最初がフルトンのクラモント号であり,その後,蒸気船がだんだんと帆船に代わるようになったことから,フルトンが蒸気船の父とされているのである。…

【機雷】より

…最近は,とくに潜水艦の行動を阻止するための兵器として重要視されている。
[歴史]
 現在の機雷の原型は,アメリカのR.フルトンによって発明された。フルトンの機雷は,浮力をもった爆薬缶を索で海中に係留する方式のもので,艦船が接触すると爆発するようになっていた。…

【ノーチラス号】より

…潜水艦の発展史上で記念すべき艦につけられてきた艦名で,次のものがある。(1)1800年R.フルトンの設計建造になる水上帆走,水中は手動スクリュー推進の潜水艇。(2)85年イギリスのA.キャンベル,J.アッシュの設計建造になる電池電動機推進の潜水艇。…

※「フルトン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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