フロギストン説(読み)フロギストンせつ(英語表記)phlogiston theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フロギストン説
フロギストンせつ
phlogiston theory

物が燃える現象を物質の分解と解釈し,燃焼の際に物質からフロギストン (燃素) という一種の元素が放出されるとした学説。 18世紀初めに G.シュタールによって唱えられた。約1世紀の間多くの支持者を得た反面,金属が燃えたとき,その灰のほうが重いというような説明のつかないこともあり,化学反応の研究が定量的になるにつれて廃棄された。

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百科事典マイペディアの解説

フロギストン説【フロギストンせつ】

燃素説とも。燃焼は物体中に含まれるフロギストン(炎を意味するギリシア語に由来)が逃げ出すことによって起こるという説。炭素のようにフロギストンを多く含む固体はよく燃え,フロギストンが逃げたあと灰になる。金属の灰を炭素とともに熱すると炭素のフロギストンが与えられ,もとの金属にもどる。J.J.ベッヒャー〔1635-1682〕の考えを,G.シュタールが改良・体系化したもので,18世紀を通じ一般に承認され,燃焼をある程度説明する役を果たしたが,ラボアジエの新燃焼理論により打破された。→J.プリーストリー
→関連項目ロモノーソフ

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世界大百科事典 第2版の解説

フロギストンせつ【フロギストン説 phlogiston theory】

燃素説ともいう。可燃性の物質原素としてフロギストン(燃素と訳されることもある)を立て,燃焼現象をはじめ物質の化学的性質をそれによって説明しようとした説。18世紀ヨーロッパに流行した。 パラケルスス以来の錬金術の伝統に従えば,物質のもろもろの性質を担う直接的な役割は,水銀,硫黄,塩の三つの物質的原質である。このなかで硫黄は火や燃焼にかかわるものと考えられた。17世紀後半ベッヒャーがこれを批判的に継承し〈油性の土terra pinguis〉と呼んだ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フロギストン説
ふろぎすとんせつ
phlogiston theory

17世紀後半から18世紀後半まで約100年間にわたって化学現象の説明に支配的地位を占めた化学理論。フロギストンとはギリシア語の「燃える」という形容詞に由来することばで、仮想物質である。フロギストン説の創始者はドイツの医者のベッヒャーで、彼は固体の土性物質は一般に三つの成分を含み、すべての可燃性物質には油性の土が含まれるとした。18世紀初め、ドイツのシュタールはベッヒャーの説を受け継ぎ、油性の土(可燃性土元素)をフロギストンと名づけた。彼は、フロギストンは可燃物質や金属などの中にすべて含まれており、とくに木炭や硫黄(いおう)、油など燃えやすい物質は多量のフロギストンとわずかの灰からできており、燃焼は可燃物質からフロギストンが放出され、灰が残る現象と考えた。金属の灰化(酸化)も同じ現象である。フロギストン説は化学現象を統一的に説明する理論として、18世紀なかばには広く受け入れられた。キャベンディッシュ、ベリマン、プリーストリー、ブラックら当時の有力な化学者はその存在を信じ、その実験的成果をすべてフロギストン理論で説明した。フロギストン説は広く支持されたが、「重さ」についての欠点をもっており、重さを量りながら化学変化(質的変化)を追究する定量的な方法が発展するなかで、ラボアジエがフロギストン説に疑問をもち、さまざまな燃焼実験を通じて酸素の役割を明らかにし、フロギストン説を否定するに至った。[渡辺 伸]

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世界大百科事典内のフロギストン説の言及

【化学】より

…この考え方をさらに推し進めたG.E.シュタールは,可燃性の本体を〈点火する〉という意味のギリシア語にちなんで〈フロギストンphlogiston〉と命名した。フロギストン説によると,燃焼は可燃性物質からのフロギストンの放出であった。また,冶金は,フロギストンに乏しい鉱石に木炭が含むフロギストンが移行して金属を生じる過程,として説明された。…

【シュタール】より

…主著に《真正医学説Theoria medica vera》(1708)があり,アニミスムスは18世紀後半の生気論の口火となった。また,1703年燃焼という現象を説明するために物理元素の一つとしてフロギストンの存在を仮定し,〈物体が燃えるとき,物体のなかからフロギストンが迅速な旋回運動をして逃げ去る〉というフロギストン説を提唱したことは名高い。【古川 明】。…

※「フロギストン説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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