ベリマン(読み)べりまん(英語表記)Torbern Olaf Bergman

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベリマン」の意味・わかりやすい解説

ベリマン(Torbern Olaf Bergman)
べりまん
Torbern Olaf Bergman
(1735―1784)

スウェーデンの化学者。ウプサラ大学で数学と科学を学び、1756年に卒業。学生時代には昆虫やヒルの研究によってリンネに認められた。同大学の物理学講師、続いて数学助教授となり、虹・オーロラ・雷・金星の観測、静電気の研究などを行ったが、1767年化学の教授となり、やがて鉱物学から化学の研究に移った。

 ベリマンの主要な業績は分析化学の基礎を確立したことにあった。鉱水の分析ではリトマス・没食子(ぼっしょくし)液・塩化バリウム硝酸銀などの試薬を用いた系統的分析法をまとめあげ(1778)、溶存気体を含む数十種の物質を検出した。鉱物分析ではその成分を単離せずに組成のわかっている不溶性化合物に導いて定量する湿式分析法を確立した(1780)。また、定性分析のためには吹管の使用を広め、酸化炎と還元炎を区別した(1779)。これらの分析法を適用して彼はマンガンニッケルなど数多くの新しい金属や鉱物の分析(1774~1780)、鉄の不純物の研究(1781)などを行い、化学組成に基づく鉱物分類や塩類の命名法を提案した。化合物と化学反応を体系化する試みは親和力表として表された。彼は化学的親和力を化合物の成分の間の「選択的引力」とよんで、59の物質について湿式反応と乾式反応に分けた親和力表を作成した(1775、1783年増補)。シェーレを友人とし、多くの分析化学者を育てた。

[内田正夫 2018年11月19日]


ベリマン(John Berryman)
べりまん
John Berryman
(1914―1972)

アメリカの詩人。オクラホマ州の出身。同州の農場で幼年期を過ごしたが、そのころ目撃した父の自殺が終生心に付きまとい、ついには彼自身を自殺に追いやる一因ともなった。コロンビア大学で頭角を現し、ケンブリッジ大学でシェークスピアとイギリス・ルネサンス文学を学び、これが彼の韻文に生彩を添えた。最初の主要作品は、1956年の『ブラッドストリート夫人讃歌(さんか)』で、57連からなるこの野心作は、ピューリタン時代の最初のアメリカ詩人、アン・ブラッドストリートの生活と受難に捧(ささ)げる讃歌である。話者の声とアン・ブラッドストリートの声をクロスさせる技巧によって、力強く直截(ちょくせつ)さにあふれた詩的イメージを生み出している。ピュリッツァー賞を受けた『77編の夢の歌』を含む大作『夢の歌』(1969)では、主人公は複数の仮面(ペルソナ)として登場し、破格な統語法、複数の声、スラングなどを用いて、現代世界に生きる詩人の主として苦渋を表白する。父の死、離婚、詩人としてのプライド、アルコール中毒などがモチーフとなっている。この作品に沈んでいる告白は晩年詩集であからさまに歌われる。

[徳永暢三]

『沢崎順之助訳『ブラッドストリート夫人讃歌』(『世界文学全集53』所収・1968・集英社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ベリマン」の意味・わかりやすい解説

ベリマン
John Berryman
生没年:1914-72

アメリカの詩人。デルモア・シュワーツ,ランダル・ジャレル,ロバート・ローエルらとともに1940年代に詩壇に登場し,先行するT.S.エリオットやエズラ・パウンドの詩学の権威と後続のビート詩人(ビート・ジェネレーション)らの詩風革新運動の挟み撃ちにあった世代の詩人。この世代は,ともに破滅型の生活を送り,非業の死をとげている。初めは,エリオットやパウンドにならって〈非個性〉を旨とする〈仮面〉をつけた詩を書いていたが,やがて自己表出欲が抑えきれぬほどに高まっていく。長詩編《ブラッドストリート夫人賛歌》(1956)はみずからに課した〈仮面〉と抑えきれぬ〈本音〉との緊張関係が微妙に保たれた傑作。その後数年かけて書きつがれた《夢の歌》(1969)は,数人の登場人物の背後に身を韜晦(とうかい)させているが,自己告白の調子が濃厚になる。《愛と名声》(1970),《妄想》(1972)などの詩集では,生活と詩作とがますます分かちがたいほど密接になり,死について書き,ついに投身自殺をした。
執筆者:


ベリマン
Hjalmar Bergman
生没年:1883-1931

スウェーデンの作家。一風変わった人物で,卓抜な着想,巧みな話術で人気のある多作家であるが,日本人にはなじみがない。戯曲《イエスの母マリア》(1905),歴史小説《サボナローラ》(1909)の後,《ワードヒェーピングのマルクレル家の人々》(1919)で作家としての地位を確立。人を楽しませる反面,まじめな人生探求者の側面もあり,告白の書として《死者の手記》(1918),《道化師ヤック》(1930)がある。円熟期の大半は海外で過ごしたが,ハリウッドを嫌ったのは彼の好みを示している。
執筆者:


ベリマン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベリマン」の意味・わかりやすい解説

ベリマン
Bergman, Hjalmar Fredrik Elgérus

[生]1883.11.19. エーレブルー
[没]1931.1.1. ベルリン
スウェーデンの小説家,劇作家。富裕な銀行家の息子に生れ,1900年から1年間ウプサラ大学で学んだのち,生涯の大半を外国で過し,特にフィレンツェを愛した。アメリカのハリウッドで映画監督をしたこともある。代表作小説『ワドチェーピング町のマルクレル家』 Markurells i Wadköping (1919) ,『祖母とわれらの主』 Farmor och Vår Herre (21) ,喜劇『スウェーデンイェルム家』 Swedenhielms (25) 。

ベリマン
Bergman, Torbern Olof

[生]1735.3.20. カトリエンベリ
[没]1784.7.8. メデビー
スウェーデンの化学者,鉱物学者。分類学者 C.リンネのもとで学び,ウプサラ大学の数学助教授となり (1761) ,6年後化学教授になった。物質の化学的親和力の表を作成したが,この概念は 19世紀の初めまでかなりの影響力をもっていた。鉱物,特にニッケルの研究,虹やオーロラ,ピロ電気の研究でも知られている。

ベリマン
Bergman, Bo Hjalmar

[生]1869.10.6. ストックホルム
[没]1967.11.17. ストックホルム
スウェーデンの詩人,小説家。主としてストックホルム周辺を舞台とした作品を書いた。短編集『夢』 Drömmen (1904) ,詩集『マリオネット』 Marionetterna (03) ,『火』 Elden (17) ,『古代の神々』 Gamla gudar (39) ,『王国』 Riket (44) など。

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