フランスの政治家。フランス革命およびナポレオン時代に活躍し、「変節の政治家」として有名。教職から革命家に転身し、1792年国民公会議員となり、山岳派に属した。1793年、国王ルイ16世の死刑に賛成し、恐怖政治下、種々の監督にあたる地方派遣議員として王党派の反乱を過激に鎮圧したため、ロベスピエールらにテロリストと目されて対立、1794年7月テルミドール事件(テルミドールの反動)に加担してこれを倒した。この反動期、1795年8月に逮捕されたが、大赦によって放免され、総裁政府下、巧みに政界に処し、1799年警察長官となって反政府勢力を弾圧した。しかも同年11月、反政府のクーデターにナポレオン・ボナパルトを支持、その執政政府時代および帝政期にも警察長官となり、巧妙なスパイ網をもって反ナポレオン陰謀を防ぎ、1809年オトラント公の称号を得た。しかし一方では反ナポレオンの動きを示し、一時は亡命したのち、ナポレオンの「百日天下」のときまた警察長官となった。同時にブルボン王家と通じ、王政復古下では現職にとどまったが、やがて外交職に移され、ついに1816年「ルイ16世処刑賛成者」として追放を受け、トリエステに引退して世を去った。
[山上正太郎]
『S・ツワイク著、高橋禎二・秋山英夫訳『ジョゼフ・フーシェ――ある政治的人間の肖像』(岩波文庫)』
フランスの考古学者。東洋史、仏教史に精通し、パリ高等研究院教授、フランス極東学院(ハノイ)院長などを歴任した。「インド学」を提唱したシルバン・レビのもとで学んだ彼は、1895年にインドに向けて調査に出たのを初めとして、パキスタン、イラン、アフガニスタンなどを訪れてガンダーラなどの仏教美術についての調査を行った。とくにアフガニスタン政府とは、1922年から30年間フランスの調査団が同国内の遺跡を独占的に調査を行うという協定を結び、カブールに「フランス考古学派遣団」(DAFA)を創設して、バーミアン石仏の調査をはじめ、バクトリア王国に関する諸遺跡の調査研究などに成果をあげた。
[植山 茂]
フランスの政治家。大西洋岸の港町で,船乗りの家に生まれたが,虚弱だったのでオラトリオ会の神学校に入り,物理学の教師になった。フランス革命が始まると,故郷に近いナントで政治活動を始め,1792年に国民公会議員に選出された。国民公会では山岳派に所属して国王の処刑に賛成し,反革命の反乱が生じたリヨンに鎮圧のため派遣されると,徹底的な武力鎮圧方針をとって多数の反革命派を処刑し,〈リヨンの霰弾(さんだん)乱殺者〉というあだ名を得た。しかし,94年にロベスピエールと対立してその打倒のために暗躍し,テルミドール9日ののち,総裁政府のもとで警察大臣になり,ナポレオンのブリュメール18日のクーデタを助け,彼のもとで1809年まで警察大臣として秘密警察網を敷き,同年オトラント公爵ducd'Otranteになったが,やがてナポレオンと対立し,王政復古に協力した。しかし,王政復古のもとで,かつて国王の処刑に賛成したことが災いして,1816年に国外に亡命し,オーストリア領トリエステに隠棲してそこで死去した。その変転常なき生涯はS.ツワイクの史伝などによって〈変節の政治家〉として有名である。
執筆者:遅塚 忠躬
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1759~1820
フランスの政治家。初め聖職者でフランス革命時代に国民公会議員。過激なテロリストとしてロベスピエール打倒に暗躍したのち,総裁政府,統領政府下に警務大臣となり,元老院議員,公爵にまでなるが,復古王政後はトリエステに引退した。
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…具体的には,選挙・集会・結社・大衆運動・宗教などの規制,思想・言論・出版の検閲および規制をとおして,革命運動,クーデタ,労働運動,農民争議,植民地独立運動などの反体制的運動の鎮圧,取締り,諜報活動を主要な任務としている。近代政治警察はフランス革命直後に,王党派とジャコバン派の左右両派の抑圧のために,J.フーシェが創設した組織に端を発する。歴史上最も有名なナチス・ドイツのゲシュタポは,このフランス政治警察を模したプロイセンの政治警察を基本的に継承したものといわれている。…
…パキスタンの北西辺境州,ペシャーワルの北東約70kmにある村で,古代の通商路上の要衝として栄えた。A.フーシェは玄奘の《大唐西域記》に記される跋虜沙(ばろしや)城にあたるとした。南東の丘の西側山腹の岩とそこから落下した山麓の岩塊とにカローシュティー文字で刻まれたアショーカ王の磨崖法勅がある。…
※「フーシェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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