ブクリョウ(読み)ぶくりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブクリョウ」の意味・わかりやすい解説

ブクリョウ
ぶくりょう / 茯苓
[学] Poria cocos (Schw.) Wolf

担子菌類、サルノコシカケ目サルノコシカケ科の地下キノコ。2000年以上の昔から今日に至るまで、漢方で用いられている貴重な薬用キノコである。薬用とするのは、この菌がマツの根につくる菌核で、子実体は菌核が地表に露出したとき、菌核の表面にまれに形成される。菌核は径10~30センチメートルのいも形、楕円(だえん)形ないし球状の塊で、表面は暗褐色、しわの多い硬い皮殻をかぶる。肉質は半乾きのチーズに似て、白っぽい。組織を顕微鏡で見ると、菌糸断片などに混じって強く光線を屈折する顆粒(かりゅう)体が多数認められる。これは菌糸の変形物で、ヨードカリ液で濃赤褐色に変色する、いわゆるデキストリン反応を呈する。この反応によって、キシメジ科マツオウジ属LentinusのニセブクリョウL. tuber-regium Fr.と区別される(この菌をマツオウジ属とせず、カワキタケ属Panusとする学者もいる)。ニセブクリョウは東南アジア熱帯地方に分布する菌で、ブクリョウに似た菌核をつくるので、第二次世界大戦前は、ブクリョウと詐称して輸入されたこともあった。

 ブクリョウの子実体は、菌核の上に平たく広がり、全面に深さ2~20ミリメートル、径0.5~2ミリメートルの管孔(くだあな)が並ぶだけで、キノコ型を示さない。色はほぼ白色。子実体の発見は20世紀に入ってからであるが、菌核は古くから茯苓の名(漢名)で知られ、日本最古の本草(ほんぞう)書である『本草和名(わみょう)』にもこの名がみえる。なお、和名としては、「末都保土(まつほど)」が記されている。

 漢方名は茯苓で、利尿鎮静強壮剤として、小便不利、浮腫(ふしゅ)、精神不安、動悸(どうき)、消化不良などの治療に用いられる。また、最近は、含有成分の一つである多糖体パキマンには有望な抗腫瘍(しゅよう)性作用があるという発表もあり、その薬用効果はいっそう期待される。ブクリョウは、地下生ということからみつけにくい。このため、かつてはその採取を専門とする「茯苓突き」「保土突き」とよばれる人たちがいたほどである。その方法は、先のとがった1メートルほどの鉄棒を地中に刺して探り当てるものであった。なお、日本と中国において、人工栽培の研究も進められている。

[今関六也]

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普及版 字通 「ブクリョウ」の読み・字形・画数・意味

】ぶくりよう(りやう)

まつほど。〔焦氏筆乗、五、医方〕は久しく之れをするときは、顏色澤し、能く瘢痕(ばんこん)(傷あと)を滅す。朴子に云ふ、任子季、すること十年、玉女之れに從ふ。~面、光玉の澤を生ずと。

字通「」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブクリョウ」の意味・わかりやすい解説

ブクリョウ(茯苓)
ブクリョウ
Poria cocos

担子菌類ヒダナシタケ目サルノコシカケ科。一名マツホド (松塊芋) 。古くから地下約 10~30cmのアカマツ,クロマツの根に生じる菌核として知られ,漢方薬に使用されていた。形は亜球形ないし楕円形で,長さ 30cm以上,重さ 1kgに及ぶものもまれではない。表面はしばしば根の皮をかぶることもあるが,褐色ないし黒赤褐色で,あらい皺がある。内部は白色でやや淡紅色を帯び,チーズ状。表層は菌糸に富む。乾くと白く硬くなる。日本全土,北アメリカ,中国に分布する。

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百科事典マイペディア 「ブクリョウ」の意味・わかりやすい解説

ブクリョウ

東アジア,北米に分布するサルノコシカケ科のキノコ。日本ではアカマツなどの根に寄生。菌核(菌糸の塊)は大小不規則な塊状で,径10cm以上,表面は凹凸のある黒い殻で包まれ,内部は白色のコルク質となる。生殖器官(子実体,いわゆるキノコ)の形成は稀。茯苓の名で,利尿剤など漢方薬とされる。

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デジタル大辞泉プラス 「ブクリョウ」の解説

ブクリョウ

サルノコシカケ科マツホド菌の菌核。利尿、滋養などの作用があり生薬として使用される。表記は「茯苓」とも。

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