ブランキ(読み)ぶらんき(その他表記)Louis Auguste Blanqui

デジタル大辞泉 「ブランキ」の意味・読み・例文・類語

ブランキ(Louis Auguste Blanqui)

[1805~1881]フランス革命家社会主義者少数精鋭武装蜂起による革命とプロレタリア独裁を主張。1830年以降、七月革命二月革命パリコミューンなどの革命運動や反乱に参加。生涯の30数年を獄中に過ごした。著「社会批判」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ブランキ」の意味・読み・例文・類語

ブランキ

  1. ( Louis Auguste Blanqui ルイ=オーギュスト━ ) 一九世紀フランスの革命家。七月革命、二月革命、パリ‐コンミューンのパリ民衆の革命行動の中核的存在。少数前衛の直接行動によるプロレタリアート独裁政権樹立を主唱。(一八〇五‐八一

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブランキ」の意味・わかりやすい解説

ブランキ
ぶらんき
Louis Auguste Blanqui
(1805―1881)

フランスの革命家、社会主義者。父はフランス革命のジロンド派議員、兄は高名な自由経済学者アドルフ・ブランキAdolphe Blanqui(1798―1854)。コレージュ在学中から共和派秘密結社カルボナリ」に加入、復古王政打倒の論陣に加わり、1830年の七月革命の市街戦に投ずる。七月王政の成立に飽き足らず、極左共和派結社人民の友」の反政府運動に参加して投獄された。獄中でバブーフ平等主義の流れをくむブオナローティと知り合い、少数精鋭の秘密結社による武装蜂起(ほうき)という革命方式に確信を深める。

 1835年以後、「家族社」「季節社」など秘密結社の組織化に没頭したが、1839年の蜂起に失敗してモン・サン・ミシェルの獄につながれた。過酷な獄中生活で病を得てトゥールの病院に移送されるが、1848年、二月革命の報を聞いてパリに戻った。このとき、彼は臨時政府に期待して秘密結社活動を抑制し、公開のクラブを中心とした民衆の政治的啓蒙(けいもう)に重点を置いた。ブランキの革命思想はかならずしもエリート主義に基づく蜂起至上主義ではなく、平等主義的な社会革命実現のために、政権奪取後の民衆教育を格別重視するものでもあった。だが、4月の選挙で左派が後退するなかで、下部の突き上げを抑えきれず、同年5月15日の国会乱入事件に連座して三たび獄につながれた。このため6月の民衆蜂起(六月事件)の指揮をとることができなかった。以後、第二帝政の1860年代なかばまで約2年の小休止を除いて獄中にあったが、ここで若手の共和派の囚人たちに多大の影響を及ぼし、いわゆる「ブランキストブランキ派)」が形成される。

 1865年、脱獄してベルギーに逃れたが、1870年8月プロイセン・フランス戦争の混乱に乗じて帰国。祖国防衛戦争を訴えるかたわら、3次にわたる蜂起に関与し、1871年3月、パリ・コミューンの前日にまたもや逮捕された。コミューン派は74人の政府側捕虜とブランキ1人との交換を申し入れたが、彼の影響力を恐れる政府側はこれを拒否した。コミューン壊滅後も終身禁錮刑を受け、1880年恩赦まで監視下に置かれた。

 こうして生涯蜂起と投獄を繰り返し、総計実に43年と2か月もの間、獄中もしくはそれに準ずる生活を送ったが、1881年1月1日脳溢血(のういっけつ)のためついに死去。「幽閉者」「殉教者」とよばれ、多大の尊崇を集めた彼の葬儀には10万人の会葬者が列を連ねたという。だが、あまりにたびたび獄中にあったため、決定的な大事件に直接指揮をとることができなかったのは、「行動の人」として皮肉であったといわなければならない。

[谷川 稔]

『ジェフロワ著、野沢協・加藤節子訳『幽閉者――ブランキ伝』(1973・現代思潮社)』『ブランキ著、加藤晴康訳『革命論集』上下(1968・現代思潮社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ブランキ」の意味・わかりやすい解説

ブランキ
Louis-Auguste Blanqui
生没年:1805-81

19世紀パリの民衆蜂起と革命のほとんどすべてに,直接・間接に関与したフランスの革命家。10代で秘密結社カルボナリに加わり,復古王政打倒の運動と1830年の七月革命の民衆蜂起に参加する。七月王政の反民衆的性格をすばやく見ぬいて反体制運動をおこし,共和派の〈人民友の会〉が弾圧された法廷で,逆に雄弁に体制を告発して一躍有名になった。フランス革命のジャコバン主義とバブーフの平等主義の伝統をブオナローティからうけつぎ,少数精鋭の秘密結社運動を開始する。なにより行動を重視した彼だが,目標はパリの蜂起をばねにした過渡体制の創出と,民衆教育をてことした平等社会建設であり,少数前衛の蜂起自体を絶対視したわけではない。有名な〈季節社〉の蜂起の前後から,48年の二月革命,第二帝政と71年のパリ・コミューンを経て第三共和政初頭に至るまで,彼の生涯は革命運動か獄中かのいずれかであった。実に総計43年2ヵ月間も獄中ないし特別監視下におかれたことから,共和主義運動と革命の象徴として,〈幽閉者〉とよばれた。第二帝政下に,同獄にいた共和派の青年たちに多大な影響を与え,そのうちトリドンら左派を中心に,労働者をも含んだ秘密結社型のブランキ派が組織される。帝政末からコミューンにかけ,ブランキ派は多くの公開集会や実力行動の中で重要な役割を果たした。しかしブランキ自身は蜂起直前に逮捕され,コミューンを直接指導することはできなかった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブランキ」の意味・わかりやすい解説

ブランキ
Blanqui, (Louis-) Auguste

[生]1805.2.1. ピュジェテニエ
[没]1881.1.1. パリ
フランスの革命的社会主義者。一生のうち約 40年近くを獄中で暮した革命家。法学と医学を学んだのち,1830年「人民の友協会」会員となり,以後革命運動の指導者となる。秘密革命集団の結成と武装蜂起を少数の精鋭分子の指導で行う革命を主張し,秘密結社「季節社」を組織した。二月革命のとき,5月 15日反乱計画に関連して逮捕された。 70年普仏戦争の戦局が不利になると,『危機に立つ祖国』 La Patrie en dangerという新聞を発刊,対プロシア抗戦と社会変革の必要を説き投獄された。 77年釈放後,機関誌『神の不在』 Ni Dieu ni maîtreを刊行し革命運動を続けマルクス主義に接近した。主著『社会批判』 La Critique sociale (1885) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ブランキ」の意味・わかりやすい解説

ブランキ

フランスの革命家。バブーフ主義の流れをブオナローティから受けつぎ,1830年代に秘密結社を組織して革命指導組織実現と権力奪取を図り,以後フランスにおけるほとんどすべての蜂起に参画,約30年間を獄中で過ごした。二月革命パリ・コミューン前夜にも民衆運動の指導者として活動。その運動理念はブランキズムと呼ばれる。著書《社会批判》。
→関連項目一揆主義

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ブランキ」の解説

ブランキ
Louis Auguste Blanqui

1805〜81
フランスの革命家
七月革命・二月革命・パリ−コミューンなどの指導的存在で,合計43年2か月を獄中ないしは特別監視下におかれたため「幽閉者」と呼ばれる。季節社という秘密結社を組織し,プロレタリア独裁を主張。少数者の陰謀による暴力革命論(ブランキ主義)は,その後も一定の影響をもった。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ブランキ」の解説

ブランキ
Louis Auguste Blanqui

1805~81

19世紀フランスの革命家。プロレタリアート解放のためには,武装した革命的エリートによる独裁権力の樹立がまず必要である,と主張。その革命方式はブランキズムといわれている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のブランキの言及

【一揆主義】より

…フランスでは,すでにフランス革命時代にバブーフによってプロレタリア革命の理論的展望が開かれていたが,その伝統を継承したのがブランキであり,彼の考え方(ブランキスムblanquisme)が一般に一揆主義と呼ばれる。ブランキは,その生涯の半分近くの33年間を獄中で送った革命家で,少数エリートによる権力奪取を説いた。…

【季節社】より

…こうした状況を前提に組織されたのが季節社である。バブーフの平等主義とブオナローティの秘密結社運動の伝統にたつ革命家ブランキ,およびバルベスとマルタン・ベルナールMartin Bernard(1808‐83)の3者を中心に37年に結成され,その加盟者は600ないし1000名の間と見積もられている。39年5月には武装部隊で市庁舎を一時的に占拠したが,正規軍に敗れ,組織は壊滅した。…

※「ブランキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android