翻訳|plow
イギリスではploughとも綴(つづ)る。和犂(わすき)とともに土を反転破砕する一次耕うん用農機具であるが、和犂に比べて反転性能がよく、草や有機物の反転埋没に優れ、深く幅広く耕うんし作業速度も速いので能率が高い。土塊が粗いので乾土効果があり、耕盤は平坦(へいたん)で安定がよく、操作が容易であるため、畑地の平起しや牧草地耕起に適している。しかし構造がやや複雑で大型で重く、ロータリー耕に比べ二次耕うん(砕土)をあとから別に行う必要があり、また水田では犂より抵抗が大きく、うね立て耕には適さない。ただし1980年ごろより砕土機類を後ろに備え一工程で行うこともできるようになった。
プラウは、古代メソポタミアやエジプトにおいて紀元前3500年ごろから、くの字型の曲木(まげき)を人か家畜に引かせて農耕に用いていた。当時のものは反転せず、破砕、掘り起し、攪土(かくど)型であったが、以後ローマに渡り、さらにオランダで現在の曲面状の撥土(はつど)板プラウの原型がつくられた。これが1620年ごろアメリカに渡り、しだいに改良された。そのころのプラウは、犂先(すきさき)と犂刀(りとう)のみが鉄であったが、1930年ごろ全鋳鉄製となった。わが国へは1870年(明治3)アメリカから北海道に畜力用として輸入され、1881年に軽量小型の水田プラウが製作された。トラクター用は昭和に入ってからつくられた。
プラウは犂体(りたい)形状、用途、牽引(けんいん)法、れき(プラウでつくられるうね)の反転方向、材質、連結数などにより多くの種類があるが、もっとも代表的なものは撥土板(モールドボード、ボットム)プラウである。これはさらに再墾プラウ(撥土板曲面が円筒型で既耕地や砂質地向きで砕土混耕が目的)、新墾プラウ(捻転(ねんてん)型で重粘地、草生地、未耕地向きで、破砕力が弱く完全反転する)、およびこれらの中間型である兼用プラウの3形態に分けられる。プラウ耕の作用を確実にするためコールター(犂刀)、ジョインター(前犂(ぜんり)ともいい二段耕に用いる)、補助羽根、定規車などを備えたり、障害物回避安全装置をつけたりする。
能率増進のため毎時8~12キロメートルの速度で用いる高速度プラウ、心土と作土を別々に耕す心土プラウ、心土のみを耕すサブソイラ、自転する球面皿板を傾けて牽引耕うんするディスクプラウ(円板プラウ)、左右どちらにも反転できる互用プラウ、火山灰や粘土地で土壌付着を防止できる樹脂板プラウなどもよく用いられる。最近は抵抗減をねらった振動耕うんやトラクター前後装着、能率向上と踏圧防止のための複合化などが注目されている。
[松尾昌樹]
土を耕す機械。固まった圃場(ほじよう)の土を耕起,反転する機械で,トラクターで牽引(けんいん)される。シェア(刃板)で土を切断した後,切り出された土をモールドボード(発土板)にそってすり上げながらよじり,下層の土が地表にくるように反転する。反転によって作物残渣(ざんさ)や雑草が埋めこまれるとともに下層の有機物の分解が早まる。プラウで耕された土は帯状または大きな土塊であるので,これを砕土機で砕く必要がある。その意味でプラウによる耕起作業を一次耕という。プラウには発土板をもったモールドボードプラウと球の一部を切り出して周辺に刃をつけた形状のディスクプラウとがある。ディスクプラウは軸のまわりに自由に回転しながら土壌に切りこむ。
なお,西洋のプラウと同じ働きをする機械は東洋の犂(すき)であるが,それらの起源と発生および世界の犂農業などについては,〈犂〉の項目を参照されたい。
執筆者:木谷 収
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…湾轅犂と車輪犂とが併存したフランスでは,前者をアレールaraire,後者をシャーリュcharrueとよんで区別してきた。英語のプラウplough,plowは後者を意味する。(4)対犂(ロシア犂) インド犂2機を横にならべて固定した双柄双刃犂で,犂轅も2本ある場合が一般的。…
※「プラウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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