ドイツ語のFettまたは英語のfatからなまった言葉と思われる。日本では牛脂のことをいうことが多い。しかし牛脂は英語ではbeef tallowといい,いつごろから日本でヘットが牛脂を意味するようになったかはっきりしない。原義のFett,fatは動物性の組織から採取した固形の脂肪を意味する。これらの動物性の脂肪はレンダリングrendering法で製造される。レンダリング法はウェットレンダリング法とドライレンダリング法に大別される。前者は原料の脂肉に水を加えて加熱するか,蒸気を吹き込んで加熱し,融出した脂肪をろ過するものだが,この方法は熱効率が悪い。後者は二重がまを用いて間接的に蒸気で加熱するもので,内部に回転する刃があって組織を細切する。最近はドライレンダリング法が多く用いられるようになってきた。日本では従来これらの動物性脂肪はほとんど生産されていなかったが,肉畜の生産の増加とともに,肉畜からでるこれらの脂肪の利用が,公害を防止し副産物の利用を高める意味から,徐々に発展しつつある。レンダリング法で製造された粗製の脂肪は脱ガム,脱酸,脱色,脱臭,水素添加,分別結晶,エステル交換などの精製工程を経て食用の脂肪または工業用の製品となる。
→タロー
執筆者:森田 重広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウシの脂肪組織から溶出法で得る脂肪。英語ではbeef tallow(牛脂)というが、ヘットはfat(脂肪)のなまった語である。融点35~50℃。ヨウ素価35~60。不けん化物約0.3%。コレステロールを含む。主要成分脂肪酸はオレイン酸で含有量は40~50%。そのほかパルミチン酸25~30%、ステアリン酸15~30%、ミリスチン酸2~8%、リノール酸2~5%を含む。食用脂として用いられるが、その重要性はラード(豚脂)に比し小である。50~60%の飽和脂肪酸を含むから、牛肉の多食は血漿(けっしょう)中コレステロールの増量をきたし、またオレイン酸を多量に含有しているので、牛肉の焼き処理によりオレイン酸からヒドロペルオキシド(過酸化脂質)を生成しうるために、焼き肉の多食はとくに心臓関係のアテローム性動脈硬化症発生につながりやすい。食用に供しない種々の牛脂がせっけん製造などに用いるため生産される。牛脂を圧搾すれば、牛脂ステアリンと牛脂油(オレオオイル)とを得る。牛脂油は特殊潤滑油として使用される。
[福住一雄]
食用のヘットは、腎臓を用いたものがとくに高級品とされる。ヘットは、多くは業務用として揚げ油、マーガリン、ショートニング、カレールウなどの材料に用いられる。ラードより融点が高く、口中で溶けにくい。常温で固形なので熱い料理に用いる。
[河野友美・山口米子]
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