ベザント(読み)べざんと(その他表記)Annie Besant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベザント」の意味・わかりやすい解説

ベザント
べざんと
Annie Besant
(1847―1933)

アイルランド人の血をひくイギリスの社会改革家。1873年離婚後、女性解放運動に参加。フェビアン協会に加わり、多くの社会主義者と協働する。同時にブラバッスキイ夫人の指導で神智(しんち)協会にも参加、1907年から終身その総裁を務めた。1893年インドに渡り、マドラス(現チェンナイ)に定住。ここでヒンドゥー教を受け入れ、インドの古い伝統、文化に対するインド人の誇りの回復のため努力し、後のベナレス・ヒンドゥー大学を創設する一方神智協会を通じてインドの社会改革や教育向上運動を推進した。女性運動家S・ナーイドゥもその下で活動した一人である。第一次世界大戦直前からインド民族運動にかかわり、1916年インド自治連盟を設立してティラクらと行動をともにした。同年の国民会議派大会では、民族派の復帰、国民会議派再統合に尽力し、翌1917年の国民会議派カルカッタ大会議長に選出された。しかし第一次世界大戦後はガンディー路線と対立し、急速に孤立化した。

[内藤雅雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「ベザント」の意味・わかりやすい解説

ベザント
Annie Besant
生没年:1847-1933

インドの神智学協会の活動家。イギリス人。同協会の創始者ブラバツキー夫人の書に感化され,神智学に傾いていった。マドラスに本部を移した同協会の教義オカルティックな面を弱め,ヒンドゥー教の下で再解釈し,インドのナショナリズム運動に影響を及ぼした。自らも外国人でありながらインド独立運動に参加し,国民会議派の年次大会議長も務めた。教育の面でも大きく貢献し,ワーラーナシー(ベナレス)・ヒンドゥー大学の基礎を築いた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベザント」の意味・わかりやすい解説

ベザント
Besant, Annie

[生]1847.10.1. ロンドン
[没]1933.9.20. マドラス
イギリスの女性社会改革家で,インド民族運動の指導者。 26歳で夫と別居し,社会問題,労働問題の研究,普及活動から神智運動に関心をもち,1889年神智協会に入り 93年にはインドに渡り,同協会を指導した。同時にインドにおける社会問題への関心から民族運動にかかわり,インド国民会議派の統一や婦人の参政権獲得に尽力した。 1917年には国民会議派大会議長に選ばれた。みずから「母国」と呼んだインドで没した。

ベザント
Besant, Sir Walter

[生]1836.8.14. ポーツマス
[没]1901.6.9. ハムステッド
イギリスの小説家,博愛事業家。ロンドンの貧民街イーストエンドの生活を描写した小説『あらゆる種類あらゆる身分の人間たち』 All Sorts and Conditions of Men (1882) が代表作。イーストエンドに公民館を建設するなど社会事業にも尽力,1895年ナイトに叙せられた。ロンドンの歴史的地誌的研究の成果は死後『ロンドン大観』 The Survey of London (10巻,1902~12) として刊行された。

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世界大百科事典(旧版)内のベザントの言及

【神智学】より

…その神的叡智を学ぼうとする人のために設けられた上述の神智学協会では,(1)人種,宗教,身分の区別をもたぬ友愛精神の普及,(2)古来の世界宗教の比較研究と普遍的倫理の提示,(3)各人の内に潜む神的な力の研究と開発,という三大目標を掲げている。この近代神智学運動は世界的規模に発展し,リードビーターベザント,ベイリーAlice Bailey(1880‐1949),R.シュタイナー,ティングリーKatherine Tingley(1847‐1929)等の有力な後継者を生んだが,1930年代以降は衰退した。しかし現在は秘教への関心の高まりを背景に活力を盛り返し,アディアル派(インド,ヨーロッパ),ポイント・ロマ派(アメリカ),ベイリー派に分立しつつあり,日本では三浦関造設立の竜王会が協会を代表している。…

※「ベザント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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