改訂新版 世界大百科事典 「ベレンソン」の意味・わかりやすい解説
ベレンソン
Bernard Berenson
生没年:1865-1959
リトアニア生れのユダヤ系の美術史家,鑑識家。アメリカのハーバード大学およびオックスフォード大学で学んだ後イタリアに赴き,フィレンツェ近郊に50年以上住んだ。当時まだきわめて未整理の段階にあったイタリア・ルネサンス美術を対象として,様式批判による主要作品の作者決定(鑑定)を行い,彼以降のイタリア・ルネサンス美術史研究の枠組みをつくった。ただしその際に彼が作者判定の一つのキー・ストーンとして用いた〈触覚的価値〉の概念は,平面的装飾的絵画よりも量感をリアルに描いた絵画を暗黙のうちに上位におくという,一種の偏見を一般化したともいえる。一方,彼の著書や鑑定書はアメリカの画商や収集家の重んずるところとなり,同国における美術収集に大きな影響力をもったといわれる。主著には《フィレンツェ画家の素描》(1903),《ルネサンスのイタリア画家》(1952)などがある。
執筆者:鈴木 杜幾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報