ベンケイソウ

百科事典マイペディアの解説

ベンケイソウ

ベンケイソウ科の多年草。北海道,本州の山地にはえる。高さ30〜60cm,葉は楕円形多肉で,粉白色を帯びる。夏〜秋,茎頂集散花序を出し多数の花を密生する。花は両性,淡紅色で,花弁,萼片(がくへん)ともに5枚。かつて栽培もされたが,近年ベンケイソウと呼ばれて栽培されるものは,中国や朝鮮半島原産のオオベンケイソウである。近縁イワベンケイは高山の日当りのよい岩地にはえ,高さ10〜20cm,葉は長さ1〜3cmで柄がない。雌雄異株で花は茎頂に密生。花弁,萼片ともに4枚。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ベンケイソウ【Sedum alboroseum Baker(=S.erythrostictum Miq.)】

ベンケイソウ科の多年生多肉植物で,高さ30~60cm,葉は卵形ないし楕円形で,長さ35~70mm,幅12~30mm,葉柄は短い(イラスト)。おしべは花弁より少し長い。花期は9月。栽培と野生の2型がある。栽培品種は中国から渡来し,葉はふつう対生,花は白桃色で,花序下部の枝が長く伸びる。稔性は悪く,染色体数は2n=48,50。一方,野生型は本州,九州の山地にまれに産し,葉はふつう互生し,花は少し黄緑色をおび,花序は下部の枝が短い。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ベンケイソウ
べんけいそう
[学]Hylotelephium erythrostictum (Miq.) H. Ohba

ベンケイソウ科の多年草。毎春、地中のやせた根茎から、花期には高さ0.3~1メートルに達する花茎を1、2個出す。葉は花茎に間隔を置いて互生または対生し、長さ10センチメートルの楕円(だえん)状卵形で、白みを帯びた淡黄緑色。9~10月、花茎の先端に、紅色の小さな花を多数密生した半球形状の花序を出す。花弁は楕円状披針(ひしん)形で長さ約5ミリメートル。葯(やく)は裂開直前に濃い赤紫色になりよく目だつ。子房は長さ約1センチメートル。花が枯れても目だち、伸長したり肥大したりせず、多数の微小な種子がつくられ、風によって散布される。湿った草地や明るい林床に生え、本州中部と九州、および中国に分布する。
 明治年間に中国からオオベンケイソウH. spectabile (Boreau) H. Ohbaが渡来するまでは園芸植物として重宝されたが、いまでは一部の山岳地域を除いてほとんど栽培されていない。しかし、ヨーロッパではSedum alboroseum Bakerの名前で園芸界に普及している。葉の中央脈に沿って白斑(はくはん)の入ったフイリベンケイもある。ベンケイソウの野生のものはムラサキベンケイソウH. telephium (L.) H. Ohbaと混同されているが、ムラサキベンケイソウは日本では北海道のみに分布する。
 ベンケイソウやその近縁種は、広義のセダム属Sedum(マンネングサ属)に分類されることもある。ベンケイソウのことを俗にセダムとよぶことがあるのはこのためである。しかし、同属の基準種S. acre L.はメノマンネングサに近縁であり、ベンケイソウだけにセダムの名を与えるのは正しくはない。[大場秀章]

文化史

平安時代に渡来し、『新撰字鏡(しんせんじきょう)』『本草和名(ほんぞうわみょう)』『和名抄(わみょうしょう)』などの平安の辞書には、伊岐(いき)(支)久佐(くさ)の名で載る。「生草(いきくさ)」の意味で、ベンケイソウの名も、手折って放置しても根づくほどの生命力を、弁慶の強さに見立ててつけられた。江戸時代の『和爾雅(わじが)』にはベンケイソウとチドメの名があり、『増補地錦抄(ちきんしょう)』(1710)にはげんじ草(源氏草)の名で図が初見する。
 中国では4世紀、すでに鉢に植えて屋上で栽培されていた。これは中国の古名の戒火(かいか)、慎火(しんか)が示すように、水分の多い多肉質の葉をもつベンケイソウの葉を、火を防ぐ御守(おまも)りとしたのである。『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』では、やけどに用いたり、身を軽くし、目をよくするなどの薬用植物として扱われている。[湯浅浩史]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ABM

弾道ミサイル迎撃ミサイル。大陸間弾道ミサイルICBMや潜水艦発射弾道ミサイルSLBMを早期に発見・識別し,これを撃破するミサイル。大気圏外で迎撃するものと,おとりなどの識別が可能となる大気圏内で迎撃す...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

ベンケイソウの関連情報