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ホタテガイ Patinopecten yessoensis; Ezo giant scallop

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ホタテガイ
Patinopecten yessoensis; Ezo giant scallop

軟体動物門二枚貝イタヤガイ科。長 20cm,殻高 19.5cm,殻幅 5cm。殻は大型,丸い扇形で,殻頂の前後両側に耳状部があり,背縁はまっすぐである。左殻はふくらみが弱く,殻表は紫褐色 (幼貝では赤,黄,白などの斑がある) が多いが,右殻はややふくらみ,白色が多い。両殻の殻表には低くて太い放射肋が 20~25本走っている。殻の内面は白色で,中央部近くに大きくて丸い後閉殻筋 (貝柱) の付着跡がある。幼貝のときは右殻の前耳状部の下にある湾入から足糸を出して地物に付着する。軟体は貝柱が大きく,外套膜縁に小さな触手と眼がある。サハリン,千島列島,北海道,本州東北地方,朝鮮半島東岸やアムール,ウスリー地方に分布し,水深 10~30mの砂礫底にすむ。産卵は水温9℃前後で,根室で7月,陸奥湾,北海道奥尻島で4月頃である。養殖も盛んで,肉は食用とし,乾物,缶詰にもする。殻は貝細工の材料やカキの採苗器に用いる。殻を激しく開閉してはねるように泳ぐことができ,一方の殻を帆のように立てて水面を泳ぐという話は事実ではない。なお,市場などではイタヤガイも含めて商品名でホタテガイということもある。

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栄養・生化学辞典の解説

ホタテガイ

 [Patinopecten yessoensis].イタヤガイともいう.ウグイスガイ目イタヤガイ亜目ホタテガイ属の広く食用にされる二枚貝.養殖も盛ん.

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食の医学館の解説

ホタテガイ

《栄養と働き》


 ホタテガイは「帆立貝」と書きます。その昔、殻(から)を帆のように立てて海上を進むと考えられていたためです。実際は、殻を開閉させながら殻のすきまから海水を噴射し、ジェット推進で移動します。
 ホタテガイは寒海性で、東北から北海道、サハリン近海、オホーツク海などに分布。近年では天然ものが減少し、養殖ものが市場に多く出回っています。
○栄養成分としての働き
 ホタテガイは、タウリン、ビタミンB2、鉄や亜鉛(あえん)が豊富です。
 タウリンは生活習慣病を予防すると注目されている成分で、含硫(がんりゅう)アミノ酸の一種。コレステロールの低下、心臓機能の強化など各種の作用があり、各部分の機能を高めることによって症状や病気に対する抵抗力をつけ、予防・改善します。動脈硬化、脂質異常症や、高血圧によって引き起こされる脳卒中(のうそっちゅう)、心臓病、肝臓病などを予防します。また網膜(もうまく)の発達を促進させたり、視力低下を防ぐ作用もあります。
〈健康な皮膚をつくるビタミンB2も豊富〉
 ビタミンB2は、細胞の再生やエネルギーの代謝をうながし、健康な皮膚や髪、爪をつくるほか、体内でつくられる老化のもとといわれる過酸化脂質の分解を助ける働きがあります。そのため、動脈硬化を予防したり、口内炎(こうないえん)や口角炎(こうかくえん)、肌荒れなどを防ぎます。
 亜鉛は、味覚や嗅覚の機能を正常に保つように働く栄養素。亜鉛が不足すると、子どもなら発育が遅れます。成人では脱毛や爪に白い斑点(はんてん)が現れ、胃腸障害も起こりやすくなります。また、亜鉛にはウイルスなどの異物が侵入すると、異物を排除しようとする免疫反応がありますが、不足すると、かぜをひきやすくなります。
 鉄も多いので、貧血ぎみの人にもうれしい食材です。
○漢方的な働き
 漢方薬膳(やくぜん)では乾燥した貝柱を干貝(かんぺい)といい、皮膚やのどの乾燥感を潤し、血圧を下げるときに用います。

《調理のポイント》


 旬(しゅん)は冬から春にかけて。なかでも10月ごろの3~4年ものがおいしいといわれています。殻つきのものなら、やや開いているものが新鮮です。殻が閉じているのは死んでおり、逆に大きく開いているのは活きが悪いことの現れです。むき身の場合は、身に弾力性があり、透きとおったもの、貝柱につやがあるものにしましょう。
 ホタテガイ独特のうまみはグルタミン酸、イノシン酸などで、生食でも十分おいしいのですが、干し貝柱にしたほうがうまみが上がります。
 調理は、煮ものなどよりも、刺身や貝焼き、ソテーなどシンプルなほうがうまみ成分をじょうずに活かすことができます。
○注意すべきこと
 ホタテガイは基本的に身全体を食用できますが、養殖もののホタテガイの場合、餌のプランクトンが含む毒素を貝が内臓にため込むため、貝柱の周囲についている黒いひも状の中腸腺(ちゅうちょうせん)を取り除いて食べるほうが無難でしょう。また、アレルギー体質の人が生で多食すると、じんま疹(しん)を起こすことがありますので、こちらも注意してください。

出典 小学館食の医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホタテガイ
ほたてがい / 帆立貝
Ezo giant scallop
[学]Patinopecten yessoensis

軟体動物門二枚貝綱イタヤガイ科の二枚貝。本州の東北地方から北海道、オホーツク海、朝鮮半島東岸、沿海州に分布し、水深10~30メートルの砂礫(されき)底にすむ。底質粒子のあまり小さな所は好まず、天然の好漁場といわれる所(1平方メートル当り6個体以上)では礫56%(細砂44%)、中漁場では43%、不良漁場(1.5個体以下)では17%である。[奥谷喬司]

形態

普通、殻高、殻径とも20センチメートルほどに達するが、満1年で殻高2センチメートル、2年で6.2センチメートル、3年で9センチメートルぐらいになる。寿命はおよそ10ないし12年ほどである。殻は丸みのある扇形で、殻頂の前後に三角形の耳状突起がある。左殻は膨らみが弱く、濃い紫褐色である。個体によっては色が薄かったり、赤や黄白色の斑(はん)がある。左殻表面には低いが細くて鋭い放射肋(ろく)を20本ほどもつ。そのほか、小鱗片(りんぺん)状ないし布目状の微細な彫刻がある。右殻は左殻より深く、白色を帯び、放射肋は太くて低い。また右殻は左殻よりやや大きく、腹縁がわずかにずれている。右殻の前耳の下には足糸湾入がある。殻の内面は白く、蝶番(ちょうつがい)には顕著な歯はないが、太い内靭帯(じんたい)がある。前閉殻筋はなく、中央に丸くて大きい後閉殻筋痕(こん)がある。[奥谷喬司]

生活史

ホタテガイは陸奥(むつ)湾では3月上旬、奥尻(おくしり)島では4月ごろ、根室(ねむろ)では6月に産卵し、5~7日で殻長120マイクロメートルぐらいに達し、D型幼生となる。2~3週間たって300マイクロメートルぐらいになると、付着生活に入る。初めは足糸で礫などに付着しているが、成貝では右殻を下にして海底に横たわる。通常は海底のリップルマーク(砂上にできる波形模様)の上に、潮上に腹縁を向けている。異常大発生のときはやむをえず泥質の所まで分布するが、いずれ大量斃死(へいし)を免れない。環境が悪化するとただちに移動する。移動は、名前のように殻を帆のように水面に立てて行うわけではなく、殻を激しく開閉させ、すきまから水を噴射して短距離を泳ぐことによる。水が耳状部のすきまから噴出されると、貝は腹縁の方向に進み、腹縁のほうから水が出ると殻頂の方向に進む。ヒトデなどの外敵に襲われそうになると、片側から激しく水を噴射して回転し、敵を振りほどく。[奥谷喬司]

養殖

ホタテガイは従来、豊凶が激しく漁獲が安定しなかったが、現在では養殖技術の進歩によって、1980年8万3134トン、90年22万9667トン、2000年30万4286トンと漁獲量は増加している。ホタテガイの養殖は1934年(昭和9)以来試みられていたが、63年(昭和38)までは企業化されずにいた。同年、岩手県、ついで青森県、宮城県、さらに北海道のサロマ湖や内浦湾などで次々に養殖場が設置され、現在のような隆盛をみるに至った。初期には、「耳つり法」といって、殻高4~5センチメートルの貝の前耳に穴をあけ、ナイロンテグスを通してロープに結び付けておく方法が用いられた。この方法は、資材が安価である反面、手間がかかり、また貝の生存率が悪かった。次に、真珠貝養殖に用いるパールネットが流用試用されたが、これも貝の収容数が少ないので現在は用いられていない。現在、岩手県や青森県、サロマ湖などの大生産地で多く使用されているのは、ポケットネットおよび行灯籠(あんどんかご)である。ポケットネットは、目の間隔が2~3センチメートルのハイゼックス(ポリエチレン)製の網の片側に、同じ材質のポケット状の袋を数段取り付けたものである。貝を入れてからポケットの口をふさいで用いるが、この方法によると貝の変形も少なく、波の荒い所でも有効である。行灯籠は、同様のハイゼックス網地でつくった円筒形の籠で、20センチメートルごとに10段ほど仕切り底をつけ、中に貝を収容して垂下するものである。垂下方法も、当初はカキ筏(いかだ)などを流用していたが、現在は、海底から20メートル、海面から数メートルの所に張った中層延縄(はえなわ)式の施設につるすのが一般的である。[奥谷喬司]

料理

貝柱は肉よりも大きく、おもに貝柱を食用にする。貝柱の周りについている外套膜(がいとうまく)も「ひも」と称して食用する。殻付きをそのまま直火にかけて焼いたり、殻から外した身は塩焼き、照焼き、バター焼きなどにする。ひもを除いた貝柱は、刺身、酢の物、煮つけ、フライ、スープ、コキールなどに広く利用できる。ひもは握りずしの種(たね)、酢みそ和(あ)え、わさびじょうゆ和えなどによい。塩ゆでして乾燥した干し貝柱は干貝(カンペイ)といい、中国料理によく用いられる。[河野友美・大滝 緑]
『西村雄二著『オホーツクのホタテ漁業』(1994・北海道大学図書刊行会) ▽菅原義雄・森勝義・竹内昌昭・沼知健一・松谷武成編『カキ・ホタテガイ・アワビ――生産技術と関連研究領域』(1995・恒星社厚生閣) ▽東北農政局青森統計・情報センター編・刊『陸奥湾のたからほたてがい――もっと、ほたてを知ろう!』(2004)』

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世界大百科事典内のホタテガイの言及

【イタヤガイ(板屋貝)】より

…殻の表面が開いた扇状をなすイタヤガイ科の食用二枚貝(イラスト)。俗にホタテガイというが,本当のホタテガイは東北地方や北海道に分布する別種。殻の長さ12cm,高さ10.5cm,膨らみ3.5cmで,左殻は平らで褐色,右殻はよく膨らみ白色の個体が多い。…

※「ホタテガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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