ジャズ史上最高の名歌手とされる黒人女性。15歳の少年と13歳の少女の火遊びの結果,祝福されることなくこの世に生をうけ,10歳で強姦され,14歳で娼婦に身を落とし,売春罪で投獄された。出所後,ダンサーのオーディションを受けたが,歌がうまく歌手として採用された。独習で歌う個性的な歌はまもなく識者の注目するところとなり,33年秋ベニー・グッドマンのレコーディングに雇われたのを皮切りに,テディ・ウィルソン・コンボのレコーディング,カウント・ベーシー楽団,アーティー・ショー楽団の専属歌手を経て独立。コモドア,デッカ,バーブに多くの吹込みを残した。少女時代から麻薬のとりことなり,逮捕投獄を繰り返し,40年代末からは張りのある声もなくしたが,それにもかかわらず,ソウルフルな歌唱は聴く者の胸を打った。《自叙伝》(邦訳《奇妙な果実》)は,72年ダイアナ・ロス主演で《ビリー・ホリデー物語》として映画化された。代表作にその愛称をタイトルとした《Lady Day》(CBS),《ビリー・ホリデイの魂》(バーブ)などがある。
執筆者:油井 正一
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アメリカの女性ジャズ歌手。メリーランド州生まれ。10歳で中年男に暴行されて感化院に入れられ、1929年ニューヨークで娼婦(しょうふ)になって投獄された。その後クラブで歌い、1933年ベニー・グッドマンと初レコードを録音して注目された。自分の感じたままに歌って、器楽ジャズそのものの魅力を生み、しかも歌詞の意味をよく表現するとともに人間性を示した天才であり、今日もなお最高のジャズ歌手と称され、多くの歌手に強い影響を及ぼしている。自作名曲は『ビリーのブルース』『言い訳しないで』『神は子を祝福し給(たも)う』など。ダイアナ・ロス主演による映画『ビリー・ホリデイ物語』(1972)が製作された。
[青木 啓]
『油井正一・大橋巨泉訳『奇妙な果実――ビリー・ホリデイ自伝』(1971・晶文社)』▽『J・チルトン著、新納武正訳『ビリー・ホリデイ物語』(1981・音楽之友社)』
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