ホワイトカラー・エグゼンプション(読み)ほわいとからーえぐぜんぷしょん

知恵蔵の解説

ホワイトカラー・エグゼンプション

働いた時間に関係なく、成果に対して賃金が支払われる仕組み。2014年5月28日の安倍首相を議長とする産業競争力会議で提案され、労働規制を所管する厚生労働省も導入の方針を固め、新成長戦略の目玉として6月に閣議決定された。
従来の働き方としては、1日の労働時間を原則8時間までとする一般的なものと、弁護士など特定の職種に限って労使で想定した労働時間をもとに賃金を定める裁量労働制がある。いずれの場合も深夜・休日手当は支給されるが、残業代に関しては裁量労働制ではあらかじめ賃金に含まれているとみなす。07年1月にも、第1次安倍政権は労働時間法制の緩和として年収900万円以上の労働者を対象に「ホワイトカラー・エグゼンプション」(一定の類型業務に就く労働者について労働時間規制の適用除外とする)が検討されている。この時は、「過労死を招く」などの強い反発を受けて国会提出は断念している。
今回の「残業代ゼロ」制度は、労働時間の長さと関係なく成果で賃金を決めるというもの。14年4月に産業競争力会議で民間議員から提案された。当初は長時間労働を招くと慎重だった厚生労働省が、生産性向上に役立つとする産業界の要請を受け入れた形で対案を作成。対象となるのは「世界レベルの高度専門職」で年収が数千万円以上の人とした。しかし、産業競争力会議民間議員案では中核・専門的職種の「幹部候補」で、年収の条件は外すとしている。田村憲久厚生労働相は「低所得の人が対象になることはあり得ない」と述べ、甘利明経済再生相もこれに合意している。ただし、具体的な年収水準については、アベノミクスで所得が増加することを勘案してから検討するとして明言を避けた。制度導入によって、幅広い働き手が残業代を支払われることなく、長時間労働を強いられるのではという懸念が広がり反発が強まっている。

(金谷俊秀  ライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホワイトカラー・エグゼンプション
ほわいとからーえぐぜんぷしょん

ホワイトカラーとよばれるおもに事務作業に携わる労働者に対して、労働時間規制などを適用除外する制度のこと。一般的には、労働時間で成果をはかることがむずかしい企画業務などにおいて、自己責任で労働時間を調整し、効率的に仕事をこなしてもらうことを目的としている。

 日本では2006年(平成18)末から2007年初めに、厚生労働省の審議会などにおいて、法律による制度の導入が議論された。日本の労働基準法は労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定め、これを超えると、企業は残業代を支払う必要がある。ホワイトカラー・エグゼンプションの対象となった社員はこのような規制の対象外となる。厚生労働省は、年収900万円以上、上司から仕事の進め方の指示を受けないなどの条件を満たす労働者だけを制度の対象にしようとしたが、この法案は「残業代ゼロ法案」と報道されたため、各界で反発が広がり、法案の国会提出は見送られた。

[編集部]

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