南アメリカ、ボリビア南部の都市。3900メートルの高地に位置し、標高が世界最高の都市の一つである。人口14万5057(2001)。1545年にセロ・リコ山で銀鉱石が発見されて建設されたアメリカ大陸最古の鉱山都市で、莫大(ばくだい)な量の銀を産出した。16世紀末の最盛期には16万の住民がいたが、資源枯渇や銀の価値低下によってしだいに衰退し、一時は荒廃した。20世紀に入り錫(すず)の開発で復興し、現在はタングステン、銀、銅、鉛も採掘され、製鉄、製鋼、製靴、家具・電気器具製造も行われる同国有数の工業都市である。市街はコロニアル・スタイルの建物が大部分を占め、「11月10日広場」の周辺には鉱山の所有者ホセ・デ・キロスの旧宅をはじめ大邸宅が並ぶ。18世紀のバロック建築の傑作サン・ロレンソ教会は注目に値する。ポトシ市街は1987年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録されたが、セロ・リコ山で行われている無計画な採掘作業により遺産価値が危険にさらされているという理由により、2014年には危機遺産リスト入りしている。
[山本正三]
ボリビア南部にある鉱山都市。人口14万7672(2005)。標高3900m。市の南東にあるセロ・リコ銀山は1545年にスペイン人に発見され,16世紀後半から17世紀前半にかけて多量の銀をスペインを通じてヨーロッパに送った。市は1546年にスペイン人により建設され,1611年には15万の人口を抱える都市に成長し,当時の新世界最大の都市となった。当時のヨーロッパ世界ではスペイン語や英語の表現に〈ポトシのごとくに豊かな〉という表現が生まれたほど,このアンデス山中のおびただしい富と豪奢な生活はヨーロッパから来た人々を驚嘆させた。もちろん,その豊かさは,酷使された多くのインディオの犠牲のうえに成り立っていたのである。17世紀後半からしだいに衰えはじめ,鉱脈も枯渇し,19世紀初頭の独立戦争で荒廃したが,20世紀に入ってからはスズ鉱山として発展し,今日も銀,スズの発掘が続けられている。王立造幣局など,植民地時代の繁栄を物語る多くの建物が残されている。
執筆者:中川 文雄
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…ポルトガルが喜望峰経由の新航路によってアジアに進出した結果,地中海経由の東方貿易で繁栄していたイタリア諸都市は打撃をうけ,17世紀になってより強力なオランダやイギリスがアジア貿易を展開すると,完全に没落した。他方,新世界では,とくに1540年代以後ポトシ銀山を中心とするペルーとサカテカス銀山を中心とするメキシコで大量の銀が産出され,その大部分がスペインに流入した。こうして,ポルトガル,ついでスペインが世界強国として勃興する。…
…吏員,特殊技能者を除く原住民の成年男子全員が,一度に総数の7分の1ずつ1~2ヵ月交代でかり出され,スペイン人の小麦農園,ブドウ園,オブラヘ,精糖場などで働いた。中央アンデスの人口中心地からやや南へはずれたポトシ銀山のためには,特別の〈鉱山ミタ〉が地域を特定して徴せられ,賃金はいくらか高いが交代期間は10~12ヵ月,仕事は過酷で死亡率も高く最も恐れられた。しばしば見られた労働者の酷使虐待は別として,大量の人口移動,スペイン人との直接の接触は原住民社会に甚大な影響を及ぼした。…
…地域により時期的にある程度のずれがあるとはいえ,おおよそ第1期は征服直後から16世紀中ごろまでの時代で,先住民社会に蓄積されていた財宝の略奪と,先住民の奴隷化およびその労働力を基礎とする砂金開発を特徴としている。第2期はアンデス高地のポトシ銀山の発見(1545)とメキシコ北部のサカテカス銀山の発見(1546)を契機とする銀開発の隆盛期である。砂金開発とならんで銀開発も征服時代の初期から始まっていたが,二大鉱山の発見に加えアマルガム法の導入(1556)によって低品位鉱石の精製も可能となり,またポトシ近くのワンカベリカで銀の精製に不可欠な水銀の鉱脈が発見された結果,16世紀末には新大陸の銀生産は急激に増大し,世界全体の9割に達した。…
※「ポトシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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