ラパス(読み)らぱす(英語表記)La Paz

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラパス」の意味・わかりやすい解説

ラパス
La Paz

ボリビア西部,ラパス県の県都。正式名称はラパスデアヤクチョ La Paz de Ayacucho。ボリビア最大の都市。同国の首都は憲法上はスクレに定められているが,大統領府,議会をはじめとする中央行政・立法機関がラパスに集まるため,実質的にはラパスがボリビアの首都として機能している。アンデス山脈中に広がるアルティプラノ高原の東縁部にあり,チチカカ湖の南東端に近い。世界で最も高いところにある首都として知られ,標高約 3600m。このため気候は年間を通して冷涼ないし寒冷で,月平均気温8~12℃。しかしアマゾン川水系ラパス川が高原面に刻んだ深く広い谷に位置するため,高原上を吹きわたる寒風をある程度避けることができる。インカ帝国集落があった地に 1548年スペイン人によって建設され,植民地時代にはポトシ銀山と太平洋岸のリマを結ぶ重要な交通路に沿う要地として繁栄。 1898年スクレから中央政府機関が移転してきて以降ボリビアの政治の中心地となるとともに,同国最大の商工業中心地として発展。アンデス北東斜面のユンガス地方からのコカ,サトウキビ,コーヒーや,アルティプラノ高原のジャガイモ,ヒツジ,羊毛などを集散するほか,スズ (錫) ,タングステンアンチモン,鉛,銀などの鉱産物を輸出。市内には食品加工を中心に化学製品,繊維,ガラス,家具などの工業が立地。イイマニ山など 6000m級の高峰が連なるレアル山脈を背後に控えて,谷底部には高層ビルが立ち並ぶ近代的市街が広がるが,谷の斜面や山麓部にかけては細い坂道に沿ってインディオの家が密集する。市内には大統領官邸,国会議事堂などのほか,大聖堂,サン・アンドレス大学 (1830) ,ボリビア・カトリカ大学 (1966) ,国立考古学博物館,国立美術館,劇場などがあり,ボリビアの文化中心地となっている。現在も交通の要地で,パンアメリカン・ハイウェーをはじめとする道路が四通し,チリのアリカ,アントファガスタ両港およびアルゼンチンブエノスアイレスへそれぞれ延びる鉄道の起点。市の上方の高原上には国際空港がある。人口 78万9585(2001)。

ラパス
La Paz

メキシコ北西部,バハカリフォルニアスル州の州都。バハカリフォルニア半島南端近く,カリフォルニア湾の支湾ラパス湾にのぞむ港湾都市。高温少雨の半砂漠地帯にあって,国内他地域からの地理的孤立に悩むが,同州最大の都市として発展。港は 1596年にスペイン人に「発見」され,1800年代初めに町が建設された。 28年以降,半島が南北に2分された 87年まで,半島全域の行政中心地であった。現在漁業 (サメ,エビ) ,農業 (トウモロコシ,ワタ,ナツメヤシ) ,牧牛,観光業が市の主要収入源となっている。近年特に海浜保養地として発展,トローリング,ボート乗り,水上スキーなどの水上スポーツや近くの山地での狩猟を楽しむ観光客が集る。半島北部のティフアナ方面から道路が通じ,本土のマサトラン港とフェリーで連絡。人口 16万 1010 (1990推計) 。

ラパス
La Paz

ホンジュラス西部の都市。同名県の県都。首都テグシガルパの北西約 60kmにあり,モンテシヨス山脈東斜面の標高約 750mの地に位置する。 1792年建設。周辺の農業地帯の中心地で,コーヒー,ヘネケン (繊維植物) ,家畜などを集散。製材,なめし皮などの工業がある。首都と道路で結ばれる。人口1万 965 (1988推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラパス」の意味・わかりやすい解説

ラ・パス(ボリビア)
らぱす
La Paz

南アメリカ、ボリビア西部にある同国の事実上の首都。ティティカカ湖の東50キロメートルに位置する。人口79万3293(2001)。法制上の首都はスクレであるが、1900年行政機関がスクレから移ってきて以来、首都としての役割を果たしている。ボリビアの政治、文化、経済の中心地で、織物、家具製造、化学、金属、食品加工などの工業が盛んである。また交通の要地で、パン・アメリカン・ハイウェーが通じるほか、ペルーのリマより鉄道の便もある。1548年アルティプラノ高原の3700メートルの高地に建設された高原都市で、首都としては世界でもっとも高い所にある。年平均気温8.8℃、日々の気温の変化が激しく、夜間は寒い。12月~2月はしばしば雨が降る。空港はさらに高い標高4000メートルにあり、初めての訪問者には高山病にかかる人が多い。

 市街地は、ティティカカ湖から流れ出るラ・パス川沿いの盆地に展開している。高い段丘上と下流部の低い所にインディオの住宅があり、中間が白人のビジネス地区になっている。純粋のインディオが住民の半分を占める。川の北東岸、ムリリョ広場が市の中心で、大統領官邸をはじめ、諸官庁、教会、サン・アンドレス大学(1830創立)があり、近代的高層建築群が集まっている。市街地には植民地風の建物はわずかで、ほとんどすべてが近代建築である。モンティクロ・デ・ソポカチとよぶ丘からの眺望は壮観で、壮大なイーマニー山を背景に谷に沿って町が発展しているさまが一望できる。

[山本正三]


ラ・パス(メキシコ)
らぱす
La Paz

メキシコ西部、バハ・カリフォルニア・スール州の州都。カリフォルニア半島南部のカリフォルニア湾に面する港湾都市である。人口5万7247(1978)。真珠採取、銀採掘の町であるが、最近は釣りの基地として有名になった。近海はエビをはじめ水産資源に富み、日本人も進出している。マサトランとの間にフェリーが通じ、半島の交通の中心地である。

[高木秀樹]

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