ポリフェノール・ゴマリグナン・イソフラボン(読み)ぽりふぇのーるごまりぐなんいそふらぼん

食の医学館 の解説

ぽりふぇのーるごまりぐなんいそふらぼん【ポリフェノール・ゴマリグナン・イソフラボン】

食品に含まれる機能性成分をフードファクター(food factor)と呼び、その中で、食物繊維を除いた植物由来のものをファイトケミカル(phytochemical)と呼びます。その代表格がポリフェノールでしょう。ポリフェノールは樹皮や果皮、葉などに含まれ、簡単にいうと、光合成でつくられる植物の色素やにがみ成分。ポリフェノールとひとくちにいっても、1つの物質ではなく、5000種類にも及ぶとされています。
 ポリフェノール類の物質は抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去して細胞への攻撃を防いだり、発がん性物質の活性化を抑制する効果を発揮します。
 そのため、老化の進行を抑えたり、動脈硬化(どうみゃくこうか)や糖尿病、がんなどの予防にも役立つわけです。
 このほかゴマのリグナンダイズイソフラボンなどにも、がんの抑制などの抗酸化作用の働きが認められています。
 これらは物質ごとに殺菌、肝機能の強化、視力向上、血圧の上昇抑制など、特有の働きをもっています。体の不調が気になる場合や病気の予防を考える場合には、それにあった作用をもつフードファクターを選んで摂取すると、いっそう効果的です。そうした健康的効用をもつフードファクター類のなかでも、とくに注目すべきものが、以下の成分です。
○アントシアニン
 ブルーベリー赤ジソブドウなどに含まれている青紫色の色素で、目によいことで知られる栄養素です。
 私たちは網膜(もうまく)の中のロドプシンという物質が、光の刺激を脳に伝えることでものを見ていますが、アントシアニンにはロドプシンの働きを活性化する作用があるのです。そのため、眼精疲労(がんせいひろう)の回復や視力の向上に有効なほか、糖尿病からくる網膜障害の改善に役立ちます。また、アントシアニンは肝機能回復・向上や血圧の上昇抑制、毛細血管の保護、血栓(けっせん)の生成抑制などにも有効です。
 なお、アントシアニンの含有量は色の濃さに比例しますから、ブルーベリーや赤ジソはなるべく色の濃いものを選ぶようにしましょう。
○カテキン
 お茶や渋柿、赤ワインに多く含まれる渋み成分で、タンニンの一種。厳密にはカテキンエピカテキンエピガロカテキンなどの種類があり、紅茶に含まれるテアフラビンもカテキンの仲間です。
 カテキンには脂質の酸化防止、血液の凝固(ぎょうこ)抑制、コレステロール値の低下、血糖値の上昇抑制、強い殺菌力によるむし歯や口臭防止などの作用があります。
 カテキン摂取の主役といえばお茶ですが、その含有量は葉によってかなりばらつきがあります。お湯に溶けでる性質があるので、食後のお茶としておおいに飲みたいものです。
○ゴマリグナン
 ゴマに含まれる抗酸化物質で、代表的なものにセサミンやセサミノールなどがあります。このうちセサミンは、肝臓の活性酸素を除去するのに大きな効果を発揮し、悪酔いや二日酔いを防ぐほか、肝臓がんの予防にも効果が認められています。一方、セサミノールには肝機能の活性化のほか、悪玉コレステロールの生成を防ぐ作用があり、その効果は脂質異常症の治療薬に匹敵するといわれます。
 なお、ゴマは外皮がかたくて消化が悪いため、すりゴマにしたり、ゴマ油のかたちで摂取したほうがゴマリグナンの吸収はよくなります。
○クルクミン
 カレー粉の黄色のもと、ターメリック(ウコン)に含まれる色素です。
 すぐれた解毒作用や胆汁(たんじゅう)の分泌(ぶんぴつ)促進作用があり、それによって肝機能の強化や、肝臓障害の予防改善に効果を発揮します。ターメリックはインド、中国、日本で古くから黄疸(おうだん)や肝臓、胃腸の薬として利用されてきましたが、それはクルクミンの効用によるところが大きいのです。
 クルクミンはカレーの中に含まれていますが、カレールウよりカレー粉の含有量のほうが多いので、できればカレー粉を使いたいものです。
○サポニン
 植物全体に幅広く含まれる成分で、渋み、にがみ、えぐみなどの主体です。さまざまな種類がありますが、代表的なのがダイズサポニンです。
 ダイズサポニンにはコレステロールを溶かして取り除いたり、中性脂肪を減らす働きがあります。また、過酸化脂質の生成を抑えて、血栓症や動脈硬化を防ぐのにも有効。肥満の防止や肝機能障害の改善にも役立つと考えられています。
 ダイズサポニンは、ダイズを使った食品全般に豊富に含まれており、日本人には摂取しやすい栄養素です。
○イソフラボン
 ダイズなどに多く含まれており、人の体に入ると女性ホルモンのエストロゲンとして作用する物質です。
 そのため、エストロゲンの減少によって起こる更年期障害(こうねんきしょうがい)の症状軽減に、イソフラボンはたいへん効果的。また、エストロゲンはカルシウムが骨から溶けだすのを抑制する働きもになっているため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にもイソフラボンが役立ちます。
 イソフラボンもダイズやダイズ製品で比較的手軽に摂取できます。骨粗鬆症の予防のためにも、若いころからこうした食品を積極的にとることをおすすめします。
○ルチン
 そばに豊富な栄養素で、ビタミンの仲間とされることもあります。ルチンには毛細血管を強化する働きがあり、高血圧や脳血管障害などの予防に効果を発揮します。また、ビタミンCといっしょに摂取すると、腎臓(じんぞう)からのビタミンCの排泄量を抑えることができて、より効果的です。
 ルチンはそばの外皮に近い部分に多く含まれており、食べるなら精白度の低い田舎そばがおすすめ。ゆでた湯にもかなり溶けだしているので、ぜひとも、そば湯も飲みましょう。
〈フラボノイドとポリフェノール、そしてビタミンPの関係は?〉
 ポリフェノールと同様、最近、健康に役立つ成分として、よく名前のあがるものにフラボノイドがあります。フラボノイドは植物のもつ黄色系の色素のことで、その多くがポリフェノール類と重複しています。たとえば、アントシアニン、タンニンなどがそれ。フラボノイドも、やはり抗酸化作用をもち、老化の抑制や、動脈硬化、がんなどの予防に効果のある物質です。
 ちなみに、ビタミンPもフラボノイドの一種です。しかし、その生理作用の面から、ビタミンに分類するのは適切でないとされ、現在ではフラボノイド(もしくは、バイオフラボノイド)のなかに分類されています。

出典 小学館食の医学館について 情報

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