マイトマイシンC(読み)マイトマイシンシー

化学辞典 第2版 「マイトマイシンC」の解説

マイトマイシンC
マイトマイシンシー
mitomycin C

C15H18N4O5(334.33).Streptomyces caespitosusが産生する抗腫瘍抗生物質.青紫色の結晶.融点360 ℃.UV(メタノールmax 216,360,560 nm(ε 24800,24800,2).水,エタノールに難溶,ジエチルエーテルに不溶.グラム陽性菌,グラム陰性菌,結核菌などに強い抗菌力をもつ.内服または注射で,慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,胃がん,肝がん,結腸・直腸がん肺がん子宮頸がん,子宮体がん,乳がんなどのがんの治療に単独あるいは併用で用いられる.作用機序は,がん細胞内で還元された活性化体が,二本鎖DNAグアニン残基に結合して架橋し,DNAの複製を阻害することである.LD50 4 mg/kg(マウス静注).[CAS 50-07-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイトマイシンC」の意味・わかりやすい解説

マイトマイシンC
まいとまいしんしー
mitomycin C

東京・渋谷区の土壌から抽出された放線菌の一種であるStreptomyces caespitosus V-621株より得られた抗悪性腫瘍(しゅよう)性抗生物質。青紫色の結晶または結晶性粉末で、抗細菌作用も有する。癌腫(がんしゅ)、肉腫、白血病、ホジキン病および悪性絨毛(じゅうもう)上皮腫の自覚的および他覚的寛解を適応症とする。1日1回1~2ミリグラムを連日静脈注射または動脈注射する。副作用として出血傾向、食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、全身倦怠(けんたい)、発熱、肝障害、白血球減少、血小板減少などがみられる。一アンプル2ミリグラム力価、錠剤は一錠1ミリグラム力価含有。そのものは毒薬で、極量は1回20ミリグラム力価(静脈内)。1個中2ミリグラム力価以下を含有するものは劇薬である。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のマイトマイシンCの言及

【制癌薬】より

…放線菌の培養ろ(濾)液から分離されたものが多く,核酸合成阻害作用を示す抗生物質は癌治療において実用価値が大きい。マイトマイシンCは日本の秦藤樹らが1956年に放線菌の1種から分離したもので,消化器癌の治療に広く用いられている。造血器への副作用は比較的大きい。…

※「マイトマイシンC」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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