流れの中で回転している物体には,流速と回転軸の両者に垂直で,回転によって流れが加速される側に向く力が働くという現象。その力の大きさは,流速と回転の角速度の積に比例する。ドイツのマグヌスHeinrich Gustav Magnus(1802-70)が1852年に回転しながら飛行する砲弾に関して最初に研究を行ったのでこの名がある。図のように左からやってくる流れが回転する物体を過ぎると,上向きの流れが下向きの流れに変わる。そのため流れは物体から下向きの運動量をもらうことになり,その反作用として物体に上向きの力が働くのである。この現象は上側で流速が増し,下側で流速が減少しているので,ベルヌーイの定理によって上側で圧力が低く,下側で圧力が高くなり,その圧力差によって上向きの力が働くと説明することもできる。野球やゴルフのボールが回転を与えることによってカーブするのもマグヌス効果の例であり,また船につけた鉛直軸のまわりに回転する円筒(フレットナーの帆)を帆の代りに用いる発想はマグヌス効果を利用した例である。紙を巻いて作った円筒を斜面に沿って転がしたとき,その斜面を離れた後の空中軌道が,想像されるものより斜面のほうに著しくずれるのも,この効果の例である。なお,マグヌス効果は,任意の断面をもつ物体が,その軸と垂直方向の一様な流れの中におかれたとき,物体には流れと垂直にρUΓ(ρは流体の密度,Uは流速,Γは循環)の大きさの力が働くというクッタ=ジューコフスキーの定理の特別な場合とみなせる。
→渦
執筆者:橋本 英典
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[渦に作用する力]
いま左から右に流れる流れの中に,時計まわりの渦を固定しておくと,流れは下向きに偏向して運動量を得るので,その反作用として渦には上向きの力(揚力)が働く。円柱などの物体を回転させて流れの中におくとき,揚力が働くのも物体を渦とみなせばまったく同じことであり,これをマグヌス効果と呼ぶ。また流れの中におかれた翼形に働く揚力も,後縁での流れを滑らかにするように境界層がはがれ,反時計まわりの循環γをもった渦が放出されて流されていき,翼のまわりには時計まわりの強さγの循環が残るためと解釈できる。…
…ボールが前進するために前方から当たってくる風速と回転による流速とが合成され,ボールの片側では流速が増して圧力が下がり,反対の側では流速が減って圧力が上がる(ベルヌーイの定理)。その圧力差でボールの軌道を曲げる力が生じ(マグヌス効果),ボールはカーブするのである。 翼の断面の形を調べてみると,一般に上面のほうが湾曲度が大きく,下面のほうは小さくなっており,気流方向に対していくらかの迎え角(翼断面の基準線と飛行方向,つまり流れの方向とのなす角度)がついている。…
※「マグヌス効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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