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うずvortex

翻訳|vortex

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


うず
vortex

常識的には,流線が閉じた曲線となる旋回流を「渦」と呼んでいるが,流体力学ではその定義は一様ではない。流体の小部分が自転しているとき,自転の角速度の2倍を渦度といい,これで渦の強さを表わす。渦度がゼロでない部分を「渦あり」,ゼロの部分を「渦なし」という。渦が空間的に集中している場合には,そのまわりに旋回流,すなわち常識的な意味での「渦」ができる。流しの栓を抜いたときにできる渦巻きや,たばこの煙の輪 (渦輪) はその例である。これに対して,渦度が連続的に広く分布している場合には,流れは必ずしも旋回流とはならず,したがって常識的な意味での「渦」はできない。たとえば,流れの中の物体の表面付近では,流れは渦ありであるが,必ずしも「渦」は発生しない。流体の中に曲線を引いて,その上の各点で渦度の方向が曲線の接線となるようにしたとき,この曲線を渦線という。1つの閉曲線の各点を通る渦線によってつくられる曲面を渦管といい,きわめて細い渦管を渦糸という。渦管の直断面積を σ ,断面内での渦度の強さを ω とすれば,ωσ の値は1つの渦糸については一定であり,ωσ を渦糸の強さという。このため,渦管,つまり渦線は流れの内部で終ることはなく,無限遠方まで続くか,流れの境界面まで届くか,または閉じた渦輪をつくるかのどれかでなければならない。完全流体においては,直線渦糸によって,円周速度が渦糸からの距離に反比例するような定常流がつくられる。この流れにおいては,渦糸自体を除いて,流れの場はいたるところ渦なしである (自転していない) 。

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デジタル大辞泉の解説

うず〔うづ〕【渦】

螺旋(らせん)形に巡る、激しい水の流れ。空気などについてもいう。うずまき。
めまぐるしく動いて入り乱れている状態。「争いのに巻き込まれる」
真上から1を見たような模様。
[補説]書名別項。→

か【渦】[漢字項目]

常用漢字] [音](クヮ)(慣) [訓]うず
〈カ〉
うず。「渦動
混乱した状態。「渦中戦渦
〈うず〉「渦潮

うず【渦】[書名]

榛葉英治の処女小説。女性の不可解な性を描く。昭和23年(1948)から翌年にかけて「文芸」誌に連載。単行本は昭和31年(1956)刊行。

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百科事典マイペディアの解説

渦【うず】

流体中でこまのように回転している部分。数学的には流体の各微小部分の回転角速度の2倍を大きさとする渦度(うずど)ベクトルで表現され,渦度が0でない部分を渦と定義する。

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世界大百科事典 第2版の解説

うず【渦 vortex】

橋の上から川の流れを見ると,橋脚の後ろでは流れが渦を巻いていることがある。もっと身近にも,風呂の栓を抜いたときに排水口のまわりに渦ができるのはよく知られている。台風や竜巻は空気の渦であり,鳴門の渦巻は名所にまでなっている。このように見てくると,渦というのは水や空気などの流体が,円を描いて運動している状態といえそうである。私たちが日常的に渦という場合はこれで十分なのであるが,流体力学では流れが円を描いているだけではだめで,流体内の微小部分をとったとき,その部分がこまのように自転している場合にその部分には渦があるという。

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大辞林 第三版の解説

うず【渦】

水などが中心に向かって巻き込みながら、激しい勢いで回っている状態。また、その流れ。流体力学では流体中の微小部分が自転運動しているとき、その運動が集中して流体中に回転運動がみえる部分。流速の違いや圧力差などによって生じる。うずまき。 「 -を巻く」
のような形や模様。
入り乱れた、めまぐるしい動き。また、周囲を巻き込みながら一つの方向へ向かう流れ。 「人の-」 「興奮の-」 「紛争の-に巻き込まれる」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


うず
vortex

流体(気体または液体)の一部がこまのように回転しているとき、その部分は渦運動をしているという。また、その部分を渦という。たとえば、鳴門(なると)の渦潮は大きな水の渦で、台風は空気の渦である。茶碗(ちゃわん)に入れた水をスプーンでかき回すと、茶碗の中の水全体がこまのように回転するので、水全体は一つの渦巻と考えることができるが、茶かすを浮かべて細かく観察すると、水の各部分はそれぞれ異なる回転運動をしていることがわかる。たとえば、中心付近の茶かすはぐるぐる回転するのに対して、中心を外れた茶かすはその姿勢を保ったまま円運動をする。すなわち、茶碗の中心付近の水の部分は自転をするのに、中心を外れた水の部分はほとんど自転をしない(A)。この自転をする水の部分が渦である。
 川の流れのように、一般に流体が運動する場合、流体全体としての運動はきわめて複雑であっても、その各部分を考えると比較的簡単である。すなわち、小さい球状の部分をとって考えると、それは自転しながら並進運動を行っている。その並進運動の速度vがその点での流れの速度である(B)。自転の角速度Ωの2倍ω=2Ωを流れの渦度(うずど)という。円筒形の容器に水を入れて、中心軸の周りに一定の角速度Ωで回転すると、やがて水は容器と一体となって回転する。このとき、中心から半径rのところの水はvΩrの速度で円運動をする。このとき
  流速×円周=2πΩr2
       =渦度×円の面積
の関係がある。この場合、水の各部分は同じ自転の角速度Ω、したがって渦度ω=2Ωをもつので、それに面積を掛けた前式の右辺は、半径rの円に含まれる渦の総量を表すと考えられる。これを渦の強さという。一方、「流速×円周」は円周に沿う循環とよばれる。一般に、任意の閉曲線Cについて、流速の接線成分vsCの線要素dsとの積vsdsを加え合わせた量

を、Cに沿う循環といい、
  Γ(C)=Cに含まれる渦の総量
という関係がある(C)。流れの中の流体の微小部分(これを流体粒子という)をとると、ある回転角速度Ωで自転しながら、ある速度vで並進運動をしている。その自転軸の方向に近接した流体粒子をとると、それはまたある角速度で自転している。このように次々と自転軸をつなぎ合わせていくと、流体粒子は数珠(じゅず)玉のようにつながって、流体の細い紐(ひも)ができる(D)。これを渦糸(うずいと)という。また、数珠糸に相当する曲線を渦線(うずせん)という。つまり、渦線は自転軸を連ねてできる曲線で、その曲線を軸として流体が回転運動をしていることを示す。いま、一つの小さい閉曲線上の各点を通る渦線を考えると、渦線を壁とする管ができる。これを渦管(うずくだ)という。渦管の任意の点での断面積σと渦度の大きさωとの積Γ=ωσは一定で、渦管の強さとよばれる。渦管の細いところでは流体の回転は速く、太いところでは遅い。竜巻やつむじ風は、近似的に1本の渦管のように考えられるが、地面に近いところでは回転は遅く、地面から離れて細くなったところでは回転が速い。細い渦管に含まれる流体の部分が、すなわち前述の渦糸である。[今井 功]

渦糸の性質

空気や水のような流体は粘性が小さい。粘性がまったくないような流体を完全流体という。完全流体の中では渦は新たに発生することもなく、またいったん発生した渦はいつまでも消滅することはない。これをラグランジュの渦定理という。完全流体の中の渦糸は時々刻々に変形しながら流れにのって運動するが、その強さΓ=ωσはいつまでも変わらない。伸びると断面積が減って自転の角速度を増す。渦糸は流れの中で中断することはなく、流れの境界から境界まで伸びているか、あるいは閉曲線をつくるかのいずれかである。後者を渦輪(うずわ)という。たばこの煙の輪は渦輪の一例である。閉曲線Cに沿っての循環Γ(C)はCを貫く渦糸の強さの総和を表すから、完全流体ではラグランジュの渦定理により、流体に固定した閉曲線に沿っての循環は時間的に一定不変である。これをケルビンの循環定理という。[今井 功]

渦の発生

物体に流れが当たる場合、粘性のために流速は物体表面の薄い層の中で急にゼロまで下がる。この薄い層は境界層boundary layerとよばれ、静止した物体と流れる流体に挟まれて回転する、ころの役割を演じる(E)。これは自転する流体として渦の一種である。つまり境界層は渦の層である。境界層が物体表面からはがれて流れの中に押し出していって分裂すると大小さまざまな渦ができる。[今井 功]

渦の量子化

液体ヘリウムは絶対温度2.2K以下の極低温では超流動性をもつ。超流動流体では量子効果が現れ、ケルビンの循環定理は

の形になる。ただし、hはプランク定数、mはヘリウム原子の質量である。このように循環は量子化されてとびとびの値をとる。循環は閉曲線を貫く渦糸の強さにほかならないから、これは渦の量子化を意味する。液体ヘリウムの中にイオンを打ち込むとき、イオンによって小さい渦輪がつくられるが、その強さΓが前の式のn=1で与えられることが実験的に証明された。これは、液体の運動というマクロの現象にも量子的効果が現れることを示すものとして重要である。[今井 功]

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世界大百科事典内のの言及

【冷水塊】より

…海洋中に存在する周囲より低温の海水の塊。普通直径100~200kmくらいの円形状をなし回転運動を伴っており,冷水渦ともいう。海水はいたるところ均質ではなく,場所により異なった性質の海水が入り乱れているのが普通である。…

※「渦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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